+++ ふじあざみ60号(2)  +++
 
1.富士山火山防災対策の背景
 富士山周辺は、広大な山麓に多くの人々が生活し、重要な交通 路線(新幹線、東名高速道路等)があり、東京からも近いことから、もし富士山が噴火した場合には、大きな被害が起きる恐れがあります。
 近年、多くの自治体では、洪水などの災害発生による被災予想を平面的な(2次元)ハザードマップ(防災地図)を作成し、地域の人々に対して危険の可能性や避難経路、避難場所を知らせるなどといった対応を順次進めています。
 火山災害においても、全国的に火山防災対策への意識が高まっているなかで、全国の主要な「活火山」を対象にハザードマップの整備が進められています。
 富士山においては2004年6月に内閣府より「富士山火山防災マップ」(図-1)が公表されています。そして、その火山防災マップを基にして、富士山周辺の各自治体では、それぞれのエリアを網羅した詳細な富士山火山防災マップを作成して、火山防災対策に取り組んでいます。
図―1 富士山火山防災マップ

2.溶岩流3次元マップの概要
(1) 立体化の意義
 富士砂防事務所では、富士山周辺での火山防災の意識の高まりの中で、住民だけでなく、観光客など多くの富士山を訪れる方々に対しても、「火山防災」への認識を深めて頂くために、溶岩が流れた場合のシミュレーション結果 を分かり易く表現した「富士山溶岩流3次元マップ」を作成しました。
 それまでの火山防災マップは、溶岩流の流れ出る範囲は示されているものの、時間経過とともにどのように流れるのか?といった動きに関する情報が充分に表現できていませんでした。また、地図が細かい場所まで表現されていないので、身近な地域での被害の予想範囲がいまひとつわかりにくいといった問題がありました。
 今回作成した「富士山溶岩流3次元マップ」では、映像を立体化して、さらに動画で表示し、それを鳥のように上空から、自由な視点で見ることができるようにしてあります。  そして、さらに火山防災意識の向上に役立つように、溶岩流をイメージしやすく工夫して作成してあります。



(2) 溶岩流の表現方法  
富士山における溶岩流のシミュレーションは、富士山ハザードマップ検討委員会が、過去の火口位 置と噴火の大きさを調査し、それぞれの噴火の大きさ毎に「想定火口位置」、「噴出量 」等を設定して、合計54パターンを作成しています。
 さらに、その54パターンの結果を重ね合わせ、
(図-2 溶岩流ドリルマップ)溶岩流の到達時間が同じ範囲を線で結び、「溶岩流可能性マップ」(時間経過に伴う溶岩流の到達範囲を示した地図)(図-3)として表示しています。
 このようなシミュレーション結果を、溶岩流の到達する時間とその流れ出る範囲を理解し、疑似体験してもらうため、溶岩流を「動画」で表現し、時間経過について7日~45日と長期間にわたるものについても、短時間でイメージしやすいように変倍処理して作成しています。
 
 
図-2 溶岩流ドリルマップ
(54パターンのシミュレーションを重ね合わせた図)
図―3 溶岩流可能性マップ
(時間経過に伴う溶岩流の到達範囲を示している)
 
  図-4 溶岩流3次元マップの表示例  
(航空写真データと地形のデータを重ね合わせることで、立体的に表現している。また想定する溶岩流の流下時間が表示されるので、現地への到達時間がひと目でわかる)



(3) ランドマーク等の表示
 ランドマーク(市町村役場や学校、避難場所等の位置や名称)や地名等を表示し、さらに防災対策上重要な避難路や緊急道路となる主要な道路も表現することで、実際の避難の参考になるように作成してあります。
 
図―5 ランドマークの表示

3.今後
 今回作成した「溶岩流3次元マップ」は、今後の火山防災対策において役立つものと考えています。例えば、火山噴火の兆候が見られた場合※1に、溶岩の流れ出る範囲や時間毎の移り変わりをすばやく立体的に表現し、その画像を市町村や住民の方々に提供することで、迅速な避難に役立てることができると考えています。
 今後、当事務所への来訪者や講演会などでも「溶岩流3次元マップ」を紹介していくほか、総合学習など小・中学生等を対象とした富士山学習にも活用していただきたいと思っています。


※1 現在、富士山においては、 噴火等の兆候は全く見られません
 
 
写真―1 溶岩流シミュレーション 操作状況
(専用コントーラを使って、ゲーム感覚で操作できる)


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