3.3.1 設楽ダム計画の代替案としての森林保全 |
以下の理由から、山間部における森林保全、あるいは水源涵養林の育成が代替できるのは、設楽ダム計画における機能のごく一部に限られると判断される。
ただし、目下のところ定量化できない効果が多いため、今後もさらに調査・検討を続ける必要がある。
1)現状において丘陵地・山地のほとんどが森林であり、森林面積を増やす素地が少ない。
2)以下の点から、一般的に水源涵養機能が大きいとされる広葉樹林への転換が容易でない。
・地質(2.1.3節)からみて、丘陵地・山地は地表が固く広葉樹林が育ちにくい部分が広く分布している。
・国有林等、公的管理による直接的な樹種の転換の可能性のある森林の割合が少ない。(図-3.3.1)
3)森林のピークカット能力や水源涵養機能は学問的に今なお不明確で、効果の程度は疑問 |
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図-3.3.1 豊川流域内の森林樹種と所有者 |
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3.3.2 下流河道部改修のみによる治水安全度向上についての試算 |
(1)河道内全樹木伐採による洪水時の水位低下
河道内の全樹木を伐採すれば、牟呂松原頭首工の上流区間以外では、4,000〜5,000m3/sの洪水を支障なく流すことができる(図-3.3.2)。
(2)全低水路拡幅による水位低下
これに加えて、全低水路を拡幅すれば6,000m3/sの流量を流し得る河道となる(ただし、牟呂松原頭首工上流区間を除く)。(図-3.3.3)
(3)全樹木伐採時の河道イメージ
しかし、豊かな河畔林はほとんど失われる(図-3.3.4)。 |
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図-3.3.2 河道内の全樹木伐採による、洪水時の水位低下 |
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図-3.3.3 全低水路拡幅による、洪水時の水位低下 |
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1)10km地点付近・下条橋下流 |
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左:現状、 右:樹木伐採後 |
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2)13km付近・当古橋付近 |
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左:現状、 右:樹木伐採後 |
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3)17km・賀茂橋下流 |
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左:現状、 右:樹木伐採後 |
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4)19km江島霞開口部付近 |
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左:現状、 右:樹木伐採後 |
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5)24km牟呂松原頭首工下流 |
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左:現状、 右:樹木伐採後 |
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図-3.3.4 河畔林樹木伐採時のイメージ(写真右)と現状(左)の比較 |
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3.3.3 霞堤締め切りに伴う治水安全度低下量の試算 |
(1)シャープな波形の洪水(昭和44年8月洪水型;石田で4,650m3/s)に対する試算・・・全霞での流量低減量は最大約850m3/sであり(豊橋地点)、特に江島霞は流量低減量とその効果の現れる範囲が大きく、下条霞は流量低減効果が最も大きい(図-3.3.5)。
・・・全霞での水位の低下効果は最大約2mであり(神田川合流地点)、流量の低減量に応じた大きさとなっているが、効果の及ぶ範囲は対象とする霞の上流区間にも及ぶ。
(2)あまりシャープでない洪水(昭和57年8月洪水型;石田で4,800m3/s)に対する試算・・・全霞での流量低減量は最大約600m3/s、水位低下量は最大約1mである。
いずれにしろ、牛川霞による効果は小さい |
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図-3.3.5 シャープ型洪水(S44.8洪水)における霞堤による流量カットと水位低下 |
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図-3.3.6 シャープでない洪水(S57.8洪水)における霞堤による流量カットと水位低下 |