迫り来るインフラ老朽化問題への対応
私たちの生活を支えている現在の道路や橋梁、トンネルなどのインフラ施設は高度成長期に集中的に整備されたもので、中でも橋梁は10年後に約61%が建設から50年以上経過します。急速に老朽化による損傷が進み対応が急がれますが、全国の橋梁のうち約9割が地方公共団体の管理であり、膨大なコスト負担や技術者不足が課題です。そこで重要なのが、損傷が軽いうちに補修を行う「予防保全」の考え方。これにより安全を担保しながらトータルコスト削減を実現できます。当センターでは予防保全型のインフラメンテナンスに向けてさまざまな工夫を行っており、私も地方公共団体対象の技術相談、研修や講習会の講師などに奮闘しています。
相手が求める情報を分かりやすく丁寧に伝える
研修の一例として、「橋梁補修DIY」があります。これは言わば、橋梁の損傷箇所の進行を遅らせる「初期手当」のこと。例えば、橋梁の隙間から漏水していれば、発泡ウレタン充填材を使って止水して錆の進行を抑えるなどいろいろな方法があります。こうしたメンテナンスの方法や点検の留意点などを、座学をはじめ現地実習やVR体験で地方公共団体の方々に分かりやすくお伝えするのが私の仕事です。参加者は若手職員や点検・診断の経験が浅い方がほとんどなので、説明時にはメンテナンスの重要性や方法をなるべく丁寧に伝え、聞き手が何を求めているのかを考えながらお話しするようにしています。
一筋縄では行かない、橋梁メンテナンスの難しさ
老朽化対策は、シンプルに考えれば、橋梁の架け替えが最も簡単な方法と言えるのですが、膨大なコストや人材、時間がかかります。そうではなくて、今ある構造物をいかに長く使うかをまずは考えることが大事。それがとても難しいところで、橋梁の場合は架かっている場所の環境や交通量によって状態は全く違いますし、橋梁の種類や構造も異なります。つまり、メンテナンスも画一的にはできず、適切な補修判断は困難を極めます。私としてはその難しさが、この仕事の面白さであり、手応えを感じるところでもありますね。先輩方がつくってくれたインフラ施設をうまく使い、次世代へ引き継いでいくのが私たちの使命。
責任は重大ですが、皆さんの笑顔につながる仕事に携われていることは幸せなことだと感じています。