ふじあざみ 第42号(5) | |||||
|
|||||
|
|||||
|
|||||
美しい富士山を眼前に望む富士宮市内の小学校は、総合的な学習として富士山学習を展開し、子供達の生き方や精神の形成に活かそうと積極的に活動しています。今回は富士宮市立東小学校、近藤しげ子校長先生に富士山学習を通した、富士山に対する想いを語っていただきました。 |
|||||
(富士山学習発表会の一場面) | |||||
■昔も今も富士山と共に 富士宮市に生まれ、自らも富士宮東小の卒業生である近藤先生。それだけに富士山への想いにも、強いものがあるようです。「私の小さい頃はこの辺りもこんなに建物がなく、校舎の窓からきれいなれんげ畑が見えました。そして、その向こうに美しく大きく、富士山が望めました。その風景は今でも忘れることができません。」と、やさしい笑顔で語る近藤先生。富士山とともに育った校長先生ですが、空気のような存在に感じていた富士山を、強く意識したことはあまりなかったと言います。そんな先生が、あらためて富士山を強く意識したエピソードがありました。「歌人“山部赤人”の富士山を詠んだ歌に、なんとも言えない衝撃を覚えました。昔の人々も、私たちと同じようにこの富士山を仰ぎ、同じ富士山がその瞳に映っていたんだと思うと、遥か昔の人たちと今同じ時間の中にいるような、不思議な感覚を覚えたんです。」と、目を輝かせて語る近藤先生。「今では富士山は私の中でかけがえのない存在です。このすばらしい富士山が身近にあることの幸せを、子供たちと共有したいと思っています。」と付け加えてくれました。 ■富士山をシンボルとした“気付き”の学習 「富士山学習は、単に富士山について学習するものではないのです。富士山を通じて、自然や歴史、伝統文化や産業などを学んで、富士山とともにあるこの地域に生きていることに喜びを感じたり、理屈ではなく、自発的に環境や地域社会に関心を持って、自然にとけ込める意識を育てます。」先生の生徒達への熱い思いが伝わってきます。「富士山学習は教科書がない学習であるだけに、子供の思いに沿って発展していく学習内容をどこまで広げたりまとめたりしたらよいのか、また、それをどう評価したらよいのか、など、他の教科にはない創意と工夫が指導者には求められます。」 ■学習の成果を発表する様々なステージ 「富士山を心に生きる子」をキーワードに、子供たちが富士山学習での取り組みを自分たちでまとめ発表する場が「富士山学習発表会」です。毎回多くの小中学校が趣向をこらした発表を行っています。「子供たちが、自信と誇りをもって発表しています。私たちも、その姿に大きな喜びを感じます。また、発表会を見に来ていた親御さんをはじめ、一般の方々も、発表の内容に感激し涙を流されていることもしばしばあります。子供たちが地域の人々に学びながらまとめた発表が、地域の人々の心を動かす・・・。これはとっても素晴らしいことだと思います。」 富士宮東小では、「富士山への手紙・絵コンクール」にも、学校を挙げて積極的に取り組んでいます。「手紙・絵コンクールは、子供たちが富士山をどうとらえているか、どう思っているのかが顕著にわかりますし、感性を育てるのにとてもいいテーマです。作品を見ると、富士山を目標としてとらえたり、神様のようなお願いの対象として見たり、自分をはげましてくれる身近な家族のように思ったりと様々ですが、このコンクールに参加し、作品を創り出すことで、普段あまり富士山を意識していない子供たちにも、富士山の大きさや美しさを自分の内なるものと関わらせていけたら、と期待しています。このコンクールの作品は、独自に校内でも展示しています。」富士山学習発表会や手紙・絵コンクールは、単なる発表の場という位置付けだけでなく、統計を取ったり、文章にまとめたり、勉強の要素を持っていると先生は語ります。 ■富士山とのかかわりを教育に 「富士山は富士宮東小の校歌にも“芙蓉の峯”という表現で出てきます。表現は違っても、富士、富士宮にある学校のほとんどの校歌の中に富士山は登場しているのではないでしょうか。富士山は私たちの精神の中に、しっかりと根付いています。富士山の大きさや偉大さ、精神性は、人としての生き方にも通じるものがあります。校歌の詩の中に富士山が登場することも、学校に対する愛情が、ひいては地域愛、さらには地域の人々との愛情を育てるシンボルとなる富士山の懐の深さがそうさせるのではないかと思います。これからも、そんな富士山と上手にかかわり、教育に活かしていきたいと思っています。」と語る近藤先生。最後にこう締めくくってくれました。「富士山学習や学校での手紙・絵コンクールの作品展示によって、親御さんや出前講師など、教師以外の地域の方々が学校へ足を運んでくださる機会が増えました。地域の人たちに子供たちが学び、子供たちはそれを親御さんに話すことで子供に親が学ぶこともあります。そんな人と人とのかかわりこそが、富士山学習の成果であり、目指す目的のひとつだと思っています。」 |
|||||
|