KISSOこぼれネタ VOL.54 揖斐川町坂内特集号
夜叉ヶ池ゆかりの地

夜叉姫が龍神とともに夜叉ヶ池に上がったとされる道程には、本誌の中で少しだけ触れました織機を据えたと伝えられる「はたご岩」伝説のほかに多くの言い伝えが残されています。
ここでは、こうした言い伝えのいくつかを紹介します。

〔佐中(しゃち)の清水〕
若侍姿の龍神と夜叉姫は、広瀬川を遡り川上村まで来て、一晩、佐中の家に泊まることにしました。

座敷に通された二人は、「けっして朝まで戸を開けないように」頼んで休みました。ところが、そう言われてよけいに気になった家の主人が、ふし穴から中を覗いてしまいました。
すると驚くことに、座敷一面に水があふれ、その中に大蛇が二匹とぐろを巻いていました。

覗かれたことを知った若い夫婦は、「正体がわかって恥ずかしいから、もうここは通らない。やすませてもらったお礼にどんな日照りでも涸れない水をおいていこう」と言い残し、村を後にしました。

この時から家の前に清水がこんこんと湧き出し、その後も涸れることがありませんでした。
「佐中の清水」と名づけられたこの水は今でも村の人たちに使われているそうです。

佐中の清水

〔夜叉姫お迎え岩〕
坂内川に沿って走る国道303号を滋賀県方面に向かうと、広瀬を過ぎて川上にむかう途中の深瀬橋で坂内川を渡ります。この橋のたもとから上流を見ると、川のまんなかにある大きな魚の頭の形をした岩に目がとまります。
深瀬の橋下の魚頭(いおがしら)と言い習わされているこの岩にも夜叉姫にまつわる話が伝わっています。

その昔、夜叉姫が龍神のもとに嫁ぐ折、坂内川に棲む魚族はことごとく、この深瀬と黒淵の境・小草履の平の下方まで出向いて龍神夫婦を歓迎したのだという。
盛んな歓迎をうけた夜叉姫たちがここを後にして池にむかった翌朝のこと、村の人たちは、川の中の岩のひとつが一夜のうちに魚頭に形を変じていることに気づきました。
この岩は、どんなに激しい出水にも動かず埋まらず、また、どんなに日照りが続いてもこの周りの水が涸れることはないと言われています。
「魚頭の上に立って祈ると、願いは夜叉ヶ池に通じる」そんな言い伝えも長く残っていたようです。

魚頭岩

〔髪結い岩〕
川上池の谷に椀戸谷が合流するところ、揖斐川電工神ヶ岳ダムの下流左岸に大きな岩があります。

夜叉姫が池上がりの道中、洗った髪を結い直した「髪結い岩」と言い伝えられている岩で、岩の下の方には髪を結うときに使った櫛の跡が残っているそうです。
ちなみに、髪を洗ったと伝えられる「髪洗いの池」は、長昌寺文書にいう「鬢水池(御洗池)」のことで、地蔵平の夜叉龍神社前にあって年中絶えることなく清浄な水が湧き出ているそうです。

髪結い岩には夜叉ヶ池にまつわる別の話も伝わっています。
髪結い岩が、今の場所ではなく川沿いの道の上方にあった頃、夜叉ヶ池の所在を越前国にしようと使者がやってきて、いろいろ理屈を述べていったという。その帰り道に使者たちがこの岩のかげで弁当を食べていると、突然、岩が動きだし、越前からきた使者たちは下敷きになって命を落としてしまいました。
これは、美濃出身の夜叉姫が、棲家の池が他国の領分になるのをいやがったからだと言うお話です。


髪結い岩

夜叉ヶ池周辺図
 
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