パーソントリップ調査への理解を深めるとともに、パーソントリップ調査データを有効活用するため、ここではパーソントリップ調査で一般的に用いられる語句、その他交通分野をはじめとする専門的な語句について以下に解説する。
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。情報(information)や通信(communication)に関する技術の総称。日本では同様の言葉としてIT(Information Technology:情報技術)の方が普及していたが、国際的にはICTがよく用いられ、近年日本でも定着しつつある。
複数の交通手段を利用するトリップに関して、代表交通手段の端末交通に相当する交通の中で、特に代表交通手段に接近する交通のことをいう。鉄道を利用する通勤交通では、駅までの徒歩やバス等の交通がこれにあたる。
また、複数の交通手段を利用するトリップに関して、代表交通手段の端末交通に相当する交通の中で、特に代表交通手段から遠ざかる交通のことをイグレス交通という。鉄道を利用する通勤交通では、駅で下車後の徒歩やバス等の交通がこれにあたる。
トリップを構成するひとつひとつの手段トリップ。
Electronic Toll Collection System(ノンストップ自動料金支払いシステム)の略で、無線通信を用いて、有料道路の料金所で止まることなく自動車に通行料金の支払いを行い、料金所渋滞の緩和やキャッシュレス化、ノンストップ化による利便性の向上などを図る新しい料金支払いシステムのこと。
アクセス(アクセス交通)を参照。
Light Rail Transit(ライトレールトランジット)の略で、交通弱者への対応、交通渋滞の緩和、交通に起因する環境負荷の低減に資する次世代型路面電車システムのこと。
あるゾーン(出発地)からあるゾーン(到着地)へ移動する交通量をOD量、流動量等と呼ぶ。出発地と到着地の組合せをODペアと呼ぶ。
自動車の共同利用。都心内で複数の人と共同で利用する都心レンタカーや郊外の駅で複数の人と共同利用するレンタカーなどがある。
パーソントリップ調査の調査日に外出した人の割合。
電気自動車、電動バス、超小型モビリティなど。
P&Rを参照。
外出した人と外出しなかった人の合計の1人・1日あたりの平均トリップ数。単位はトリップ/人日。
また、外出した人の1人・1日あたりの平均トリップ数のことをネット値という。
地域住民の利便性向上等のため一定地域内を運行するバスで、車両使用、運賃、ダイヤ、バス停位置等を工夫したバスサービス。
地球環境問題、社会的な公平性、都心中心部の活気の維持、効率的な公共投資、さらには都市の機能を強め、都市生活の魅力と生活の質を守り高め、交通負荷が小さい空間計画が重視されてきている。それらの政策をコンパクトシティ政策という。
1人・1日あたりの平均トリップ数。外出した人と外出しなかった人の合計(全人口)で求めるグロス値、外出した人で求めるネット値がある。
東京都市圏、京阪神都市圏、中京都市圏のことであり、それぞれ最近の実査は、東京都市圏が平成20年度、京阪神都市圏が平成22年度、中京都市圏が平成23年度である。
発生量を参照。
大きく、鉄道・バス・自動車・二輪・徒歩の5つに分けられる。ひとつのトリップでいくつかの交通手段を乗り換えた場合、その中の主な交通手段のことを代表交通手段という。主な交通手段の優先順位は、鉄道、バス、自動車、二輪車、徒歩の順であり。詳細な分類とそれぞれの優先順位を下表の通り。
代表交通機関の分類 | 分類 C | 優先順位 |
---|---|---|
17. 鉄道 | 1. 鉄道 | 1 |
18. 地下鉄(相互乗り入れ含む) | 2 | |
15. 路線バス、高速バス、ガイドウェイバス、路面電車 | 2. バス | 3 |
16. コミュニティバス | 4 | |
14. タクシー・ハイヤー | 3. 自動車 | 5 |
8. 軽乗用車 | 6 | |
9. 乗用車 | 7 | |
12. レンタカー、カーシェアリング | 8 | |
13. 自家用バス、貸切・送迎バス | 9 | |
10. 小型貨物自動車(軽貨物車、ライトバンを含む) | 10 | |
