この度、天龍村および阿南町において天竜川中流地区直轄地すべり対策事業を着手しました。今回は着手を記念する式典の様子を紹介いたします。
天龍村、阿南町周辺の天竜川中流地区は、両岸を切り立った谷地形に囲まれ、点在する集落を結ぶ基幹道路は地形的特徴から道幅も狭く、鉄道は路線数も少ない地域です。その上、この地区には地すべり地が多数存在しており、近年も小規模な地すべりの発生や、斜面崩落によるJR・県道など重要交通網の運休・途絶が生じています。
この地区で規模の大きな地すべりが発生すると、地すべりによる直接被害の他、地すべりの土砂が河川を堰き止めることで形成される天然ダムによる湛水被害、および天然ダムの決壊による氾濫被害も危惧されます。
これらの事から、地域の基幹集落である天龍村平岡地区だけでなく、同村中井侍地区、阿南町開窪地区を含めての地すべり対策が必要となっています。
この事業は、本年度から概ね20年間で、総事業費は195億円を予定しており、本年度は、平岡地区および開窪地区から計画、工事が始まります。
式典では、まず始めに、国土交通省中部地方整備局河川部長と天竜川上流直轄砂防事業促進期成同盟会長の杉本駒ケ根市長から式辞がありました。
この式辞では、自然災害が近年多発しており、昨年の土砂災害の発生数は過去最多であったことの説明がありました。その中で地すべり等の危険のある当地域での事業は、地域の安心安全のため重要であり、息の長い工事となるが着実に事業を進めていきたいとの挨拶がありました。
中部地方整備局河川部長による式辞
駒ケ根市長による式辞
続いて、祝辞として、衆議院議員の宮下一郎様から、8年後にはリニアの駅が飯田市に出来る予定であり、南信地域の発展のため、ここ天竜川中流域も安心安全を確保できる土地にしていかなければいけないとのお言葉をいただきました。
衆議院議員宮下一郎氏による祝辞
続いての祝辞として、参議院議員の宮島喜文様からは、山紫水明のすばらしい環境であるが、同時に厳しい地形でもある。安心して暮らせる基盤を作るためにこの事業は重要であるとのお言葉をいただきました。
参議院議員宮島喜文氏による祝辞
続いて、長野県副知事の太田寛様からは長野県知事阿部守一様からの祝辞が代読されました。この中では、重要なお祭りが受け継がれているなど、文化的にも素晴らしい歴史のある土地であるが、同時に自然の脅威にさらされてきた歴史をもつ土地であるという紹介がありました。
長野県副知事太田寛氏による祝辞
祝辞に続き国土交通省水管理・国土保全局砂防部保全課長から、事業の背景やこれまでの過程について紹介しました。
ここでは、昨年の広島や北海道などの豪雨災害に触れ、昨年一年間で土砂災害が1459件発生し、161名の命が犠牲になったこと。
さらに、過去の災害事例として、約1300年前の遠江地震の際の地すべりについて紹介しました。地震によって、各地で地すべりが発生しましたが、静岡県側の佐久間ダム下流でも大規模な山崩れが発生し、数十日にわたり天竜川の水が堰き止められ、その天然ダムが決壊し下流地域に大きな被害をもたらしたこと。満水時には約100ｍもの水位の上昇があったと推測されていることなど、天然ダム決壊の脅威について説明しました。
水管理・国土保全局砂防部保全課長による挨拶
続いて事業概要を天竜川上流河川事務所長から説明しました。
国土交通省の直轄地すべり対策事業としては、平成21年から始まった山形県の月山地区直轄地すべり対策事業以来、10年ぶりの大規模で重要な事業となること、平岡地区および開窪地区で実施を予定している工事内容などについて説明しました。
天竜川上流河川事務所長による事業概要説明
天竜川上流河川事務所長による事業概要説明
式典を記念して、参加者による植樹が行われました。天龍村に縁のある「カンザクラ」と阿南町の町木「ハナノキ」の苗を植樹し、苗は後日、天龍村・阿南町、両町村の地すべり防止区域内に定植させて頂く予定となっています。
天竜川中流地区直轄地すべり対策事業は、地域の安心・安全確保のために重要な事業となります。長期にわたる事業となりますが、今後ともご理解・ご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。
