ふじあざみ58号(1)
ふじあざみ タイトル
平成16年12月 土石流発生後の堆積土砂比較写真
今も崩れ続ける「大沢崩れ」
 平成16年12月5日、富士山では12月としては珍しく1時間に30mmを超える大雨が降り、大沢崩れから大量の土砂が土石流として流出しました。幸い土石流は、市街地の直前で砂防施設により捕捉され、災害は発生しませんでした。(第52号参照)今回は、この土石流から1年が経過した大沢崩れについて報告します。

■ 土石流発生後1年間の「大沢崩れの変化」

 上の2つの航空写真は、平成16年12月と平成17年12月の大沢崩れの状況を比較するために、ほぼ同一の箇所から撮影したものです。平成16年12月の写真(左)は、土石流発生直後に撮影したもので、特に黄色い点線で囲った部分の土砂が水の流れにより洗い流されています。

 1年後の写真(右)では、この部分に大量の土砂が堆積し、地面の凹凸がなくなっている様子がわかります。これは、この1年間で、上部の斜面が活発に崩壊を続け、崩壊した土砂が谷を埋めたためです。この1年間に最大高さ10m近くの土砂が堆積しています。

■ 土石流発生の可能性、高まる

 斜面の崩壊と谷底への土砂の堆積は今回に限ったことではなく、大沢崩れは毎年平均で約10万m3(10t積みダンプ2万台分)の土砂が斜面から崩れていると考えられています。そして崩れた土砂は大沢崩れの谷底に一時的にたまり、次の土石流の発生源となります。近年では平成9年、12年、16年と大規模な土石流が発生しており、近い将来にまた土石流が発生すると考えられます。

 崩壊が続く大沢崩れに対して富士砂防事務所では、昭和57年より「富士山源頭域調査工事」として、種々の試験施工を行い、大沢崩れの崩壊防止手法について検討しています。厳しい自然環境、景観との調和など、さまざまな課題がありますが、富士砂防事務所では、今後も試験施工を継続して高標高、低温地域に適した工法などの開発を行っていきます。

 

砂煙を上げ、崩壊を続ける大沢崩れ(平成17年9月21日撮影)
崩壊中の大沢崩れ
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