天竜川上流河川事務所では、6月の「土砂災害防止月間」に事業の周知と防災知識の普及を目的とした「砂防・地すべり現場見学会」を毎年開催しております。今回は、大鹿村立大鹿小学校3、4年生を対象として実施した現場見学会の様子をご紹介します。
最初に、小渋川砂防出張所の砂防ステーションで、地域の過去の災害や現在の砂防工事について説明しました。
昭和36年の三六災害の際には多くの大鹿村民が亡くなり出張所の職員も犠牲になった説明を行うと、「三六災害」というワードに、「あぁ、知っている」という反応を示す生徒もいて、大鹿村では災害教訓も受け継がれている様子が感じられました。
平成26年の南木曽町豪雨災害では、中学生が1名犠牲になったことや、平成30年の豪雨の際には、近隣の鹿塩川周辺でも土砂崩れが発生し、道が土砂で覆われてしまった説明を行いました。身近な場所での被災の話を聞いて、被害を減らすためにも砂防工事が大切であることが伝わったようです。
砂防ステーションで砂防について学習
次に、国土交通省で作製した「このつぎなにがおきるかな?」という防災カードゲームを使って遊びながら防災について学習しました。このカードは学校教育等の場で楽しみながら防災について学ぶことができるように工夫されたカードで、トランプやカルタのような簡単な遊び方で自然に防災のことが身につきます。
防災カードゲームで遊びながら防災学習
室内での学習のあとは滝沢第2砂防堰堤の工事現場を見学しました。ここでは施工業者の方から堰堤の仕組みの説明の他、工事では安全や熱中症などにも気をつけていることが紹介されました。
建設中の堰堤の規模の大きさを実感するとともに、工事の大変さも感じられたようです。
建設中の滝沢第2砂防堰堤を見学
近くで見て堰堤の大きさを実感
続いて、塩川床固工群の工事現場を見学しました。ここは観光利用の多い「塩の里」という特産品直売所の向かい側に位置しています。このため「土砂が流れ出てきた時に、塩の里にも被害が及ばないように、川の底を床固という工法で工事をしている」と、こうした施設にも配慮していることを説明しました。説明を聞いていた児童からは「ここが床固工ですか?」と質問が出るなど、工事にも関心が持てたようです。
この工事現場では、土を掘る、均す、盛る、削るなどの作業で活躍する「バックホウ」という重機に実際に乗って、土を移動させる体験を行いました。「ガタガタして怖かった。」「目が回りそうだった」「石をガリガリ削って面白かった」という感想も出て、工事現場の雰囲気を感じられる貴重な体験に喜んでいる様子でした。
工事で活躍するバックホウに乗車体験
次に「光波計」という機器を使って、二人一組で距離や高さを正確に計測する体験を行いました。「5cmの誤差があっても工事は進められない。」という説明に、緊張した面持ちで体験しているようでした。
光波計での測量の体験
この現場での最後には工事用のドローンについて説明しました。雨が降り出したため、実際に飛行しませんでしたが、ドローンで撮影された工事現場や川の映像を見て、最新の技術が工事現場でも活用されていることに感心の様子でした。
工事現場で活躍するドローンの説明
体験の最後は、鹿塩川に移動して渓流魚のアマゴを放流しました。アマゴが大きく成長することと災害が発生しないように願って、元気いっぱいのアマゴをふるさとの川に放しました。
災害のない川を願ってアマゴの放流
体験した大鹿小のみなさん 見学会スタッフとともに
天竜川上流河川事務所では、災害から地域の皆さんの生命や財産を守るため砂防事業を進めています。その一環として今回のような流域の小・中学校の防災学習の授業支援にも取り組んでいます。実物を見て、体験することが防災意識の向上の近道です。体験が今後の地域防災に役立つことを願っております。