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富士山の基礎知識

7.富士山頂富士「八葉」の歴史

 富士山頂部には「八葉」と呼ばれる8つの峰があります。古来、仏教でいう八葉蓮華(はちようれんげ:仏が坐(すわ)る八枚の弁をもつ蓮華座)にたとえられていたことに由来するもので、この八葉はこれまで様々な呼び名で呼ばれており、資料ごとでその名称が異なっています。明治時代の神仏分離令の影響を受け、富士山においても廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)運動が起こり、富士山中の仏教系地名が神道系の名称に変えられました。
現在「お鉢巡り」と呼んでいる火口の周りを一周することも、この八葉の峰をめぐる「お八めぐり」が転化したものと考えられます。
この「八葉」の名称の歴史的名称の変化と、現在の「八葉」の名称及びその背景を紹介します。
●「八葉」の名称の由来

富士山の八葉についてはいくつかの由来があります。
頂上の峰々を蓮の花の八弁に例えた説。
富士山を蓮花に見立てたり、芙蓉峯と言ったりしたのは、
その姿が秀麗なところからきた説。

八つの峰があることから芙蓉(蓮花)と称した説。
芙蓉といわれることから「八朶」とつけた。
)芙蓉とはハスの花の別称で美人の例え。富士山の雅称として芙蓉峰と呼ばれた。

●歴史的資料に見られる八葉の名称

歴史的な古文献(古図)等に見られる富士山頂の「八葉」は表-1の名称で呼ばれていた。

現在の八葉の峰の名称由来と関係のある神仏
 明治時代の廃仏毀釈前の神仏と関係の深い名称(表-1の名称)と現在の名称を繋ぐ山頂名と神仏との関係を表-2に示す。
富士山頂「八葉」

表-1 資料に見られる富士山頂の名称
芙蓉亭
富士日記
村山浅間
修験大鏡
坊興法寺
歴代写
大鏡坊
富士山略
縁起
中谷顧山
富嶽の記
北口登山
富士山参詣
名所図会
駿河
新風土記
須山村
浅間社
大日本
名辞書
地蔵獄
阿弥陀獄
観音獄
釈迦獄
弥勒獄
薬師獄
文殊獄
加来獄
大日岳
宝生獄
勢至ヶ獄
浅間ヶ獄
剣ヶ峰
普賢獄
雷之獄
経ヶ獄
駒ヶ獄
馬背ヶ獄
鋸ヶ獄
中将獄
作成年代 文政6年
1823年
不明 不明 江戸時代
中期
不明 江戸時代
文化13年
~天保6年
明治33年

表-2 現在の「八葉」の地名由来と関係神仏
現在名称 標高(m) 地名由来等 関係のある神仏
剣ヶ峰 3,776 剣ヶ峰という呼び名は土俵の最も外側をいい、
大山の外輪山の最高位を示す。
 阿弥陀如来
熊野三大権現
白山岳
(釈迦ヶ岳)
3,756 釈迦の垂迹が白山妙理大権現であつたため  釈迦牟尼如来
白山妙理大権現
久須志岳
(薬師ヶ岳)
3,725 久須志神社(薬師如来を祀る)があるため  薬師如来
鹿島金山大権現
大日岳
(朝日岳)
3,735 大日如来観音菩薩の垂迹は、浅間大菩薩でもある。
ただし、既存資料では朝日ヶ岳とされているものも
ある。
 大日如来
中央の本尊には胎蔵界
伊豆岳
(観音岳・阿弥陀岳)
3,749 観音菩薩の垂迹が伊豆大権現であったため。
明治8年に改称
 観世音大菩薩
伊豆大権現
成就岳
(勢至ヶ岳・経ヶ岳)
3,733 明治8年に改称  不空成就岳
駒ケ岳
(浅間ヶ岳)
3,722 聖徳太子が駒(甲斐の黒駒)に乗ってやってきた地で
あることに因むといわれ、黒岩で出来ている。
 文殊大菩薩
箱根大権現
三島岳
(文殊ヶ岳)
3,734 明治8年に改称されている。昭和年間に経筒が
発見されている。三島岳とは神仏混沌時代に文殊
ヶ岳の垂迹に三島大明神があったためか。
 宝生如来
三島大明神
注)剣ヶ峰以外の標高は、2009年10月 航空レーザ計測データ等からの推定値

釈迦の割石と白山 三島岳 成就岳
釈迦の割石と白山 三島岳 成就岳
雷岩 虎岩 大日岳・伊豆岳
雷 岩 虎 岩 大日岳・伊豆岳
剣ケ峰 駒ケ岳 久須志岳
剣ケ峰 駒ケ岳 久須志岳