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天竜川上流ニュースレター 86号(2019/11/18)

天竜川シンポジウム
〜私たちが望む天竜川の姿、目指したい天竜川の姿〜

【会 場】宮田村村民会館大ホール
【日 時】令和元年10月26日(土)13:00〜16:30
【主 催】特定非営利活動法人天竜川ゆめ会議
【共 催】長野県、宮田村、宮田村教育委員会、長野県河川協会、
長野県治水砂防協会、(一社)長野県建設業協会、
(一社)長野県測量設計業協会、
(一社)建設コンサルタンツ協会関東支部長野県地域委員会
【出席者】約60名

 河川協力団体の「天竜川ゆめ会議」が、「私たちが望む天竜川の姿、目指したい天竜川の姿」をテーマとした天竜川シンポジウムを開催しました。 昨年開催された天竜川シンポジウムにおいて「川に行って自分たちが自然の一部であることを感じ、川で癒され、また危険を感じたときはいち早く避難することを学んでほしい」と結論されたことを受け、今回のシンポジウムでは、近年各地で頻発する災害復旧時における河川整備を念頭に置いた川づくりのあり方について3名の演者が講演されました。

【講座1】「美しい山河を守る災害復旧について」
中部地方整備局河川部河川工事課:松原課長補佐

 「美しい山河を守る災害復旧基本方針」(通称:美山河)とは、河川内で行われるすべての災害復旧事業について自然環境の保全に配慮した復旧を実施するもので、平成10年に策定され、平成30年の改定で改良復旧事業の追加、河川・環境特性の把握の明示、様式等の簡素化によって現場技術者の労力負担軽減が図られたと説明がありました。
今後の災害復旧では、「美山河」に基づくことが原則であること、基本方針で多自然川づくりの考え方に基づく復旧として標準的な手法が示されていること、環境特性には自然環境のほか、歴史文化など幅広い項目が含まれ、従前からの環境情報整理などの取り組みが重要との説明がありました。その上で、災害復旧と改良復旧の違いや留意すべき環境要素などについて、「美山河」での定めとともに具体的な事例で取り組みの紹介がありました。  災害復旧における河岸や水辺の保全については、護岸へ環境配慮した折居川(新潟県)の事例、護岸ブロックをデジタルカメラで撮影し画像を解析・評価した古佐井川(青森県)の事例、歴史的景観に配慮した久田川(長崎県)事例などの具体例が紹介されました。
改良復旧に伴う河道計画では、従前の河道特性を踏襲して多様な河川環境を保全して災害復旧した牧佐内川(北海道)の事例や、寄州の植生を復元した阿武川(山口県)の事例の紹介がありました。

松原課長補佐の講演
松原課長補佐の講演


美しい山河を守る災害復旧基本方針(H30.6)より抜粋
美しい山河を守る災害復旧基本方針(H30.6)より抜粋


牧佐内川(北海道)の環境保全事例(国交省HP)
牧佐内川(北海道)の環境保全事例(国交省HP)


【講座2】「災害復旧と”いい川”づくりの考え方からよりいい川・よりいいまちを目指して」
(株)吉村伸一流域計画室代表取締役:吉村伸一氏

 市民の求めている川の姿を大切に、より良い川にしていくこと、河川の質を高めること、単に治水に着目し、治水と環境をトレードオフの関係ではなく、非常時(洪水時など)と平常時の川のデザインや設計を統合して考えることが大切であるとの説明がありました。
その中で、定規断面での河川整備について、いたち川(横浜市)における「川のリハビリテーション」の取り組み事例をもとに、流下能力のみを考えるのではなく、いい川にするという視点で川らしさや多様な価値を考えることが重要との話がありました。
そして、災害復旧にあたっても、日常の地域の暮らしや風景を残しつつ復旧することが本来の目的であり、そのための要点や工夫を模索する姿勢が大切とのことでした。関連の事例として、土谷川(岩手県)や元町川(岩手県)を例に、地域の風景や特性を活かした河川整備を紹介され、伊賀川(愛知県)や川原川(岩手県)の例では、親しめる川をつくっていくことも重要であると紹介されました。
このほか、甲府盆地の信玄堤(かすみ堤)の機能や、滋賀県の流域治水の推進に関する条例を引用され、今後の人口減少社会を念頭に置いた治水や環境整備の在り方を考える必要性も示唆されました。


吉村伸一氏の講演
吉村伸一氏の講演


伊賀川(愛知県)の整備事例(愛知県HP)
伊賀川(愛知県)の整備事例(愛知県HP)


【講座3】「“いい川”づくりに向けた市民活動の変遷」
NPO法人全国水環境交流会代表理事:山道省三氏

 川における市民参加等の経過について、多摩川での水質浄化の取り組みに代表されるように、上下流の共通の目的に対する活動が「川の流域ネットワーク」となってきた経過が説明されました。これらの動きの中で、行政や市民が連携して活動を進めるパートナーシップ型の取り組みが始まり、シンポジウム等の開催やまちづくりへの市民参画等が進んだこと、阪神淡路大震災や東日本大震災を契機として市民ボランティアによる災害復旧活動が注目される状況となったとの説明がありました。市民参加の動きは河川でも進み、河川協力団体制度が立ち上がり、協働型河川管理が増加したことが紹介されました。
一方で、河川管理者の共通理解や協働という点では課題も残っており、河川へのワイルドフラワーの導入の是非や、国土強靭化対策での河川樹木伐採事業への対応などを考えると一層の相互理解の醸成が必要だとの考えが示されました。
また、今回のシンポジウムのテーマである「いい川づくり」については、川の自然を豊かにするだけではなく、川と地域の関係が密な状態が望まれるとの話がありました。あわせて、日常的な川体験と災害時の防災体験をセットで考え、川と人との関係を再構築し、全体的な防災・減災意識、自主防災意識の向上をめざす必要性があり、そのために、まずは川が好きな人を増やしていくことがいい川づくりに直結するとの結論を述べられました。

山道省三氏の講演
山道省三氏の講演





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