ふじあざみ 第45号(1)

和製グランドキャニオン
 富士山須走口登山道五合目、小富士を1時間半ほど下った付近に最近ブームを呼んでいる場所があります。
 その形状から「和製グランドキャニオン」と呼ばれる断崖です。富士山の雪解け水によって浸食された絶壁がそびえ、その荒々しい風景からアメリカのグランドキャニオンにたとえられています。
 削り取られた崖には、富士山が何度もの噴火の繰り返しによってできた「成層火山」であることを示す地層がはっきり確認できます。標高は1,500m付近に位置し、秋には紅葉と渓谷の織りなす美しい景色がみられます。また、断崖の上で休息するニホンカモシカを見ることもあるといいます。
 こうした風景を見ていると、麓から見ている美しい富士山も意外に壊れやすい山であることが感じられます。ちょうど反対側の、今も絶え間なく砂煙をあげる大沢崩れでは、平均して年あたり約16万立方メートルの土砂が崩れ落ちています。世界に誇る美しい富士山がいつまでも美しくありつづけることを願わずにはいられません。
※成層火山
溶岩・火山灰・火山砂礫などの火山からの噴出物が、火口を中心に互層になって次第に成長してゆく火山で、円錐形の美しい山になります。富士山の他には、羊蹄(ようてい)山(北海道)・岩木山(青森県)などがあります。