ふじあざみ 第37号(2)

富士山の過去・現在・未来を知ろう。富士山の基礎知識

富士山周辺には100を超える風穴があります。暗くて、冷たくて、静かな風穴は、ここに赤々と燃える溶岩が流れていた何よりの証拠。今回はその風穴ができた理由や風穴にまつわる伝承を紹介します。
参考資料 『富士宮の火山洞窟』 富士宮市教育委員会
 富士山は現在の形になるまで幾度となく噴火を繰り返してきました。中でも約5,000年前の噴火活動の時に流れ出した溶岩(玄武岩)によって、富士山の周辺で見られる風穴のほとんどが作られました。そして、今までに100を超える風穴が発見され、現在でもその数が増え続けています。
 噴火によってできる風穴には、その成り立ちによっていろいろな種類がありますが、富士山周辺の風穴は主に次の2種類に分けられます。
■溶岩洞穴
 火山によって流れ出した溶岩流の中にできる洞穴。約1,000℃という高温の溶岩は地表に出ると空気に触れている表面は急速に冷え、固まりますが、溶岩流の中身は高温でドロドロのままです。その中身が冷えた表面の殻を破り、流れ続け、空洞だけが残ってしまうことでできる洞穴です。 また、中にガスなどがたまっていた場合なども同じように空間ができます。
富士山の高さ・大きさ
■溶岩樹型
 溶岩樹型は溶岩流が樹木を包み込んでできる洞穴で、樹木のあった空間が後に洞穴として残ったものです。岩肌には木の肌がそのまま写し出されていたり、変化に富んだ洞穴です。
 そして、その時に飲み込まれた樹木が数本で流され、重なり合ってできた溶岩樹型を特に複合溶岩樹型と言います。
 複合溶岩樹型は大変珍しい洞穴で富士山周辺の8つの洞穴しか世界で発見されていません。
富士山の高さ・大きさ
富士山の高さ・大きさ  富士山には氷穴というものがあります。内部は夏でも氷が絶えないことから、冷蔵庫がなかった江戸時代の頃など、ここの氷が将軍に献上されました。
 この氷穴は吹き抜けのつくりになっていて、空気が出入りする時に温度が調節されます。空気は圧縮されると熱せられ、膨張すると冷えるという特徴をもっていますが、熱せられた分は地下の岩に奪われてしまうため、氷穴内は、空気が膨張した分、温度が低下します。この空気が循環し、低い温度が保たれています。これは電気冷蔵庫と同じ原理です。
参考・『富士山周辺のおもしろい地学入門』 服部哲雄
■人穴伝説
 「吾妻鏡」(あづまかがみ)によると建仁3年(1203年)6月、源頼朝の子、頼家により再び巻狩りが行われました。富士山のどこかに「人穴」という奇妙な洞穴があるという噂を聞いた頼家は、仁田四郎忠常という家臣に人穴探検を命じました。仁田四郎忠常は曽我兄弟の兄・曽我十郎を打ち取り、巻狩りでは、猪の背にまたがり、打ち倒したというほどの猛者でした。
  主従六人で勇ましく「人穴」に向かった忠常でしたが、探しあてた「人穴」の中は人のアバラ骨のような岩壁で覆われ、足元には川のように地を這う大量の蛇。さらに奥では、千人の大軍を思わせるような鬨の声や啜り泣きが忠常を襲います。
 やがて、真っ白な着物と真っ白な髪の鬼とも神ともつかぬ人物に出会い、すぐに立ち去るようにと命じられ、忠常は命からがら逃げのびます。
 頼家のもとに帰った時には、五人いた従者は一人だけ、忠常も疲れ果てた様子でした。地元の古老は「この穴は浅間大菩薩の住み給う場所であります」と語り、二度と「人穴」には近付かないように頼家を諌めました。
参考:『富士山 史話と伝説』 遠藤秀男著
   
■御胎内
 医療が発達していなかった昔、女性達が安産を願い、探訪した洞穴に「御胎内」があります。「御胎内」は人間の身体の内部のような様子で、乳房や産道のような形の岩壁が連続しています。このよう

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