長島ダムは静岡県中 部を流れる大井川のほぼ真ん中に建てられた、高さ109メートル、幅308メートルの重力式コンクリートダムです。 ダムをつくる時には、その場所の地形や地質を調べた上でぴったりな形のダムをつくりますが、長島ダムの地盤は固くしっかりとしているので、コンクリートの 重さで水圧をささえる重力式ダムになりました。
ダ ムの重さで水圧をささえるダム。横から見ると直角三角形なのは、水の深い所ほど水圧が高いからです。
上 流側にふくらんだアーチの形で水圧を両岸に伝えて支えます。両岸の岩盤がしっかりして幅が狭い場所に。
コ ア(土)、ロック(岩)、フィルター(砂)の三重構造のダム。多量の盛り立て材料が確保できる所につくられます。
長島ダムは最大で7,800万立 方メートルの水を貯めることができます。深さにすると107.5メートルになり、このときダムの最も深いところでは、ダムの幅1メートルあたりに約 5,800トンの水圧が発生しているんです。約5,800トンというと、大人の男性約83,000人分の重さです。 ※大人の男性は一人あたり70キロとして計算しています。
長島ダムには大きく 分けて5つの役割があります。それは…「災害から生活を守る」「豊かな河川環境を守る」「かんがい用水を貯める」「水道用水を貯める」「工業用水を貯め る」ということ。中でも特に重要なのが、大雨が降ったときに災害から生活を守る「洪水調節」。大井川水系には、洪水調節を役割としているダムは今のところ 長島ダムだけ。町を守るダムとして大いに活躍しています。
長島ダムに貯められ たたくさんの水は「かんがい用水」として茶園や畑へ送られたり、「生活用水」として人々の暮らしに活用されています。また雨が降らなくて渇水が起こった場 合には、大井川に生息している生き物たちのために一定量の水を放流。「豊かな河川環境を守る」ために使われるのです。
長島ダムは「シビッ クデザイン」という考え方を導入したダムです。「シビックデザイン」とは“地域の歴史・文化と生態系に配慮した、使いやすく美しい公共土木施設”のこと。 周囲の景観を壊すことなく、ダムの魅力を最大限に高めたデザインなのです。またダム本体はもとより、橋、天端道路、照明、サインなど関連する施設のデザイ ンも統一された、トータルに美しいダムとなっています。
貯砂ダムには 「CSG(Cemented Sand and Gravel)工法」というダム工法が採用されています。直訳すると「セメントで固めた砂礫」という意味で、ダムの工事付近で簡単に入手でき、本来なら廃 棄する河床砂礫や岩石などを材料に使うという技術です。コスト削減と環境保護の両方にメリットのあるCSG工法は、長島ダム上流の貯砂ダムに採用されてお り、現在、日本中のあちこちでつくられているCSG工法ダムの先駆けとなっています。
長島ダムは「開かれ たダム」として、ダム本体や周辺施設を広く一般に公開しています。EメールもしくはFAXで「ダムの内部見学」を申し込めば、職員の方が案内してくれま す。詳しくは長島ダムホームページまで。 https://www.cbr.mlit.go.jp/nagashima/play/ tanken.html またダムの天端は展望台になっており、タイミングがよければ対岸の大井川鐵道井川線を走るアプト式列車をながめることもできるんです。
長島ダム周辺には豊 かな自然が残されており、さまざまな生き物たちが生息しています。たとえばダム上流の林道沿いには、ニホンカモシカやニホンザルなどの野生動物。接岨湖に は可愛らしいオシドリが泳いでいたり、上流の水路にはカジカガエル、ギンヤンマ、ゲンゴロウ…。ダム周辺をめぐるハイキングコースを歩けば、きっと出会え るかも?
国土交通省 中部地方整備局 長島ダム管理所 〒428-0402 静岡県榛原郡川根本町犬間541-3 TEL:0547-59-1021 FAX:0547-59-1026