11. 普通貨物車、特種(特殊)車 | 11 | |
22. 自動車不明 | 12 | |
7. 自動二輪車(50cc超) | 4. 二輪車 | 13 |
6. 原動機付自転車(50cc以下) | 14 | |
5. 電動アシスト自転車 | 15 | |
4. 自転車 | 16 | |
1. 徒歩 | 5. 徒歩 | 17 |
2. 車いす(手動) | 18 | |
3. 電動車いす、ハンドル型電動いす | 19 | |
19. 船舶 | 20 | |
20. 航空機 | 21 | |
21. その他 | 22 | |
99. 不明 | 9. 不明 | 23 |
市街地が無計画に郊外に拡大し、虫食い状の無秩序な市街地を形成すること。
対象地域全体におけるトリップの発生量。単位はトリップ。
個人起業家等が小規模オフィス(Small Office)や自宅オフィス(Home Office)で組織にとらわれず新しいビジネスに取り込むことの総称。
パーソントリップ調査の調査項目のうちの住所、勤務先や通学先、出発地、到着地について、集計や分析を容易に行えるようコード化したもの。一定の広がりを持つ地域ごとに一つのゾーンと設定し、このゾーン単位でコードを割り当てている。ゾーンとして割り当てられる地域を設計することをゾーニングという。
ひとつのトリップでいくつかの交通手段を乗り継いだ場合の代表的な交通手段のことをいい、優先順位は、鉄道、バス、自動車、二輪車、徒歩の順とする。
自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の車両。
Transit Oriented Development(公共交通指向型都市開発)の略。米国で提唱されたものであり、適切な高密度の住宅地が、公共施設、業務、商業機能などを伴って、地域の公共交通システムに沿って戦略的な地点で複合利用的に集中するような開発を言う。
出発地から鉄道駅、または鉄道駅から目的地までのトリップのことをいい、その利用交通手段を鉄道端末手段という。同様に、バス端末トリップは、出発地からバス停、またはバス停から目的地までのトリップのことを言う。
Transportation Demand Management(交通需要管理)の略。車利用者の交通行動の変更を促すことにより、都市または地域レベルの道路交通混雑を緩和する手法の体系。 円滑な交通流の実現により、環境の改善、地域の活性化も図られる。
大まかな概念として、定時・定路線のバス運行に対して、電話予約など利用者のニーズに応じて柔軟な運行を行うバスの一つの形態である。
人がある目的をもって、ある地点からある地点へ移動する単位で、1回の移動でいくつかの交通手段を乗り継いでも1トリップと数える。
1つのトリップの出発側の発生量と到着側の集中量を加えた発生集中交通量の単位。
引き続いて連続的に行われるトリップ。
複数条件が同時に満たすことのできないような関係。
グロス値を参照。
高齢者も若者も、障害者も健常者も全て人間として普通の生活を送るため、ともに暮らし、ともに生き抜くような社会こそノーマルであるという考え方である。
利用者の乗降をより容易にするため、床面地上高を35㎝程度(通常は90㎝程度)まで引き下げることにより、ステップ(階段)を解消したバス。
パーク・アンド・ライドの略。最寄りの鉄道駅まで自分自身が自家用車を運転し、駅などの周辺に駐車して乗り継ぐ方式のこと。
また、最寄りの鉄道駅まで自分以外の人が運転する自家用車で送ってもらい乗り継ぐ方式をK&R(キス・アンド・ライドの略)という。
対象地域から発生するトリップ。単位はトリップ。
また、対象地域へ集中するトリップを集中量という。
対象地域から発生するトリップと、対象地域へ集中するトリップを合計した値。単位はトリップエンド。
鉄道端末トリップを参照。
バスの走行位置をバス停等で表示し、バス待ち客の利便を向上するシステム。
