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みなさんは「ユスリカ」をご存じでしょうか?知っている方も知らない方もこのホームページを通して「ユスリカ」の生態、形態や彼らの引き起こす問題について知って頂ければと思います。

 


1.ユスリカとは

 「ユスリカ」とは、昆虫綱ハエ目ユスリカ科に属するハエの仲間で、一見すると血を吸う「カ」に良く似た昆虫です。池の近くや川沿いを歩いているときに、たくさんの小さな虫が集まって柱状に飛んでいるのを見かけたことがあるでしょうか。それがユスリカです。
 ユスリカは、世界に約10,000種いることが知られており、日本でも約1,000種類が報告されています。このほとんどの種類は、水中や湿った土中で卵から幼虫になり、そして蛹となって、最後に成虫へと変態していきます。成虫になったユスリカは、陸上で交尾を経て産卵し、その一生を終えます。

図-1 ユスリカの生活環

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2.キソガワフユユスリカについて

●キソガワフユユスリカとは

 キソガワフユユスリカは、フユユスリカ属に分類される体長4〜5mmの色が黒い小さなユスリカの仲間です。「フユユスリカ」の名の付く通り、冬になると川から羽化して成虫となり、私たちに姿を見せ始めます。また、このユスリカは「ソブエムシ」とも呼ばれています。
 木曽川では2種類のフユユスリカ属の仲間が知られており、キソガワフユユスリカ(Hydrobaenus kondoi)(写真1)とコキソガワフユユスリカ(Hydrobaenus kisosecundus)(写真2)といいます。この2種類は、秋の終わり頃から春の初めのころまで大量に発生することが知られており、特に愛知県祖父江町、尾西市、一宮市においてはその発生量が著しいことが知られています。

 
写真1
 
写真2
     
※画像をクリックすると大きな写真が見られます
(写真提供:愛知医科大学 近藤繁生氏)
   

 

●キソガワフユユスリカの特徴

体長4〜5mmと小さい カのように血を吸わない 冬に成虫が大量に発生する
夏場に繭を作って夏眠する きれいな水を好む 川底に砂が多い川を好む
流れが遅い場所を好む 年2世代  

 

●キソガワフユユスリカの生活史

 キソガワフユユスリカは、秋の終わりころから冬の間にのみ発生します。春から夏の間は繭を作って川底で冬眠ならぬ夏眠をしています。11月頃となり、水温が低くなってくると繭から幼虫がでてきて、成虫になります(第1発生期)。この成虫が交尾して産卵した卵は、12月ころには幼虫となり、1月の頃には成虫として飛び立ち始めます(第2発生期)。このとき産んだ卵もすぐに幼虫となり、3月以降水温が高くなってくる頃に繭を作り、再び夏眠に就いていきます。 このように、春〜秋の間は眠っている状態で、冬のみに活動し、その間2世代を経るということになります。これを図-2に示します。

 
図-2 キソガワフユユスリカの生活史
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(写真提供:愛知医科大学 近藤繁生氏)



キソガワフユユスリカの生態系における位置づけ

 キソガワフユユスリカは大量に発生することによって、河川環境や私たちのくらしにさまざまな影響を与えています。その中には河川環境にとって有益に働いたりすることもある一方、逆にみなさまのくらしに害を及ぼすこともあります。

 

益虫としてのユスリカ
・水質改善者としての働き:
   大量発生するユスリカは、河床の有機物を食べて成長していき、成虫になって、一斉にかつ大量に川から出ていくため、川底に含まれる栄養塩類(大量にあると富栄養化の原因になる窒素やリン等)を効率よく除去してくれます。これにより、水質の改善、保全に役立ちます。
   
・底質改善者としての働き:
   上記の栄養塩に加え、幼虫が河床に潜ることによって、底質の掘り起こしや酸素供給などの物理化学的な改変が起こり、底質を良好に保ってくれます。
   
・他動物の餌としての働き:
   幼虫時代は水中に大量に存在することから、魚類などの天然餌料として重要な存在となっています。また、成虫になってからもクモや鳥などの餌として重要な存在となっています。

図-3 ユスリカを中心とした生態系

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害虫としてのユスリカ
・洗濯物、布団への付着:
   洗濯物を屋外に干すとき、風の弱い日にはユスリカが多く飛んでくる可能性があります。
 ユスリカが洗濯物や布団に付いている場合は、手で直接触って払ったりこすったりすると潰れて汚れてしまいます。取り込む時に、周辺をたたいて飛び立たせることなどが有効な対策となります。
   
・景観の悪化:
   大量に発生し、木曽川沿いの木、ガードレール、壁などにびっしりと付着している様子が見られます(写真)。密集している姿が気持ち悪がられます。
   
・アレルギー:
   昆虫類やダニ類には、アレルゲン(アレルギー反応の原因物質)を持つものが知られています。昆虫によるアレルギーの中には、ユスリカが原因となるものもあり、本種もその例外ではありません。
 ダニによるアレルギーを防ぐために室内を掃除するのと同じように、家庭内に侵入したユスリカや、周辺にたまったユスリカ死骸などを掃除することが有効な対策になります。
 また、ユスリカの群飛している中を通行するのは出来るだけ避けること、避けられない場合は、ユスリカを吸い込まない様に注意することが必要です。

 人間にとって不快ではありますが、一方的に撲滅することは生態系のバランスを考えた上で好ましいとはいえません。しかしながら、流域の方々が不快に思われる場合もありますので、人間の生活の場である堤内地での分布量を減少させることが大切であると考えています。




3.事務所実施のユスリカ対策

現在、木曽川上流河川事務所では、以下のような対策や調査を行っています。

 1.水面でのユスリカ抑制

 2.陸上でのユスリカ抑制

 3.ユスリカ発生状況の把握調査





4.ユスリカの発生予測のページ <工事中>

これまでの調査によって、以下の条件が重なった年にキソガワフユユスリカが大量発生するとされています。

 ・秋以降に大規模な出水が無かった年

 ・秋以降の水温が暖かかった年

この条件から、平成○年度(平成○年1〜3月)のキソガワフユユスリカの発生量は、多い/普通/少ない と予想されます。