小渋ダム50年のあゆみ

計画の経緯・背景とダム建設

小渋川は、その源を南アルプスの赤石岳に発し、天竜川に合流する延長29.5km、流域面積295.0?の三峰川に次いで大きな流域面積を持つ左支川です。地質は、流域中央部を中央構造線が南北に走り、その東側が結晶片岩又は中・古生層、西側が片麻岩、花崗岩となっています。

小渋ダム建設前のダムサイトの状況
(上流から下流を見る)

小渋川等から流送される多量の土砂等により天竜川の河床は上昇し、諏訪湖や美和ダムが洪水調節を行っても流下能力は不足し、洪水のたびに災害が発生するなど、河床上昇が極めて深刻な問題でした。この根本的対策として、県の「小渋川河水統制事業※1」(昭和24年)をふまえた「小渋川統合開発計画」がクローズアップされました。昭和28年には建設省直轄で予備調査が始まり、昭和36年に実施計画調査を開始しました。
※1河水統制事業:旧河川法の時代に河川管理者により実施された河川の総合開発事業の名称。

従来の計画を再検討 ダム地点の計画洪水量を見直し、昭和44年度完成

昭和36年災害(三六災害)※の教訓から、天竜川上流部の治水計画は抜本的に改正されました。小渋ダムも従来の計画を大きく変更し、昭和38年度の着工以来、昭和44年度迄の6ヵ年間を要し完成しました。

小渋ダム完成までの歩み

小渋ダム 洪水実績・堰堤改良事業・水環境改善事業

洪水実績

完成から平成28年度末までに、47回の洪水調節を行い、天竜川沿川下流域の洪水被害の低減に寄与してきました。

小渋ダム堰堤改良事業

土砂バイパス事業とは

  • 洪水時に貯水池に流入する土砂を含んだ流水の一部を、ダムの貯水池を経由せず下流にバイパスするための土砂バイパス施設を設置します。
  • 貯水池上流に粗い土砂を捕堤(砂利採取)するため貯砂堰を設置します。

土砂バイパスの効果

小渋ダムの堆砂率は、2015年時点で89%となっており、このまま堆砂が進行すると、あと15年後には堆砂率100%になると予測されます。
土砂バイパスを運用することにより、約60年延命することができます。(試算による)

水環境改善事業

平成9年の河川法改正で環境が目的に追加され、ダム下流へ維持流量の放流を開始しています。

事業の目的

「小渋ダム水環境改善事業」は、小渋川の無水区間をなくし「川の流れの回復」「水棲生物の生息環境の改善」「レクリエーション・教育の場の提供」を目的として実施しています。

(1)小渋川の6.8kmの無水区間が改善

小渋ダム及び生田堰堤の取水により小渋川には合わせて6.8kmの無水区間が生じていました。

(2)水環境改善事業で小渋川に流れを復活

小渋ダム水環境改善事業は「小渋川に流れを取り戻す」ため、生田堰堤からの維持流量0.7m3/s放流と合わせ、小渋ダムからの0.72m3/sの維持流量を放流するものです。
小渋ダム下流への放流施設は、小渋第1発電既設水圧鉄管路より放流管を分岐し、小規模放流設備を設置しました。
平成12年4月から放流を開始し、水が流れ、川が持つ本来の姿を取り戻しました。

(3)放流水を利用した発電

水資源を有効に活用するため、長野県は小渋第3発電所(最大出力550kw)を設置し、放流水による発電を行っています。

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