KISSOこぼれネタ VOL.28 中津川市特集号
●日本武尊と神坂峠

 中津川市の東にそびえる山の神坂峠は、信濃国と美濃国との国境にあたり、奈良時代に整備された官道・東山道の中でも最高地点を通る難所中の難所として聞こえたところでした。
 神坂峠は「神の御坂」とも言われ、「万葉集」に、坂の神に幣帛を奉り、道中の無事を祈願したと伝えられています。というのも、わが国古代の習俗として、峠には恐ろしい神がいると信じられたところ。峠を旅する者は、ぬさ袋を手向け、安全を祈願していたのです。峠のことを古くは、「たむけ」と呼んでいましたが、これは手向けを意味していました。その音が変化して、峠と呼ぶようになったといわれています。ともあれ、峠の神とは畏敬すべき神霊であると同時に、人を傷める荒ぶる神でもありました。
 この神坂峠はすでに日本武尊伝承の中でも語られています。伝承によれば、日本武尊が神坂の山中で飢え疲れきって休んでいた時、山神がミコトを苦しめようとして、白鹿と化しミコトの前に姿を現しました。飢えに苦しんでいたミコトは、これを食べようと蒜(ヒル、にんにく)を白鹿の眼に投げつけ殺すと、山神の崇りなのでしょうか。たちまち、道がわからなくなり、方角さえわからぬようになってしまいました。この時、白狗が来てミコトを導いたので、ようやく美濃国へ出ることができました。
 これ以降、神坂峠を越える時には、蒜をかんで人や牛馬にぬると神気にさわらぬと伝えられるようになったのです。古代の人々にとって、山深く厳しい峠は、峠神が現れるほど、強烈で恐ろしい所だったのでしょう。日本武尊が越えたことからも、神の坂、神坂峠と呼ばれるようになりました。
 
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