田貫湖からの冬の富士(写真:吉田英雄氏.富士宮市下条)
 シベリアからの冷た高気圧が南下し、太平洋側に低気圧が発達すいる西高東低の冬型の気圧配置になると、季節風が吹き荒れ、日本列島の太平洋側は晴天の日が続きます。この季節は空気も澄み、遠く関東平野からも雪をいただいた美しい富士山を望むことができます。
 この季節の富士山は人を拒絶する厳しい状況になります。
 雪と氷に閉ざされた山頂部は、1日の平均気温がマイナス15度以下、最低気温はマイナス30度以下にまで下がり、風速も平均で15m以上、最大風速は40mを超えることもあります。このため気圧の谷間や低気圧の通過にともなって降った雪は、水分を多く含まず軽いせいもあって、そのほとんどが「飛雪」となり「雪煙」となって舞い散ってしまいます。1年で気温が最も下がる1月~2月頃の厳冬期に、思ったほど富士山頂の積雪が多くないのはこのためです。
 また、独立峰である富士山は森林限界付近でも年間を通して風が強く、風下方向にだけ枝が伸びる現象が起こります。この現象によってできた樹形を「風衝樹」と呼びます。五合目付近ではカラマツの風衝樹を見かけます。カラマツはさらに過酷な条件下では、強風と雪崩などを避けるためにハイマツのように地面に沿って枝を伸ばしているものもあります。