ふじあざみ 第48号(1)
ふじあざみ タイトル


■東海道一の絶景地
 歌川広重は天保3年(1832)秋に、幕府の行列に加わって上洛(京都まで往復の旅)しました。この旅により天保4年(1833)『東海道五十三次絵』が生まれました。その中でも、静岡県庵原郡由比町のさった峠からのながめは、東海道一の絶景地といわれ、右の絵の「由比宿」が描かれています。眼下は海、そのまま駿河湾に転がり込むような急な峠は、かつて箱根峠と並んで東海道屈指の難所でした。目の前には紺碧の駿河湾が広がり、雪を頂いた富士が美しくそびえ立っています。上の現在の写真と見比べていただければ、構図がぴたりと重なります。左上の崖にいる旅人が、こわごわ目の前の風景を見ており、右端には白い帆を張った船が浮かんでいる構図は絶妙のバランスで描かれています。視線の方向から考えると、この図は京に向かう広重が、余りにも絶景であるため、江戸方面に振り返って描いたものと考えられます。
 現在、この難所は日本の大動脈(東名高速道路・国道1号・JR東海道線・情報通信網等)が集中する重要な地区となっていますが、豪雨や東海地震等により大規模な地すべりが発生する恐れがあるとして、富士砂防事務所では平成16年度より直轄地すべり対策事業調査に着手しています。

ホーム次ページ