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天竜川上流ニュースレター 93号(2022/6/29)

三六災害60年シンポジウム

【会 場】 飯田文化会館ホール
【日 時】 令和4年6月12日(日) 13:30〜16:30
【出席者】約350名(一般約250名)
【主 催】三六災害60年実行委員会


◆基調講演
 元国土交通省河川局砂防部長 牧野裕至氏
◆パネルディスカッション
<コーディネーター>
 信州大学地域防災減災センター防災減災研究部門長 平松晋也氏
<パネリスト>
 前大鹿村長 柳島貞康氏
 松川町建設水道課 菊池杏奈氏
 松川町双葉保育園 細川浩子氏
 飯田市危機管理課長 後藤武志氏
 国交省天竜川上流河川事務所長 佐藤保之

 三六災害は1961(昭和36)年6月23日、梅雨前線の停滞に加え台風6号が接近し、伊那谷の広範囲で被害が拡大した土砂災害で、死者136人、浸水戸数1万8488戸、被害総額約341億円(現在の1,224億相当)という大災害でした。
 昨年はこの災害から60年の節目にあたりました。災害を風化させず、教訓として継承し、さらに地域と共に水害・土砂災害に備えた地域づくりを目指すことを目的に、三六災害60年シンポジウムを開催しました。
 なお、本シンポジウムは昨年度に開催を予定し新型コロナウイルス感染症の拡大により延期となったものですが、今回は十分な新型コロナウイルス感染防止対策を実施した上で開催し、国交省関係者、行政関係者、一般参加者含め約350人の来場がありました。また、会場では同時開催として三六災害パネル展示を行い、当日の様子のライブ配信による提供も行いました。

シンポジウム会場(飯田文化会館ホール)
シンポジウム会場(飯田文化会館ホール)
 基調講演では、天竜川上流域の降雨特性と地形についての講演がおこなわれました。
 講演を務めた牧野氏は、「降雨のメカニズムは、空気と水の作用のため一定の法則があるが、降雨量については、地形によって変わってくる。三六災害では、南アルプスと中央アルプスに南からの湿った空気がぶつかって大雨がもたらされた。暖気流には複数の経路があって、その収束部にあたる飯田〜大鹿で特に降雨量が多くなった」と、三六災害時の気象特性を話されました。
 また、「災害がおこりやすいかどうかは、単に雨量では決まらず、その地域の地形や地質によって変わってくるので、自分たちが住んでいる地域の特性を知り、防災・減災につなげていってほしい」と話されました。
 会場からの「この地域は大量の雨が降る地域なのか」という質問に対しては、「この地域は山々に囲まれているため、雨そのものの量は少ないが、雨が降るときは、地質の関係で300〜400ミリ程度の雨でも土砂災害になる恐れがある。気象情報だけでなく地域特有の地形や地質も含めて考える必要がある」との説明をいただきました。
基調講演の様子
基調講演の様子
基調講演をいただいた牧野裕至氏
基調講演をいただいた牧野裕至氏
 パネルディスカッションでは、「三六災害を振り返り、近年の異常気象を踏まえ、命を守る行動を考える」と題し意見が交わされました。
 1つ目のテーマである「三六災害を振り返る」では、「近所の家が濁流に流された」「土石流によって同級生が犠牲になった」(柳島氏)、「祖母が大西山の崩壊に巻き込まれたが消防団に救助され奇跡的に生還した」(菊池氏)、「両親の家が増水で流されたが、事前に役場からの避難指示を受けて避難していたため助かった」(細川氏)、など、自身の体験や、身近な被災者から聞き伝えられた生々しい災害実態が語られました。
 2つ目のテーマ「備える」では、当事務所長が「強い雨が降る頻度が約50年前と比べて、1.4倍に増えている」と近年の異常気象を説明し、「平成18年の豪雨災害などが発生しているが、治水施設・砂防施設の整備により幸いにも大規模災害には至っていない。しかし、今後の気候変動によっては大規模災害が発生する可能性があるため、注意していく必要がある」と話しました。
 飯田市危機管理課の後藤氏は避難のあり方について、「災害から身を守るためにはまず避難すること(自助)が大切で、次に地域での助け合い(共助)が大事になる。しかし、三六災害当時と比べ近年の地域のコミュニティー力(基礎的地域防災力)は低下している」とし、「防災訓練や避難経路・避難場所の確認を行い、地域で災害に備えることで基礎的地域防災力を向上させることが必要」などと話されました。
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
コーディネーターの平松氏
コーディネーターの平松氏
パネリスト
パネリスト
 3つ目のテーマである「伝える」では、松川町の菊池氏から、「三六災害を伝えていくことは、今後の災害から身を守っていくうえでも重要」、「三六災害等の体験談を聞くことによって自分の地域がどういう場所なのかを知り、さらにはハザードマップなどを確認することに繋がる」、「若い世代が興味を持てるように、SNSを活用することも効果的ではないか」などと話されました。
 細川氏からは、「三六災害の経験談を聞いていたおかげで、その後に起きた災害の際にも的確な避難ができた。自分のいる土地について、避難する指標(避難マーカー)を知り、それを後世に伝えていくことも必要」と話されました。
 前大鹿村長の柳島氏は、「大西山の崩壊跡地には、多くの方の努力により桜の公園が造られた。公園には慰霊碑や観音立像が設置されており、桜まつりなどの折りに、地域の方々に三六災害を伝えている」と話されました。
 当事務所長からは、地域防災教育の重要性を説明し、「防災教育の担い手を育てるために、教職員向けの防災教育にも力をいれている」との紹介を行いました。
 最後にコーディネーターの平松氏は、「災害伝承は、単に伝言ゲームのように伝えるだけではなく、個々に考えて模索していく行動を起こすことが重要で、それが災害時の自助の第一歩につながり、それが共助につながっていく」と、地域の防災力向上の必要性を話されました。
 シンポジウム参加者の高齢女性は取材に対し、「三六災害では自分は大きな被害に合わなかったが、救援作業の方々には大変お世話になった。他の地域でどんなことが起こっていたのかを知らなかったので、この機会に聞くことができてよかった。これを周りの人にも伝えていきたい。」と話されていました。
 このシンポジウムでは三六災害を知らない世代が地域防災の担い手となった今、将来起こり得る大規模水害に備えて、災害を知りその教訓を次世代に伝える事の大切さと、地域防災力向上の重要性を伝える良い機会となりました。
三六災害パネル展示
三六災害パネル展示



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