ICTレポート
現場レポート 「自作!? ICTバックホウ発見!! ~少しの工夫で生産性大幅向上~」 |
研究会では以前より「ICT通信」等でICT技術を活用している現場の情報を募集しておりました。
そして今回研究会会員である、長野県の(株)菅平土建の常田(ときた)社長より「自ら作成した情報化施工システムを駆使し、ラグビーグラウンドの造成工事を行っています。」 との情報を頂きましたので、早速お邪魔させていただきました。
平成21年6月9日(火)13:00
くもり。 今回お邪魔したのは長野県上田市の菅平高原で施工中の「ラグビー場造成工事」現場です。 菅平高原と言えば、冬はスキー、夏はラグビー合宿地として有名なところです。今回の現場近隣にも沢山のグラウンドがありました。
(株)菅平土建さんは、そのグラウンド造成工事を数多く手掛けておられ、測量→設計→施工までを一括して請け負われているとの事です。
今回施工のグランドは縦約110m×横約70mで、掘削ボリューム約15,000m3で、法面掘削とグラウンドの平面成型を情報化施工技術で施工中でした。 前回のICTレポートでもICTバックホウを紹介させていただきましたが、今回もICTバックホウです。しかし、今回の最大の特徴は
ナント!! 社長自らが開発した 自作ICTバックホウ なんです。
簡単に仕組みを説明しますと、自動追尾型トータルステーション(TS)とバケットの左端に取り付けたミラーを用いてバケットの刃先位置、高さの情報を取得し、その情報をあらかじめ入力した設計データ(図面)との差を計算して、運転席に設置したハンディターミナルに「切り0.110m」、「盛り0.200m」というようにオペレータに知らせるというものです。あとは、バケットを設計勾配となるように調整しながら切り出していきます。 このシステムのミソはバケットの角度が刃先を見ながら簡単に確認できるということ。(詳細は企業秘密となりそうなので説明できないのが残念です。)そして、トータルステーションのシステムも今回のためだけに開発されたものではなく、汎用システムなんです。
 お邪魔する前からバケット刃先をTSで測る事は分かっていたのですが、バケット角度を一体どうやって検知するんだろうと考えていたのですが、装置を見て一同 「なるほどっ!!」 社長の工夫が伺えます。(言い忘れましたが測量、設計、施工、そして装置の開発と社長の常田さんが自ら先頭に立って行われています。)
まずは常田社長にデモンストレーションしていただきました。
一同再び 「なるほどっ!!」 装置の開発者自らが、ご自身で設計された現場での施工、ガイダンスシステムにも図面が表示されますが、社長の頭には設計情報が全てインプットされているのでしょう。快調に掘削していきます。
そして、僕も体験搭乗させていただきました。ここからは運転席より実況させていただきます。
運転席に乗り込み、まずは装置の確認です。右手に見えるのがハンディターミナルです。ここには、設計図面上にバケット位置が今どこにいるかの表示と、あとどれだけ切ったり、盛ったりすればいいかの数値が表示されています。
写真ではわかりにくいですが、バケット左上方に見えるのがTS用ミラーとバケット角度を確認する装置が装着されています。(バケットが設定された角度になっているかどうかこの装置を見ると一目瞭然です。)
法面の掘削の手順は以下のとおりです。
1.運転席のハンディターミナルとバケット刃先を見ながらバケットの刃先を設計面にあわせます。
2.バケットを見ながら、バケット角度を設計勾配になるように調節すると共に刃先も再調整します。
3.あとはバケット角度を保ちながら切り込んでいきます。
簡単に書いてしまいましたが、切り込み作業が前回同様どうしてよいか分からず社長のレクチャーを受けながら何とか作業することができました。
少しだけですが、体験搭乗させていただいた感想です。
バケット角度をモニターではなくバケットを見ながら確認することが出来るので、視線移動も少なくアーム等の操作に集中することができました。 ベストな施工としては、切り始めは丁張りして基準面作成。その後はその基準面にバケット右端をあてがいつつ、刃先を設計面にあわせながら掘削していく方法ではないでしょうか。現在でも前掘削面に倣って順次掘削していきますが、少し石があったりするだけで、法面がふくれ気味になり、そのまま施工していくと仕上げ面がずれてしまいます。しかし、このガイダンスを用いれば、掘削しながら設計面上に刃先があるかどうかを瞬時に把握することができ、ずれている場合はその場で補正する事ができますので、作業効率が向上出来るのではないかと思いました。 また、前回のICTレポートでも書かせていただきましたが、このガイダンスシステムを装着したICTバックホウに熟練工が乗れば間違いなく最強の施工手段となる事を改めて感じました。
【現場レポート 常田社長に伺いました!!】
今回情報を頂き、お忙しい中現場見学をさせていただきました(株)菅平土建 常田社長に話をお伺いしました。
「社長!!話聞かせてくださいっ!!」 ここからインタビュースタート(○:僕、△:常田社長)
 ○「何年くらい前からこのガイダンスシステムを使われているのですか?」
△「約10年前からです。」 ○「結構前から使われているんですね。いろいろ工夫されているのがよく分かりました。」
△「今回のシステムで3代目になります。今回から自動追尾型のTSを使っているので一人で作業できるようになりました。」
○「なるほど。このシステムを使われて施工性ってどれくらい向上しましたか?」
△「約5割くらいですかね。」 ○「5割ですか!?おそらく社長が自ら測量、設計されて現場の状況を熟知されているからこそ成し遂げられたのだと思います。でもそもそも何故このシステムを開発しようと考えられたんですか?」
△「もとは現場監督をしていたんだけど、丁張りをするのが大変で面倒くさかったんです。地盤が固いと1本打つだけで半日かかるし・・」 ○「その理由でよくぞここまで・・現場で苦労されたからこそ良い物ができたんですね。自分ではこのシステムの出来はどうですか?」
△「なかなかいいですよ。」 ○「確かにいいと思います。それでは今後の改善点は何かありますか?」
△「法面掘削は過堀りは許されないのですが、モニターを見ていないと分からないんです。設計面より掘りすぎた場合に音とかで知らせてくれればいんだけど、それが出来ないらしいんです。」 ○「確かにそうですね。なんか簡単にできそうな気がしますが・・ 一度開発者さんにも相談してみましょう。」 ○「最後に今後の抱負は?」
△「このシステムを使えばグランドだけでなく、いろんなところに応用が効くので、これからもっといろんなところで活躍出来ればと思います。そして、今後もさらに改良を続け、より良いシステムにしていきたいと思います。」 ○「今日はお忙しい中本当にありがとうございました。」
【同行メンバーの感想】
最初バケットに取り付ついているものを見た時、これは何かなと思い、説明を聞いていました。 なるほど!です。 これを社長が考えたこともすばらしいと思いました。 今後、このレポートを通じて技術が普及することを願っています。 常田社長いろいろと教えていただきありがとうございました。
取材協力:(株)菅平土建 長野県上田市菅平高原1223-1282
工事現場の様子 |
今回の現場はグラウンドです。

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社長からシステムの説明を受けています。

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社長の指導を頂いて掘削中

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ガイダンスのおかげで施工状況良好!!

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