越美山系砂防事務所 国土交通省 中部地方整備局

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トピックス

平成30年7月豪雨の記録~越美山系砂防事務所の災害対応~

2019年03月01日

平成30年7月豪雨の記録
~越美山系砂防事務所の災害対応~
(平成30年7月3日~8日)

平成31年3月
国土交通省中部地方整備局
越美山系砂防事務所

1.気象
1)概況 
(出典:岐阜地方気象台平成30年7月3日から7月8日の大雨に関する岐阜県気象速報)
7月3日は、台風第7号が東シナ海を北上し、4日は台風が日本海を北東に進み、4日15時に日本海中部で温帯低気圧に変わりました。その後、8日にかけて前線が本州付近に停滞し、南から暖かく湿った空気が流れ込んだため、大気の状態が非常に不安定となり前線の活動が活発となりました。台風や前線の影響で、岐阜県では、飛騨北部と中濃で7月の月降水量の平年の2倍を超えるなど、広い範囲で記録的な大雨となりました。 アメダスでは、降り始めの7月3日21時から8日24時までの総降水量が、郡上市ひるがので1058.0ミリ、郡上市長滝で1009.5ミリ、関市板取で908.0ミリ、本巣市樽見で843.0ミリを記録しました。また、下呂市金山で7月8日03時07分までの1時間に108.0ミリの猛烈な雨を観測し、統計開始以来の極値を更新しました。解析雨量では7月8日01時までの1時間に関市付近及び美濃市付近で約100ミリ、03時までの1時間に七宗町付近、白川町付近及び下呂市付近で約110ミリの猛烈な雨を記録しました。この影響により、関市では津保川が氾濫し、床上227棟、床下159棟の浸水が発生し、県内各地で土砂崩れが発生し、道路の通行止めが相次ぎました。

2)気象予報(警報・注意報、情報等の発表状況)
(1)管内の特別警報・警報・注意報、気象情報の発表状況
本巣市
7/3 16:37 大雨注意報発表
7/4 11:40 大雨警報(土砂災害)発表
7/7 12:50 大雨特別警報発表
7/8 13:10 大雨特別警報解除、大雨警報(土砂災害)発表
7/8 15:15 大雨警報(土砂災害)解除、大雨注意報発表
7/10 23:30 大雨注意報解除

揖斐川町
7/3 16:37 大雨注意報発表
7/4 11:40 大雨警報(土砂災害)発表
7/8 15:15 大雨警報(土砂災害)解除、大雨注意報発表
7/8 22:07 大雨注意報解除 

(2)天気図
(出典:岐阜地方気象台ホームページ)

(3)気象レーダー
(出典:岐阜地方気象台ホームページ一部改変)

2.降水記録
1)降水概況
岐阜県では、台風第7号や前線の影響で西濃地方、中濃地方、飛騨地方を中心に大雨となり、7月3日(火)21時から7月8日(日)24時までの総降水量は、本巣市樽見で843.0ミリ、揖斐川町揖斐川で460.0ミリを観測しました。
越美山系砂防事務所管理の雨量観測所では、小津雨量観測所640ミリ、坂本雨量観測所458ミリ、外津汲雨量観測所701ミリ、大河原雨量観測所607ミリ、日坂雨量観測所460ミリ、東小鹿雨量観測所852ミリの降水量を観測しました。

2)降水分布図(7月3日21時~7月8日24時)
(出典:岐阜地方気象台ホームページ一部改変)

3)降水量
越美砂防管内の雨量観測所のデータは以下のとおりです。累計で例年7月の降水量の1.8倍を記録しました。

流域名、観測所名、所管、7月3日0時~7月8日24時の降水量、
最大24時間雨量、最大1時間雨量

揖斐川、小津、国土交通省(越美砂防)、643mm、
7月3日21時~7月4日21時 234mm、7月4日3時~4時 39mm

揖斐川、坂本、国土交通省(越美砂防)、462mm、
7月5日3時~7月6日3時 190mm及び7月5日18時~7月6日18時 190mm、7月6日16時~17時 29mm

