〇住宅瑕疵担保履行法について
〇1.住宅瑕疵担保履行法の概要
新築住宅については、平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の推進等に関する法律(住宅品質確保法)」に基づき、売り主及び請負人に対し構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務付けられています。平成17年11月に「構造計算書偽装問題」が発覚し、こうした法制度だけでは消費者保護としては不十分であることが明らかになりました。こうした問題点をふまえ「住宅品質確保法」で定められた瑕疵担保責任の履行を確保するため、「特定住宅瑕疵担保責任の履行確保に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」が制定されました。
これにより、平成21年10月1日以降に引き渡す新築住宅について、「保険の加入」または「保証金の供託」の資力確保が義務付けられました。
平成21年10月1日以降に新築住宅を引き渡す場合、請負人となる建設業者(建設業の許可を受けた建設業者)と売主となる宅地建物取引業者(宅地建物取引業法の免許を受けた宅建業者)には、資力確保措置の義務が課されます。 ただし、宅建業者が発注者となり、建設業者から新築住宅の引き渡しを受ける場合、建設業者には資力確保措置の義務はありません。
【資力確保の対象となる引き渡し】
住宅瑕疵担保履行法の対象となるのは、建築物のうち「新築住宅」です。
「新築住宅」とは、新たに建設された「住宅」であって、建設工事の完了から1年以内で、かつ、人が住んだことのないものをさします(住宅品質確保法第2条第2項)。
また、「住宅」とは、住宅品質確保法でいう「人の居住の用に供する家屋または家屋の部分」をさします(住宅品質確保法第2条第1項)。したがって、戸建住宅や分譲マンションはもちろん、賃貸住宅(公営住宅、社宅等も含む)も対象となります。一方、事務所、倉庫、物置、車庫は「住宅」でないため、対象となりません。また、一時使用目的の住宅(仮設住宅等)も対象外です。
新築住宅の請負人または売主(建設業者や宅地建物取引業者)が、平成21年10月1日以降に、新築住宅を引き渡す際には、「住宅瑕疵担保保証金の供託」または「住宅瑕疵担保責任保険への加入」が必要になります。
①過去10年間の供給戸数に応じて「住宅瑕疵担保保証金」を供託 毎年 2回 1回 の基準日(3月31日・9月30日)において、過去10年間に引き渡した新築住宅の供給戸数に応じて算定される住宅瑕疵担保保証金を供託します。一旦供託すると10年間は基本的に取り戻すことが出来ません。
②「住宅瑕疵担保責任保険」への加入
国土交通大臣が指定する保険法人と保険契約を結びます。保険料は掛け捨てになります。保険の申込は、保険の現場検査を実施するため、建築工事の着工前に申し込むことが必要です。
新築住宅を引き渡した建設業者・宅建業者は、年1回の基準日(3月31日)において、保険や供託の状況について、基準日から3週間以内に行政庁へ届出を行う必要があります。
◆届出時期 --- 基準日から3週間以内
基準日 | 届出期間 |
3月31日 | 4月1日~4月21日※ |
※行政機関の休日にあたるときはその翌日
◆届出先 --- 許可を受けている行政庁
◆届出方法 --- 郵送又は窓口提出
◆届出書類
届出書・引き渡し物件の一覧表の様式ダウンロード(国土交通省HP)
新規契約やその状況に関する届出を行わない場合、基準日の翌日から50日を経過した日以降において、新たに自ら売り主となる新築住宅の売買契約を締結することが禁止されます。
消費者保護の観点からは、発注者や買主に対して、自らが取得する新築住宅が供託、保険のいずれにより資力確保措置が行われているかを知らせておく必要があります。
これにより、万一、瑕疵が判明したにもかかわらず、事業者が瑕疵担保責任を履行しない場合でも、発注者や買主は、住宅瑕疵担保保証金の還付請求、住宅瑕疵担保責任保険の保険金の支払い請求を行うことができます。
①建設業者の義務
A 保険加入を行う場合 | B 保証金を供託する場合 |
A-1
[契約締結時] |
B-1
[契約締結時] |
A-2
[保険法人から(保険証券と共に)付保を証明する書面の交付を受けた後、遅滞なく] |
B-2
[契約締結時] |
②宅建業者の義務
A 保険加入を行う場合 | B 保証金を供託する場合 |
A-1
[契約締結まで] |
B-1
[契約締結まで] |
A-2
[契約締結後、遅滞なく] |
B-2
[契約締結まで] |
A-3
[保険法人から(保険証券と共に)付保を証明する書面の交付を受けた後、遅滞なく] |
B-3
[契約締結後、遅滞なく] |
住宅瑕疵担保履行法に違反した場合は、同法による罰則が科されるほか、建設業の適正な実施の確保の観点から、建設業法に基づき、監督権を有する国土交通大臣又は都道府県知事から必要な監督処分も課されます。
違反例 | 資力確保措置を行わない [履行法第3条第1項] |
届出を行わない 虚偽の届出をした [履行法第4条第1項] |
契約の制限期間に新規 契約を締結 [履行法第5条] |
契約締結までに供託に関する説明を行わない [履行法第10条] |
住宅瑕疵担保履行法 | 新規契約の制限 | 新規契約の制限 | - | - |
- | 罰則 ・50万円以下の罰金 ・法人に対し両罰規定 |
罰則 ・1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはこれの併科 ・法人に対し両罰規定 |
- | |
建設業法 | 指示処分 [業法第28条第1項及び第4項(第1項第9号該当)] |
指示処分 [業法第28条第1項及び第4項] |
指示処分 [業法第28条第1項及び第4項(第1項第9号該当)] |
指示処分 [業法第28条第1項及び第4項] |
<情状が重いとき> 営業停止処分 1年以内の営業の全部又は一部の停止命令 [業法第28条第3項(第1項第9号該当) ] |
- | <情状が重いとき> 営業停止処分 1年以内の営業の全部又は一部の停止命令 [業法第28条第3項(第1項第9号該当) ] |
- | |
<情状が特に重いとき> 許可の取り消し [業法第29条第1項] |
- | <情状が特に重いとき> 許可の取り消し [業法第29条第1項] |
- | |
宅地建物取引業法 | 指示 [業法65条1項及び3項] |
指示 [業法65条1項及び3項] |
指示 [業法65条1項及び3項] |
指示 [業法65条1項及び3項] |
1年以内の業務の全部又は一部の停止命令 [業法65条2項2号] |
- | 1年以内の業務の全部又は一部の停止命令 [業法65条2項2号] |
- | |
<情状が特に重いとき> 免許の取り消し [業法66条1項9号] |
- | <情状が特に重いとき> 免許の取り消し [業法66条1項9号] |
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【国土交通省 中部地方整備局 建政部 建設産業課】
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