ふじあざみ 第38号(1)
ふじあざみ タイトル
 
図1 青木ヶ原溶岩流分布域のレーザープロファイラ立体画像
▲図1 青木ヶ原溶岩流分布域のレーザープロファイラ立体画像

 レーザー光線の威力
青木ヶ原樹海の地形が見えた

アジア航測(株)・
千葉達朗/静岡大学・小山真人

 富士山の青木ヶ原樹海は、昼でも暗く磁石もきかないので、迷い込んだら出て来られないという伝説があります。たしかに、これまでの空中写真から地形図を作る方法では、樹海の地表面が良く見えず精度の高い地形図は作成できなかったため、そういう伝説が生まれたのかも知れません。
 青木ヶ原樹海を作った青木ヶ原溶岩流は、今から約1,100年前の貞観(じょうがん)噴火によって流れ出したということは知られていますが、詳しいことはあまりわかっていませんでした。
 たとえば、正確な分布範囲、火口や溶岩トンネルの位置や形状は良くわかっていません。さらに、古記録には青木ヶ原溶岩流によって「せのうみ」という湖が埋め立てられ、西湖と精進湖に分かれたとありますが、「せのうみ」がどんな形をしていたのか、どのくらいの深さがあったのか、これまで調べた人はいませんでした。でも、これを調べないと、過去3,200年間の富士山でもっとも大規模な溶岩流噴火であった貞観噴火の正確な推移や規模などがわからないのです。
 富士砂防工事事務所では、青木ヶ原溶岩流の範囲について最新式のレーザー光線を使った地形図を作成しています。この技術は、上空の飛行機から樹海の木の隙間に見える地面に向けてレーザー光線を発射、往復する時間を計測して地面の高さを正確に計るものです。
 最近になってその作業がほぼ終わり、すばらしい地形が見えましたので、ここに紹介します。深い樹林で覆われる前の、青木ヶ原溶岩流の様子が、およそ1,100年ぶりに明らかにされたのです(図1)。

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