ふじあざみ 第47号(2) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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■雪代と雪崩 「雪代(ゆきしろ)」は、1997年(社)雪氷学会の雪崩分類の中で「その他の雪崩※」として「スラッシュ雪崩」と定義されました。 スラッシュ雪崩はスラッシュ・フローと呼ばれ、もともとはヨーロッパや北欧で春先の融雪期に積雪や氷河の表面の層が、温度の急激な上昇や降雨を引き金として生ずる流動性の高い雪崩に付けられていた名前です。 雪代は雪や氷とともに多量の土砂を含み流動性が高いため、山麓の集落までも流下して時に大きな被害をもたらしてきました。その多くは融雪期に生じ、気温の急上昇と降雨を伴っているため、雪や氷に含まれた水分の比率が高く、しかも流下中に土砂やスコリヤを巻き込むため、さらに摩擦熱による融雪が進み、流動性を増すのです。 |
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以上のことから「移動性の高気圧が朝鮮半島付近から日本上空を横断し東海上に去った後に、温暖前線を伴った低気圧や気圧の谷が来襲し、時間雨量20mm以上の強い降雨が数時間続き、前日比10℃近くの急激な気温上昇が有り、御中道の気温が+2~3℃を超えるような状況になると雪代が発生する危険性が極めて高い」と考えられます。 次に雪代はどこでどのように発生するかという問題ですが、実績からは東北斜面の植生の乏しいところに多く発生しています。この付近は火山噴出物が地表を被っているところです。火山噴出物やスコリヤ層は透水性が高いため、夏季の降雨時には雨水は地下に浸透し地表面を流れることはまれです。冬季になると凍結・融解の過程で地表面から地下に向かって徐々に凍土層が形成されます。同様に積雪層の中にも凍結堅雪層と新雪層とが形成されます。 そこに、急激な気温の上昇があり、多量の雨が降ると表面から融雪が進み積雪層や地層の中に凍結層との境界が生じます。写真1は平成4年の現地調査のおりに、凍土層を見たものです。地表から5cmほどのところに凍土層が確認できました。上層から供給された水はこの境界面を流れるため、付着力や摩擦力が減少し、一方上層の積雪や土砂は水分の供給によって重量を増し不安定層となります。この不安定層が雪代となるのではないかと想定されます。 発生地点で多量に水分を含んだ雪代は、流下するにしたがって徐々に勢力を増し礫や土砂を取り込みます。土砂を含んだ雪代は流下途上で摩擦熱を発し、更に融雪が進み流動性を増し、勢力を増しながら流下するものと考えられます。 |
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参考資料:国土交通省富士砂防事務所発行「富士山の自然と社会」 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
表1:雪崩の分類
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※その他の雪崩現象 1)スラッシュ雪崩(大量の水を含んだ雪が流動する雪崩)※同様の現象で大量の水を含んだ雪が渓流内を流下するものは「雪泥流」という。 2)氷河雪崩・氷河崩 3)ブロック雪崩(雪庇・雪渓等の雪塊の崩落) 4)法面雪崩(鉄道や道路などで角度を一定にして切り取った人工斜面の雪崩) 5)屋根雪崩 |