ふじあざみ56号(3)
富士山に暮らす
富士山を源とする清流に自生する幻のカワノリ
「芝川のり」

■幻のカワノリ

 富士山西麓を源とする清流において自生する芝川のりは、淡水産の緑藻の一種であるカワノリのことで、色は純緑、味は甘みがあり貴重な味の逸品として珍重されてきました。特に10~12月上旬に採取される秋のりは美味しいと言われています。室町時代や江戸時代には幕府、朝廷に献上されていたというほど古くから静岡県富士宮市の特産品として知られ、昭和20年代までは30~40cm程の大きさの芝川のりが年間5,000枚近くも生産されていました。しかし、今では収穫量が激減し、「幻のカワノリ」と言われるほど大変貴重なのりとなっています。

芝川のりの天日干し
芝川のりの天日干し 写真

■芝川のりの生育

 カワノリは、栃木県から九州までの太平洋に流れる河川上流部の特定の箇所だけに生える特異性があり、生育する条件は、

    1.水温が通年8~15℃と低いこと
    2.流速が秒速0.5m以上であり、特に秒速 1~1.5mでよく成長すること
    3.日当りのよいこと
    4.水深30cm以下であること

とされ、これら条件がそろわなければ育たないデリケートな植物です。

■芝川のりの育成に向けて

 ところが平成10年に、ある場所で多量に芝川のりが生育していることが確認され、静岡県富士農林事務所は、芝川のり研究会を組織し生態調査を行いました。この調査をうけて富士宮市のフードバレー構想推進室においても、平成16年より芝川のり生育状況調査を開始し、将来の芝川のり養殖技術の確立に向けた取り組みが行われています。近い将来、芝川のりが食卓に手軽な一品としてあがるときが来るかも知れません。

芝川のりの生育状況調査
芝川のりの生育状況調査 写真

(資料提供:富士宮市フードバレー構想推進室)


富士山に寄せる想い

大自然に囲まれた宿泊訓練施設「富士山麓山の村」

 富士山の自然は、人々に大きな感動を与え、多くのことを教えてくれます。今回は、富士山南麓の大自然の真っ只中にある「静岡県立富士山麓山の村」の職員の皆さんにお話を伺いました。

 「富士山麓山の村」は、富士山麓の大自然の中での野外活動や創作活動、森を育てる勤労体験活動などをとおして、創造性を伸ばし、新たな自分を発見してもらうことを目的に、平成元年に、高校生集団宿泊訓練施設として開所されました。その後県内の学校・青少年育成団体・一般成人団体等にも開放されて、今日まで多くの方々に利用されています。

富士山麓山の村 マップ

自然と感動と思い出がいっぱい

 富士山南麓を横切る富士山スカイライン沿いに「富士山麓山の村」の入り口があります。そして、そこから2~3km入ったところにやっと多目的ホール、管理棟などの建物が見えてきます。そして、そこに辿り着くまでの途中の小道からは、見上げれば富士山頂、見下ろせば駿河湾が一望でき、まさに広大な自然とひとつになった気持ちになれるとのことです。森に囲まれた建物周辺は、車等の雑音とは無縁で、時折シカ、ウサギ、リスなどの野生動物がひょっこり顔を出し、その素晴らしい出会いに感動するそうです。また、この施設を利用した小学生からは、「大自然のなか早起きして見た朝の素晴らしい景色に思わず立ちすくんでしまった感動」や、「ガスも使えず火を起こすにもひと苦労の生活を体験して、不便だったけどみんなと協力してやりとげることができた満足感」などが書かれた感謝とお礼の手紙が多く寄せられ、ここで働くことの励みになっているそうです。

子供達のまきわり体験 写真 管理棟 写真
子供達のまきわり体験
管理棟

きれいな富士山で訪れる人を迎えたい

 最後に職員の皆さんに「富士山麓山の村の一番のセールスポイントは?」と伺うと、即座に「周りの素晴らしい大自然」との答えが返ってきました。この大自然の中にいると、時間がゆっくりと流れているようで心が癒され、イヤな事など忘れてしまうそうです。富士山は日本の宝であり、私達の職場でもあるので、みんなで大切にし、訪れる人たちを迎えたいと笑顔で話されていました。

■静岡県立富士山麓山の村

     宿泊定員550名で食事は給食または自炊
     開所期間は4/1~10/31日まで
     TEL(0545)36-2236

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