ふじあざみ59号(1)
ふじあざみ タイトル
明け方の富士山
さった峠からみた明け方の富士山
薩た峠」

■ 「さった山」

 由比と興津の間に位置するさった山の「さった」という言葉は、「菩提さった」に由来していて、仏教用語では「命のあるすべての生きもの」という意味があります。「薩た山」の名前の由来は、文治元年(1185年)に麓の由比海岸から地蔵尊の石像が引き上げられ、それを山の上に祀り、信仰の対象にしたことに由来していると言われており、地蔵信仰の隆盛に伴い、磐城山とよばれていたものが「さった山」と呼ばれるようになったと言われています。
 標高300m足らずのさった山は、甲斐の山々に連なる白峰山系の支脈が南に足を伸ばし、そのつま先が駿河湾に崩れ落ち、屏風を立てたような断崖の険しい山相となった所に位置しています。その昔、東西に対立する武将にとっては天然の要害であり、数々の合戦の舞台となってきたところです。また、日本の東西を結ぶ東海道が通り、古くから交通の要衝となっていました。その険しい地形から交通の難所としても知られており、特に海岸沿いの下道は「親知らず子知らず」と呼ばれ、その険しさが表現されています。

 さった峠は富士山を望むその眺望から、「東海道随一の景勝地」として知られ、江戸時代には歌川広重が「東海道五十三次」でその眺望を浮世絵に描いています。

■ 由比地区の土砂災害

 さった山周辺は、古くから知られた地すべり多発地帯であり、麓の由比町では何度も大きな地すべり災害を受けてきました。記録に残るだけでも26回発生しており、昭和36年の「寺尾地すべり」では120万m3の土砂が流れだし、また、昭和49年の「七夕豪雨による地すべり」では、日本の大動脈である国道1号、東海道本線が長期にわたりストップするなど、大きな災害となりました。東海地震の想定震度は、由比地区では震度6強~震度7とされており、地震による地すべりの発生も心配されています。

■由比地すべり対策事業

 富士砂防事務所は、由比地区において、豪雨や東海地震による地すべりから、地域と重要交通網を守るため、地すべり発生機構とその対策について調査し、地すべり対策事業を行っています。1月14日には起工式を行いました。今後、地すべり対策工事を本格的に進めていきます。

由比周辺の鳥瞰図
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