湧玉池でのみそぎ神事(写真:佐野写真館・富士宮市宮町)
 現在、主な富士山の登山口を有するのは、富士宮市・御殿場市・富士吉田市・富士河口湖町・小山町の三市二町で、富士山五口協議会を設けています。
 富士山「お山開き」には、各登山口の浅間神社や市や町、関係団体によって様々な行事が執り行われています。
 以下、各登山口の紹介と「お山開き」の行事についていくつか簡単に紹介します。

●富士宮口(富士山本宮浅間大社)
 富士宮口の新五合目は、標高2,400メートル、富士山最高峰剣が峰へは最短のコースです。
 富士宮市は、かつて富士山信仰で栄えたまち、お山開きの行事も多彩で、市をあげた行事が行われます。
 富士山本宮浅間大社で6月30日の深夜から行われる開山祭では、湧玉池での「みそぎ」が行われます。「みそぎ」とは、神事の前や大事な事を神様にお願いする前に、川や海の水で心身を洗い清めることです。富士登山が信仰を目的とし、命がけであった時代は、心身を清めなければ山に近づくことも許されないとされていたのです。

●御殿場口(新橋浅間神社)
 御殿場口の標高1440メートルの新五合目から山頂までの高度差は、4コース中最大で、2300メートルを超えます。下山道は8月に開催される富士登山駅伝でもおなじみ、豪快な「大砂走り」のコースです。
 御殿場市の新橋浅間神社で行われる開山祭では、「三歳児健脚祈願」が行われます。大きな草鞋の上に3歳になった子供をのせ、「富士山に登れるような丈夫な足になりますように」と祈願します。また、勇壮な奉納太鼓も行われます。(写真 三歳児健脚祈願:御殿場市商工観光協会)

●吉田口(北口本宮富士浅間神社)
 吉田口コースは、江戸時代に盛んであった富士山信仰登山の人々にも利用された、歴史ある登山道で、山麓の北口本宮富士浅間神社から始まります。
 6月30日に、この神社の、登山道入口の鳥居に張られた注連縄を、力持ちの神様「手力男之命」に扮した男性が木づちで切り落とします。450年続いているといわれる「お導開き」の神事です。(写真 2004年6月30日、お導開きの注連縄が切られた瞬間)

●河口湖口(小御獄神社)
 河口湖口は、標高2305メートルの五合目まで富士スバルラインを利用するコースで、ここから大勢の登山者が山頂を目指します。7月1日には、五合目にある小御獄神社で開山祭が行われ、大天狗、小天狗によるお道開きや、登山者の安全を祈願してみこしが繰り出されます。
 このコースは、六合目で吉田口コースと合流します。

●須走口(富士(須走)浅間神社)
 須走口新五合目の標高は2000メートル。河口湖(吉田)口コースと合流する八合目までは比較的ゆるやかです。下山は砂走りを利用して比較的楽に下れます。
 7月1日には、富士浅間神社での開山祭と、白装束の江戸時代の登山者に扮した「江戸時代の登山」パレードが行われます。
 このパレードで、お祓いを受け、須走地区周辺の富士山信仰の旧跡や小富士等を散策する「富士山 開山式と江戸時代の登山体験」の参加者も一般から募集されます。

 以上の登山口以外でも、富士山の夏山シーズン開幕に合わせて、各地で一斉に祭や行事が行われます。登山シーズンを迎えて行われる「お山開き」の行事は、富士山麓の夏の風物詩です。