揖斐川、外津汲、国土交通省(越美砂防)、701mm、
7月3日22時~7月4日22時 251mm、7月4日0時~1時 31mm

揖斐川、大河原、国土交通省(越美砂防)、607mm、
7月6日14時~7月7日14時 200mm、7月6日16時~17時 27mm

揖斐川、日坂、国土交通省(越美砂防)、460mm、
7月5日18時~7月6日18時 183mm、7月5日20時~21時 20mm

揖斐川、小津、国土交通省(木曽川上流)、723mm、
7月3日21時~7月4日21時 275mm、7月4日1時~2時 31mm

揖斐川、藤橋、国土交通省(木曽川上流)、350mm、
7月5日19時~7月6日19時 159mm、7月5日6時~7時 18mm

揖斐川、諸家、国土交通省(木曽川上流)、351mm、
7月5日17時~7月6日17時 197mm、7月6日16時~17時 23mm

揖斐川、川上、国土交通省(木曽川上流)、302mm、
7月5日3時~7月6日3時 149mm及び7月5日4時~7月6日4時 149mm、7月5日5時~6時 16mm

揖斐川、杉原、国土交通省(木曽川上流)、561mm、
7月5日4時~7月6日4時 191mm、7月5日6時~7時 38mm

揖斐川、徳山、国土交通省(木曽川上流)、392mm、7
月5日4時~7月6日4時 185mm、7月5日14時~15時 24mm

揖斐川、門入、国土交通省(木曽川上流)、388mm、
7月5日2時~7月6日2時 226mm、7月5日14時~15時 28mm

揖斐川、塚、国土交通省(木曽川上流)、251mm、
7月5日4時~7月6日4時 136mm及び7月5日5時~7月6日5時 136mm、7月4日18時~19時 31mm

揖斐川、揖斐川、国土交通省(木曽川上流)、460mm、
7月5日2時~7月6日2時 178mm、7月4日3時~4時 26mm

根尾川、樽見、気象台(アメダス)、843mm、
7月3日21時~7月4日21時 243.5mm 7月4日8時~9時 24mm

根尾川、東小鹿、国土交通省(越美砂防)、852mm、
7月5日16時~7月6日16時 287mm、7月5日20時~21時 28mm

根尾川、上大須、国土交通省(木曽川上流)、937mm、
7月6日12時~7月7日12時 292mm、7月7日16時~17時 27mm

根尾川、根尾、国土交通省(木曽川上流)、792mm、
7月6日19時~7月7日19時 248mm、7月5日20時~21時 27mm

根尾川、金原、国土交通省(木曽川上流)、511mm、
7月5日2時~7月6日2時 194mm、7月5日21時~22時 26mm

根尾川、黒津、国土交通省(木曽川上流)、752mm、
7月3日22時~7月4日22時 266mm、7月4日4時~5時 34mm

※各時の降水量は、前1時間の降水量を示します。(例)1時 → 00時から01時までの1時間降水量

図 上大須雨量観測所

図 根尾雨量観測所

図 東小鹿雨量観測所

3.土砂災害記録
1)土砂災害概要
当事務所管内の本巣市根尾奥谷のワシズ洞において土石流が発生しました。
2)土砂災害警戒情報発表状況(7月3日~7月8日)

*印は、新たに警戒対象となった市町村を示します。
岐阜県と岐阜地方気象台の共同発表

3)渓流点検
当事務所では、地上から各渓流の調査(臨時巡視点検)を実施しました。

7月6日 根尾川流域
2班体制:出張所班3名(職員1名、点検受注者2名)、工務班2名(職員)
7月8日 管内全域
5班体制:出張所1班、点検受注者4班

4)ヘリによる調査
(1)7月8日(日)
岐阜県内の岐阜地域・西濃地域・郡上地域・下呂地域において、上空からほくりく号(北陸地方整備局保有)による目視確認及びビデオ撮影を行い、越美山系砂防管内における大規模土砂災害の有無の確認を行いました。

(2)7月10日(火)
越美山系砂防事務所及び中部地方整備局本局の職員がほくりく号に搭乗し、以下のとおり2回(10:30~12:30、13:30~15:30)のフライトにより大規模土砂災害の有無を確認しました。


ほくりく号(名古屋空港)

ワシズ洞の状況

5)ワシズ洞
(1)概要
7月6日13:20に現地調査(当事務所職員)により、根尾東谷川ワシズ洞にて斜面崩壊に伴う土石流が発生したことを確認し、その後下流への土砂流出抑制のためブロック堰堤の施工を行いました。

