+++ ふじあざみ60号(3)  +++
 
 
近年全国的に、宅地化や湧水地の減少などにより、自然のホタルを観ることが少なくなってきました。 自然豊かな富士宮市でも例外ではありません。きれいな水、豊かな自然に生息するホタルを、昔のようにもう一度呼び戻そうと富士宮市の各所、どんと池(井之頭中学校)、ホタルの里いのかしら(田貫湖東側)、丸山ホタルの池(大中里)などで、地域の方々によりホタルの保護育成活動が行われています。
今回は、富士宮市立井之頭中学校内の「希望の森」を紹介します。
希望の森

ホタルがいる自然の池「どんと池」
 
 井之頭中学校には、学校の敷地とその周囲に約5haの学校林があります。この森の中に昭和60年、卒業記念行事によって作られた日本庭園、花壇は、生徒たちにより「希望の森」と名付けられています。そして、この森を守り、育てていくため、生徒会活動として、「希望の森委員会」、また地元の方々により「希望の森を育てる会」が発足されました。
 このような活動は、学校・家庭・地域社会が結びつき、生涯にわたり、地元の社会と環境に関心を持ち続けることや、自然を守るための基礎知識を身につける良い機会となっています。
 「希望の森」にはたくさんの野草が四季折々に花を咲かせ、さまざまな野生動物、野鳥などを見ることができます。このような豊かな学校林は、地元の方々と生徒たちの力によって、大切に守り育てられています。

 

ホタルの育つ環境づくり
 平成10年に「希望の森にホタルの光を」を合言葉として、井之頭中学校ではホタルの保護育成活動が始められました。校内と希望の森の中には全部で3つの池があり、そのひとつに自然の池「どんと池」があります。そこへ、さらに学校から2km離れた所から、富士山の湧水を引き込みました。湧き水は、水質が良く、また池の周囲は自然が豊かで、ホタルが繁殖できる環境がそろっていたこともあり、自然との調和のシンボルである「ホタルの復活」には最適の場所になりました。
 学校でのホタル育成活動をサポートするために地元の方々は「ホタル育成サポートチーム」を結成し、ホタルの観察活動をはじめ、ホタルのえさであるカワニナ飼育など、育成活動の支援をつづけています。  生徒たちは、ホタルの調査や飼育活動をサポートチームの方々と一緒に行うことで、環境を守る知識や技術を知らず知らずのうちに学んでいるそうです。



ホタルの育つ環境づくり
 6月23日、井之頭中学校において、「ホタルの夕べ」が行われ、全校生徒をはじめ、多くの地域の皆さんが集まりました。はじめに校長先生のあいさつがあり、そして「ホタルサポートチーム」の方による活動報告などが行われました。
 会場の「どんと池」では、たくさんのホタルが飛びかい、水上を舞うホタルの光と水に映る光とが重なり合い、とても幻想的な世界が広がりました。
 池の周りからは、「うわぁーきれい!」と感動の声もあがっていました。 

+++ 取材を通して +++    
 失われつつある自然環境を取り戻すためには、どれだけ大変なことか、そして長い年月を必要とするのかを肌で感じとれる素晴らしい取り組みではないでしょうか。次世代を担う子どもたちにとってもかけがえのない勉強になることと思います。私たちも、富士山の砂防事業を担当するものとして、どこか目に見えないところで気持ちが一つにつながっている気さえ感じました。これからも、希望の森そして各地域での蛍の里作りの夢が益々膨らんでいくことを楽しみにしています。


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