KISSOこぼれネタ VOL.57 郡上市明宝特集号
吉田川の水力発電
長良川水系は木曽三川のなかにあって、もっとも早く水力発電が開始された地域です。
郡上市明宝でも、支流の吉田川を利用して小規模な発電所が数多く開発されました。

郡上市明宝の自家用発電の歴史は、大正6年(1917)に発電を開始した中央製鉄美濃製鉄所・水沢上発電所に始まります。
これに続き、大正8年から10年まで、製糸業者・蚕種製造業者によって、7ヵ所に集中的に開設されています。製鉄や製糸業の発展とともに、電力が必要とされたためです。ところが、大正10年中央製鉄は業績不振のため早々と美濃製鉄所を閉鎖しました。
そこで明宝村と村内有志は資金を出し合い、吉田川水力発電所を設立し、水沢上発電所の事業を継続することとなりました。

『吉田川 水沢上が池の水堰き止めて、水車回して、電気を起こし、針金伝えて、二間手の、古池さんの工女衆を輝かす』

製糸工場で働く工女たちは、水沢上発電所の様子をこのように愛唱したといわれています。しかし、製糸業も折からの不況の嵐で、次々と村から姿を消すことになりました。
吉田川水力発電所の事業報告書によれば、大正14年の水害により、発電所は流失、尊い人命も2名失いました。この災害により、長期にわたる休電を招いてしまいました。
発電所の復旧は、村の総力を挙げて行われ、大正15年5月には、運用を開始しました。
昭和13年(1938)には、電力の国家管理を目指す電力管理法・日本発送電株式会社法が成立しました。これは国内の電力会社のすべてを半官半民の日本発送電株式会社の傘下に収め、電力を日本政府が管理しようというものでした。また、昭和18年には、中部配電に吸収されました。

このように、村に電力を送り続けた発電所は、昭和36年(1961)に廃止され、その波乱に富んだ歴史に幕を降ろすことになりました。

■参考文献
明宝村誌 通史編  平成5年  明宝村
木曽三川流域誌   平成4年  建設省(国土交通省)
 
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