「土木技術者女性の会と女子学生」による旬な現場交流視察会

日中コンサルタント(株) 川瀬 瞳

  1. はじめに
    土木技術者女性の会に入会し,早いもので一年が過ぎましたが,思い切って入会してみたことは良かったと思っています.業務ではなかなかお会いする機会が少ない女性技術者が,実はこんなに沢山みえたことも嬉しかったですし,その方達の生の声を聞けることも大きかったです.
    日頃はデスクワークが多いコンサル勤務の私にとって,今回の現場視察は大変勉強になりました.学生さんとの交流も新鮮で,彼女達の話しを聞くうちに初心を思い出すこともできました.ここに,視察内容や現地で学んだことについて報告します.
  2. 視察内容
    @木曽川下流河川事務所(防災対策本部)
    A木曽三川公園治水タワー
    B船頭平閘門・木曽川文庫
    C堤防耐震工事
    D水門改築工事
    ◎日時 9月17日(木)午後14:00〜
    ◎参加者 ・土木技術者女性の会 10名
           ・大学生(名城大学) 4名

  3. 木曽川下流河川事務所(災害対策本部)
    通常なかなか入ることのできない,災害対策本部という場所をお借りして会がスタートしました.澁谷所長のご挨拶から始まり木曽川河川事務所スタッフの皆様と参加者全員の自己紹介を行いました.
    災害対策本部は,木曽三川の状況をリアルタイムで観察し,危険水位に達したり,それによる災害の危険性が高くなると対策を練り指令を出し,災害発生時には状況確認やその対応に従事する場
    所であり,部屋に入るだけで,その緊張感が伝わってくるような場所でした.
    台風18号の影響による大雨で鬼怒川の堤防が決壊し甚大な被害を受けました.復旧には木曽川下流河川事務所からも応援に行っておられるようで,復旧状況も確認できるようになっていました.
    木曽川河川事務所の方々(男性)は女性の会にとても関心を持っておられ,今後の活動に協力的なご意見を頂き和やかなムードで進められました.
  4. 木曽三川公園治水タワー
    館内には木曽三川について分かりやすく学ぶ展示がしてあります.併設してある高さ65mの展望タワーからは木曽三川の眺望が大変良く,当日は生憎の天気でしたが,晴れていれば名古屋駅のツインタワーが見えるそうです.(付近はゼロメートル地帯のため,遠くまで見えるそうです.)
    豆知識ですが,各河川が近接していますが,それぞれの水位が違います.そのため河川間の行き来には,次に紹介する船頭平閘門の設置が必要になりました.
  5. 船頭平閘門・木曽川文庫
    木曽三川の歴史を学びました.以前と比べ河道が人為的に変化しており,災害が減少しました.
    木曽三川は地形に特徴があり,1本の河川が氾濫すると隣の河川にまで影響を及ぼしていました.それを計画的に整備することにより,各河川ごとの氾濫で留めることが出来,河川被害範囲を抑えることに繋がりました.(館長さんの説明)
    船頭平閘門では,水位差のある河川を船が通るためのシンプルですが効率的な水門構造を学びました.オランダの水路にも同じような物がありますが,オランダ人の土木技師のデ・レーケが携わっているので納得しました.
  6. 堤防耐震工事
    木曽川の堤防補強工事現場にて,砂圧入式静的締固め工法(SAVE-SP工法)をアイサワ工業さんの説明のもと,視察しました.作業スペースを確保できないような場所での施工が本工法の強みだそうです.
    概要は,流動化剤を混入した砂杭は管路で詰まることなく地盤に圧入されていきます.次に塑性化剤を加えることにより流動化が無くなり,さらに土圧で水分(流動化用)が抜け,抜けた水分は地下水として排出され地盤が安定するという工法です.
    圧力(応力)管理をされているので,圧入量が設計値に達していなくても,応力が出ていれば,そこで修了にしています.(現地調整)
    小型重機の使用は高いそうですが,本工法は大型重機搬入路設置の必要が無く,雨天での作業中止も無く,その部分での費用はかからないので,トータルコストの差は縮むようです.
    砂に流動化剤を混ぜた状態を再現して頂きました.想像以上に柔らかく粘性を持った泥のようになった砂が,塑性化剤を加え手で絞ると砂と水は見事に分離する様子を見ることが出来ました.
    自然材料(砂)を使い,流動化剤と塑性化剤の液性は中性と環境に優しい工法だそうです.

  7. 水門改築工事
    鍋田上水門改築工事現場にて,施工ステップの説明を戸田建設さんから受けました.
    水門の先には船の停泊地があるため,工事中も常に水門から船を通さなければならず,そのために考えられた水門機能を維持する施工ステップに感動しました.
    工事の全体工期は3年で,その間,水門を取り壊し新規の水門を作ることに加え,堤防を通る道路の切り回しや,堤防本体のかさ上げ(補強)も行われます.
    新品の水門が見えたので,思わずあれが新しい水門ですかと尋ねてしまいましたが,本工事のための仮水門と聞き驚きました.しかも,仮とはいえレベル2地震動に対する耐震性も兼ね備えており,2〜3年で取り壊されると思うと少しもったいない気もしました.下の写真で見える水門が本工事のための仮水門です.
    施工途中の掘削で見つかった,昔の護岸(鋼矢板)についての対応も,国交省とコンサルとゼネコンとの連携が早いことに感動しました.各プロフェッショナルが集まれたからこそ成せる業なのだなと思いました.
    戸田建設さんは現場の経験が豊富なため,掘削時に何か出てくることは常に想定されており,対応策を考え出してくれますが,応力的にOKかどうかの判断はコンサルさんの得意とすることろですので,そのやりとりを上手く国交省さんがまとめて下さっているので,わずか三週間で解決に至ることができたのだと思います.
    木曽三川エリアは海抜ゼロメートル地帯ですが,昔から地盤の圧密による沈下が激しく,堤防のかさ上げが行われてきました.近年(平成に入ってから),その沈下ペースは落ちてきているようです.沈下は自然の力なので止めようが無いですが,このまま安定してくれればと思いました.
    下の写真で堤防の断面が見えますが,コンクリートの色が違うのは,既設堤防を覆いかぶせるように堤防のかさ上げしたからだそうです.

  8. まとめ
    各コーナーで細かい質問に対しても,丁寧に答えて頂きましたので,今回の木曽三川について幅広く学ぶことが出来ました.コンサルの立場として,今後の設計に生かせるようにさらに勉強していきたいと思いました.
    又,みなさんとの交流で女性ならではの働き方についても考えさせられました.まだ手探りな部分が多いですが,今後増えるであろう新人女性技術者の参考になるよう自信を持って業務に携わってゆけたらと思いました
  9. 謝辞
    本現場視察を行うに当たり,木曽川河川事務所の皆様及び土木技術者女性の会関係者の皆様には多大なご協力を頂きました。ここに記して,謝意を表します.
 
国土交通省 中部地方整備局 木曽川下流河川事務所
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