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平成12年9月東海豪雨災害
根羽村小戸名
写真-1 根羽村小戸名
(出典:長野県飯田建設事務所資料)
売木村河合
写真-2 売木村河合
(出典:長野県飯田建設事務所資料)
写真-3 阿智村富士見台
写真-3 阿智村富士見台
(出典:長野県飯田建設事務所資料)
はじめに

 昭和36年(1961年)の三六災後、昭和43年(1968年)8月25日〜30日の台風10号と前線による豪雨では、天竜川流域で総雨量500〜600mmとなり、死者6名、行方不明者1名、重傷者5名、軽傷者4名、道路、住宅、農地、林地等に多大な被害がでました。
 昭和44年(1969年)8月4日〜5日にかけての台風7号は大平で210mm/日を記録し、災害救助法が発令されました。下伊那郡内で死者4名、行方不明者5名、重傷者1名、軽傷者3名、木曽郡内で道路、住宅、農地、林地等に多大な被害がでました。また、与川上流の森林作業員宿舎が土石流で死者5名、松川上流西股川、蜂の巣小屋で避難中土石流によって7名が犠牲になりました。
 昭和57年(1982年)8月1日〜3日の台風10号では、全県下に多大な被害をもたらしました。南信濃村で総雨量406mmを記録しました。死者4名、重傷者4名、道路、住宅、農地、林地等に多大な被害がでました。
 昭和58年(1983年)9月28日〜29日の台風10号では、天竜峡の警戒水位11.00mを8.97mも越えました。28日、飯島町で415mmを記録しました。長野県下8市町村に災害救助法が適用されました。死者9名、負傷者44名、道路、住宅、農地、林地等に多大な被害が出ました。南部では負傷者が5名でした。
 平成12年(2000年)9月11日〜12日にかけて、東海3県〜長野県南部に秋雨前線が停滞し、湿舌による豪雨が襲いました(東海豪雨)。10日午後7時の降り始めから、名古屋市で576mmを記録しました。この豪雨の記録は、1891年の観測以来の最高値で、年間雨量の三分の一に相当するといいます。
 これによる人的被害はありませんでしたが、道路、住宅、農地、林地等に多大な被害がでました。長野県南部は、阿智村、浪合村、平谷村、根羽村の下伊那郡西部地域に被害がでました。遠山川流域では、地質脆弱部が豪雨の影響で崩壊地を発生させました。特に急で脆い崖には岩崩れが見られました。長野県下伊那郡上村の途中沢地籍では、赤色チャートの崖が崩れ、林道御池山線を破壊しました。
 ここでは、この災害について報告します。

降雨状況

 長野地方気象台の平成12年9月11日〜12日の総雨量は、下伊那地域の7観測地点のうち矢作水系の観測所で、大雨が観測されています(表-1)。時間当たり最大雨量は、矢作水系2観測点で過去最大(過去30年間の観測値)を記録しています(表-2)。
 5市村の市役所・役場の累積および時間最大降水量の観測値を示します(表-3)。また、下伊那11市村の市役所・役場の24時間、1時間、連続雨量の観測値を示します(表-4)。さらに参考までに昭和36年三六災時の降雨量を示します(表-5)。

表-1 7観測地点累積雨量(単位:mm)
表-1 7観測地点の雨量
(出典:気象庁長野気象観測所(当時)資料)
表-2 7観測地点の時間雨量
表-2 7観測地点の雨量
(出典:気象庁長野気象観測所(当時)資料)

表-3 累積および時間最大降水量の
観測値

表-5 累積および時間最大降水量の観測値

(出典:気象庁長野気象観測所(当時)資料)
(役場データ)

表-4 24時間、1時間、連続雨量の
観測値

表-6 24時間、1時間、連続雨量の観測値

(出典:気象庁長野気象観測所(当時)資料)
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表-5 昭和36年伊那谷災害時の降雨量 表-4 昭和36年伊那谷災害時の降雨量

(出典:気象庁長野気象観測所(当時)資料)
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます)

 上村では、最大24時間雨量123.5mm、最大1時間雨量40mm、連続雨量186.5mmでした。長野県南部で最も雨量の多かった根羽村では、最大24時間雨量377mm、最大1時間雨量90mm、連続雨量417.5mmでした。

被害状況

 平成12年9月25日12時に下伊那地方事務所でとりまとめた被害状況を図-1に、林務関係の市町村別被害を表-6に示します。

図-1 長野県南部の災害位置図
図-1 長野県南部の災害位置図
(長野県下伊那地方事務所林務課の資料をもとに作成)

表-6 市町村別林務関係被害総括表
表-7 市町村別林務関係被害総括表
(出典:下伊那地方事務所林務課資料)
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岩石崩壊の実態

被害状況

 林道御池山線に発生している岩石崩壊を、図-2、図-3に示します。被害が発生した場所は、標高1,200m地点にあります。

図-2 長野県図と対象地
図-2 長野県図と対象地
図-3 1/25,000地形図と対象地
図-3 1/25,000地形図と対象地
(出典:国土地理院発行 1/25,000「赤石」に加筆)

被害実態の一例

 岩石崩壊が発生した場所の地質は、赤色チャートおよび縞状チャートで、赤色チャートも縞状となっています。縞状となっている岩石の堅い珪質部は、厚さ数cm〜10数cmのものもあります。
 赤色チャートと縞状チャートでは岩質がやや異なります。すなわち、赤色チャートは剥離質で樹脂状光沢をしています。縞状チャートは、青または灰色で堅い珪質部の間に数ミリメートルまたは10数ミリメートルの千枚状シルト質を挟んでいます。珪質部では石灰質の細脈(炭酸カルシウム(石灰質)の挟み込みのこと。ベイン(vein)とも言います。)が見られ、これが風化して空隙となっています。 被害の状況を写真-4〜9に示します。  被害の状況を写真-4〜9に示します。

写真-4 岩石崩壊によって林道に散乱した岩屑(北西方向)
写真-4 岩石崩壊によって林道に散乱した岩屑(北西方向)
写真-5 岩石崩壊を南西より撮影
写真-5 岩石崩壊を南西より撮影
写真-6 岩石崩壊を北東より撮影
写真-6 岩石崩壊を北東より撮影
写真-7 岩石崩壊の上方から下方を撮影
写真-7 岩石崩壊の上方から下方を撮影
写真-8 岩石崩壊の上方から下方を撮影
写真-8 岩石崩壊の上方から下方を撮影
写真-9 岩石崩壊を北東より撮影
写真-9 岩石崩壊を北東より撮影

 東海豪雨の遠山地域への影響は、先にも述べたように脆弱斜面の崩落を発生させました。対象地の岩崩れは、チャートの特性である亀裂(節理および縞構造)を開口させ崩落したものと思われます。崩落部は露岩の上部であり、8〜10m3程度と思われます。その崩落は写真-8、9のとおりです。この崩落物は径5〜50cmまでの比較的小さい岩屑で、マトリックスは土ではなく砂状岩屑です。この崩落物が林道路肩を破壊し、下方の法面下10m程度に散乱しています。露岩の状況は亀裂(写真-7参照)から前面の体積約240m3、チャートの平均的比重を乗ずれば、636トンとなります。

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