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」のこと。高齢者や障害者などの自立した日常生活や社会生活を確保するために、1.旅客施設・車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物に対して、バリアフリー化基準(移動等円滑化基準)への適合を求めるとともに、公共交通施設や建築物のバリアフリー化の推進。2.駅を中心とした地区や、高齢者や障害者などが利用する施設が集中する地区(重点整備地区)において、住民参加による重点的かつ一体的なバリアフリー化を進めるための措置などを定めている。
Vehicle Information and Communication System(道路交通情報通信システム)の略。渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションなどの車載機に文字・図形で表示するシステム。
道路網もしくは道路区間において、交通容量が小さく、そこを流れる交通のさまたげとなっている地点、もしくは区間。
2人以上が乗車する他人数乗車車両をHOV(High Occupancy Vehicle)と呼び、この車両の専用レーン。
市民が使用する乗用車による生活形態とトラック等の貨物自動車による流通形態を含めた総称。
大きく、出勤・登校・自由・業務・帰宅の5つに分けられる。自由は買い物や食事、レクリエーションなどの生活関連トリップ。業務は打合せや会議、販売・配達など、仕事上のトリップ。詳細な分類は下表の通り。
目的の分類 | 分類 C |
---|---|
1. 出勤(勤務先へ) | 1. 出勤 |
2. 登校(通学先へ) | 2. 登校 |
5. 日常的な家事・買い物 | 3. 自由 |
7. 通院、デイケア・デイサービス | |
8. 習い事・塾など | |
9. 食事 | |
10. 社交 | |
11. 娯楽・文化 | |
15. 送迎・付き添い | |
12. 散歩・ジョギング | |
14. 地域活動・ボランティアなど | |
16. その他の自由目的 | |
6. 日常的でない買い物 | |
13. 観光・行楽・レジャーなど | |
4. 帰社・帰校(会社・学校へ戻る) | 4. 業務 |
17. 打合せ・会議・書類持参・受領、集金 | |
18. 販売・配達・仕入れ・購入 | |
19. 作業・修理 | |
20. 農林漁業作業 | |
21. その他の業務目的 | |
3. 帰宅 | 5. 帰宅 |
99. 不明 | 9. 不明 |
個人の空間移動の自由度を表し、交通計画・政策の指標となる。モビリティ指標の例としては、交通手段選択の制約や移動における速達性や快適性や安全性、所要時間の信頼性等がある。
1人1人のモビリティ(移動)が、社会的にも個人的にも望ましい方向(過度な自動車利用から公共交通等を適切に利用する等)に変化することを促す、コミュニケーションを中心とした交通政策。
まちづくりや商品開発において、高齢者や障害者をはじめ誰もが分け隔てなく快適に利用できるよう、形や機能の設計の開発段階から取り入れていくこと。バリアフリーの考え方をさらに進めたもの。
中央新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づいて計画された、東京都を起点、大阪市を終点とする新幹線鉄道のこと。平成23年5月に決定された整備計画において、走行方式は超電導磁気浮上方式(超電導リニア)とし、最高速度は505キロメートル/時とすることが定められている。
特定区域への進入又は特定の道路の通行等に対し、課金等を行うことによる交通量の抑制する施策。ロンドンやシンガポールなど諸外国で実施例がある。我が国においては、平成13年から、並行する有料道路の路線間に料金格差を設けることで、都心部の住宅地等を通過する交通を湾岸部に転換させて、住宅地等の沿道環境の改善を目指す環境ロードプライシングが試行されている。
佐佐木綱監修/飯田恭敬編「交通工学」,1992
都市計画用語研究会編「最新都市計画用語辞典」,1993
デイリー新語辞典
交通工学研究会/TDM研究会編「成功するパークアンドライド、失敗するパークアンドライド」,2002
九州大学出版会「総合交通体系調査関係用語解説集」,1982
国土交通省ホームページ