(2)土石流発生日時
発生日時は不明です。7月6日13:20に現地調査(当事務所職員)により土石流発生を確認しました。

(3)崩壊土砂量
ワシズ洞の崩壊範囲を現地の簡易計測やドローンによる調査、既往LPデータから推定した崩壊土砂量は上記計算結果より29,000m3と推定されます。

(4)ワシズ洞の流出土砂量
ワシズ洞内の残土量は崩壊地の残土量が21,750m3、渓床内の残土量3,350m3、合計25,100m3となります。ワシズ洞外へ流出した土砂量は29,000m3-25,100m3=3,900m3と推定されます。

ワシズ洞渓床内概要図

(5)ブロック堰堤による応急復旧
下流への土砂流出を抑制するためのブロック堰堤を整備するための応急復旧工事を行いました。8月30日から合計144個のブロックを備蓄場所からの運搬を開始し、9月13日に完成しました。

応急対策工事のブロック堰堤

6)蛇抜谷
(1)概要
本巣市根尾板所の蛇抜谷の崩壊地においては、一部の土塊及び渓床内に堆積していた不安定土砂が下流へ流出し、工事現場の仮設付近に土砂が堆積しました。保全対象である国道157号への被害はありませんでしたが、崩壊地に設置した伸縮計が通行止めの基準に達したため国道157号は通行止めになりました。

(2)被災状況
工事現場の仮設足場に土砂が堆積したため、除去作業を実施した後に工事を再開しました。

崩壊地の状況(7月8日撮影)

工事現場への土砂流入(7月8日撮影)

仮設足場上の土砂堆積(7月8日撮影)

4.砂防施設の効果
1)概要
今回の豪雨において保全対象に被害を及ぼす規模の土石流はありませんでした。一部の堰堤では土砂や流木の捕捉が確認できました。

越波第1砂防堰堤水通し(6月5日撮影)


災害後の水通し(7月12日撮影)

5.事務所の体制等
1)災害対策支部

7月4日(水)11:40 災害対策支部(注意体制)
7月5日(木)17:00 災害対策支部(警戒体制)
7月10日(火)19:00 災害対策支部(注意体制)
ワシズ洞:蛇抜谷の状況に鑑み注意体制を継続している中で、7月27日に台風12号の接近が予想され、注意体制の対象を台風12号へ移行。
  
2)ホットライン
7月7日(土)12:45に、越美山系砂防事務所長から本巣市長へ「大雨特別警報が発令されるとの情報の伝達」を行いました。

3)リエゾン
派遣先、派遣期間、人員
本巣市役所、7月7日(土)13:30~7月8日(日)8:40、のべ2名

6.その他
1)交通網の状況
本巣市の国道157号が通行止め(迂回路有り)となった他、市道及び町道、林道において小規模な法面崩壊等で一時通行止めが発生しました。また、樽見鉄道は7月5日午前9時から運転を見合わせました。

【国道】
・国道157号(本巣市根尾板所~根尾平野)、土砂流出の恐れがあるため、7月5日16時20分から全面通行止め(迂回路あり)
・国道157号(本巣市根尾能郷)、土砂流出、路側崩壊により全面通行止め

【県道】
・根尾谷汲大野線(本巣市松田~須地内)、累加雨量が 300mmを超えており土砂流出の恐れがあるため、 7月5日15時00分から全面通行止め、7月9日15時45分解除
・山東本巣線(揖斐川町外津汲~同西地内)、法面からの土砂流出により全面通行止め
・藤橋池田線(揖斐川町三倉~上野地内)、法面からの土砂流出により全面通行止め

【鉄道】
・樽見鉄道は7月5日9時00分から運転見合わせ

2)通信網の状況
事務所と本局・各事務所・各出張所は専用回線を使用し、岐阜土木事務所、揖斐土木事務所、岐阜農林事務所、揖斐農林事務所、本巣市役所、揖斐川町役場等については、NTT回線を使用して情報伝達を行い共有を図りました。

3)その他の被害状況
越美砂防事務所管内において、人的被害、家屋被害などはありませんでした。

2019年3月作成、2019年8月掲載

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