ざざむし通信 第27号(2013/05/29) カテゴリー ヘッダーの画像

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ざざむし通信 第27号(2013/05/29)

三峰川青島に生きるこの人 矢島 信之さん(平成25年5月29日 水)

治水と築堤・高遠石工

私がはじめて矢島さんを知ったのは、「治水と築堤・高遠石工」という伊那市歴史シンポジウムの信州大学教授 木村和弘さんの講演記録を図書館で借りて読んだときでした。そのころ職場で天竜川上流部の霞堤の勉強をはじめていて、この本は探していたテーマとピッタリの資料でした。

この本の中で、木村教授は会場からの質問に応えて「ダンプ道路について詳しいいきさつをご存じなのは、ここにおられる矢島さんです」と会場参加者として居合わせた矢島さんを紹介。矢島さんが三峰川の桜並木の成立とその伐採のいきさつについて、すらすらと説明しているようすが記されています。

三峰川の霞堤防について大学教授もが一目置く矢島さんに、ぜひお会いして直接勉強したい・・・。その機会は意外にはやく訪れました。それは今年3月、美篶小学校が三峰川青島堤防のサクラ堤防看板を建てるときの除幕式でした。この時はお互いにあわただしく、矢島さんには「勉強したい」とだけお伝えし、再会の約束をしたのです。

天白社で

月に入って待望のお約束の日、三峰川堤防の現地でお待ちしていると、愛車に乗ってさっそうと登場。矢島さんは車を降りるやいなや、夜なべをして今日のために用意していただいた資料で親切丁寧に説明いただきました。

その資料は矢島さんの情熱と行動力と地域への愛情がたっぷり詰まったうえに、文化芸術・芸能、人物、歴史、土木工学、農業土木など、様々な分野の要素がまんべんなく盛り込まれていました。広い知識と興味を感じます。

三峰川の霞堤のことですが、一般的に「霞(堤)」といえば「堤防開口部からのはん濫を人工的に許容し、そのはん濫水を一時的に貯留させることで下流の洪水被害を軽減できるもの」という認識がされています。これは私たち土木・河川工学の技術者の間でも一般的な認識ですが、急流河川である長野県内の天竜川や三峰川の霞堤防については、個人的には疑問を持っていました。

三峰川青島堤

急流河川では河川が急勾配なら、水を溜める部分も急勾配なので、特に三峰川では貯留効果は無視できるほど小さいはずです。もっと別の効果をねらったものだったと考えていて、何年か前に長野県立歴史館(千曲市)で明治の測量図を見せていただいて確信を得ました。洪水の水を意図した方向へ導くための「導流堤」、はん濫水を川へ戻すためのウィングであると。

霞堤の機能や設置経緯の整理を進めているときに出会った矢島さんが「はん濫水を戻す効果」を力説されていたのが、とても印象的でした。河川工学を専門とする私たち技術者と同じ結論に到達していたのです。

矢島さんは土木・河川工学を勉強されてきたわけではありません。科学教材販売や工場勤務を経て、今は農業で生活をされています。地域の活動に積極的で「青島区田園地帯景観形成住民協定委員会 委員長」「ナイスロードを霞堤街道と呼び改める会 事務局」など多くにかかわっていますが、それぞれが個性的で主張をもっています。

美篶小資料館で

テレビやインターネットでの情報がはん濫している現在、ここ伊那谷でも都会と同じ価値観を持つともなれば、地域のもつ固有の魅力が減退していくようにも思えます。矢島さんのように地域固有の魅力や特徴を発掘し、活性化の活動していることは素晴らしいことです。今私たち土木技術者も、国土保全のためには地域の活性化、魅力ある地域づくりが重要だと思っています。(終)