神島をよみがえらせた蓮ダムの水
鳥羽市から船で、海上を行くことおよそ40分。三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台となった神島にも、海底に設置された水道管を通って蓮ダムの水が運ばれています。蓮ダムの水によって、神島はどのように変わったのでしょうか。神島旅館協同組合の組合長、山本佐市さんにお話を聞きました。
「水が来る前までは、個人・共同あわせておおよそ40本の井戸が神島の唯一の水源でした。日照りが続いたり、人がたくさん島に渡ってくる時期、特に正月などはよく井戸の水が枯れたものでした。
そんな時には、鳥羽市や四日市にまで行って、漁船で水を運んだものです。海水で米を研ぎ、最後の時だけ真水を使うといったように、水は本当に貴重でした。しかし、蓮ダムができたおかげで、当たり前のように、水が使えるようになりました。トイレも、今ではほぼ100%が水洗式です」
観光と漁業で暮らしている島にとって、安定した水の供給は様々な恩恵をもたらしてくれたと、山本さんは言われます。
「水道が普及したおかげで、観光客や釣り客も増えました。捕った魚を加工する所もできました。魚の加工は水を大量に使いますから、井戸の時代には不可能でした。水道のおかげで、島に新しい産業が育ってきています」
蓮ダムの水が皆さんのお役に立っているのを聞き、心強い気がしました。

神島旅館組合長 山本佐市さん

神島・前方に見える山に水道管がつながっています