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天竜川上流ニュースレター 34号(2014/10/31)

天竜川シンポジウム
〜豊かな自然を大切にし、地域の特性を生かした景観の創出〜

【会  場】飯島町文化館 大ホール
【日  時】平成26年10月18日(土) 9:30〜17:00
【主  催】特定非営利活動法人天竜川ゆめ会議
【共  催】飯島町、飯島町教育委員会、長野県、長野県治水砂防協会、(一社)長野県建設業協会、(一社)長野県測量設計業協会、(一社)長野県南部防災対策協議会、(一社)南信防災情報協議会、(一社)建設コンサルタンツ協会関東支部長野地域委員会
【参加人数】約150名

■開催概要
 長野県は日本列島のほぼ中央に位置し、「日本の屋根」とも呼ばれます。全国的に最も清涼な水の得られる最上流の県のひとつとして知名度が高く、豊かな水環境を有しています。長野県を源とし、太平洋遠州灘に注ぐ天竜川の流域には、四季折々に姿を変える風景や河川、自然と水田の織り成す美しい水辺の風景が広がります。
 今回の「天竜川シンポジウム」では、景観・川づくりで先進的な研究者を招き、地域特性や社会特性を生かした景観づくりの着目点や留意点を拾い出しながら、住民と行政が協働で取り組む「流域の景観形成」の方向性を会場全体で考える機会となることを期待して開催されました。

会場となった飯島町文化館

会場となった飯島町文化館

■エクスカーション
 午前中は、エクスカーション・体験型現場見学会として、太田切川の床固工群と中川村坂戸峡にある登録有形文化財:坂戸橋を見学しました。当日は見事な快晴となり、山の麓まで下りつつある紅葉も楽しみながらの現場見学となりました。

快晴の下、太田切川流路工を見学

快晴の下、太田切川流路工を見学

 太田切川流路工では、床固工群の整備目的や経過について説明を受けた後、長大な吊り橋の「こまくさ橋」を渡りながら、水辺へアプローチするための階段(緩傾斜護岸工)や魚が遡上できるように工夫された常水路について、実際に見学しながら説明を受けました。参加者からは、河原にある巨石がアクセントになっていて自然な景観をつくっている、せせらぎ的な音が心地よい、などの感想が聞かれました。

吊り橋「こまくさ橋」から見学

吊り橋「こまくさ橋」から見学

 中川村の坂戸峡にある坂戸橋は、昭和8年に完成した鉄筋コンクリート造りのアーチ橋で、完成当時は、この構造としては日本一の規模を誇りました。現場見学会では中川村役場の担当の方から説明を受けた後、参加者全員で橋を渡り、左岸側に整備された展望台から橋を望みました。坂戸峡にかけられたこの橋は、両岸の崖や白い礫河原と調和し、天竜川を代表する橋であることを再認識しました。

美しいアーチ橋である坂戸橋を下流側から

美しいアーチ橋である坂戸橋を下流側から

■河川管理者報告
高橋 雅氏(長野県建設部 下伊那南部建設事務所)
「遠山川の景観形成に向けた取り組み」

 午後の部では、最初に高橋氏から遠山川における河川改修事業の取り組みについて報告がありました。
 事業は「信州のいい川づくりモデル事業」として進められており、「遠山郷いい川づくり会議」による議論を通じて地域住民と協働で実施されました。地域の子ども達の思いも盛り込むため、保育園児に「こんな川にしたい」という願いを絵に描いてもらったことや、地域住民とイメージを共有するために工夫した点を紹介いただきました。

講演者:高橋 雅氏

講演者:高橋 雅氏


■基調講演1
佐々木 葉氏(早稲田大学 教授)
「川の風景から学ぶこと」

講演者:佐々木 葉氏

講演者:佐々木 葉氏

 佐々木先生からは、川の風景は、人と川との関わりを映し出していることについて、事例を交えてお話しいただきました。
 広島県の太田川では、水上交通として雁木(がんぎ)タクシーが運行されており、船着場へのアクセスなどを通じて人々が水辺を楽しめるような仕掛けが計画・展開されている例を紹介いただきました。
 天竜川については、
 ・自然が美しすぎる故の苦悩
 ・人との関わりの接点をどのようにつくるか
 ・水の美しさと生き物の豊かさこそが鍵
との課題が挙げられました。「常に多様な関わりがあることで、川の風景は奥深くなる」とのフレーズは、今後の天竜川における河川整備に大変参考になるものでした。


■基調講演2
島谷 幸宏氏(九州大学 教授)
「川づくりからみた河川景観」

講演者:島谷 幸宏氏

講演者:島谷 幸宏氏

 島谷先生からは、いい川づくりのための工夫やコツなどを、実際の事例を交えてお話しいただきました。まず、川づくりの心構えとして、技術者はいい川をつくるためにその川を好きになること、ポジティブに関わること、地域住民は、いい川ができていない場合には指摘することが重要とのお話しがありました。また、川づくりのコツとしては、「川のかたちを覚えることに尽きる」とのこと。このフレーズは、河川管理者としては肝に銘じておかねばならないと改めて思いました。
 川の良いところを見抜くには、川を歩くこと、人に聞くことが早道であること、技術的には流速を速くしないこと、元の河床の形状のままスライドダウンすることが重要など、今後の河川整備を進める上での基本を教示いただくことができました。


■討論
「河川景観のつくり方」

討論会の様子

討論会の様子

 討論では、パネラーとして佐々木氏、島谷氏に加え、宮本 善和氏(江戸川大学非常勤講師)、山岸 勤氏(長野県建設部 飯田建設事務所長)、福澤 浩氏(NPO法人天竜川ゆめ会議 代表理事)、天竜川上流河川事務所副所長:中島も参加し、以下のような活発な議論が展開されました。
 広島県の太田川では、水上交通として雁木(がんぎ)タクシーが運行されており、船着場へのアクセスなどを通じて人々が水辺を楽しめるような仕掛けが計画・展開されている例を紹介いただきました。

 ・人々の暮らしが風景をつくる根っこである。
 ・いい川づくりのためには、五感を総動員することが大事。
 ・川のよさを自分たちが発見、発信すること、誇りに思うことから始まる。
 ・風景は100年、1000年かけてつくられてきたもの。長いタイムスパンで考える必要がある。
 ・目に見えないものを想像する力を養うこと。それには体験・経験することが大事。

 会場の参加者からも以下のような熱心な質問や意見が投げかけられ、議論は一層深まりました。

 ・昔は河原の木を煮炊きや風呂の薪に利用するなど身近な存在であった。
 ・諏訪湖では水質の浄化とともに親水性も向上し、水辺に近寄ることができるようになりつつある。
 ・天竜川の上流域は、下流と違って川が近くにあり、音や川の景色を楽しむことができる。他の地域の方々の意見や感想を取り入れることで、新たな発見につながるのではないか。

 今回のシンポジウムでは、日頃、天竜川に深く関わっている方々の意見のほか、全国各地でご活躍されている先生方からみた天竜川の印象もお聞きすることができ、天竜川のよさを再発見することができました。天竜川上流河川事務所では、50年、100年先を見据え、伊那谷の人々の暮らしにとけこんだ誇れる河川景観を保てるよう河川事業を進めて参ります。


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