ふじあざみ 第30号(1)
ふじあざみタイトル
 
富士山直轄砂防30周年記念
シンポジウム「富士山の昨日・今日・明日」特集号
タイトル 富士山の自然と保全
シンポジウム風景写真  平成12年12月22日、富士山直轄砂防30周年記念事業の集大成として、シンポジウム『富士山の自然と保全』~世界に誇れるFUJI-YAMAを新世紀に伝えるために~ を富士市ロゼシアターにて、富士山麓の住民の皆様を主に1,000人を越える方々が参加して開催しました。
  第1部では登山家で医師、そして富士山御中道ぐるっと歩こう360度初代塾長の今井通 子さんが、『中庸の徳を往く』をテーマに基調講演を行いました。
 第2部は御中道めぐりの映像と『富士山御中道ぐるっと歩こう360度』に実施された専門家による富士山教室を編集したVTRを上映し、富士山の自然について学んだあと、パネルディスカッションが行われました。静岡での在勤中の6年間に20回も富士山に登った吉村秀實NHK解説委員をコーディネーターに、今井さんをはじめ浅間大社宮司など多彩 なパネリストによる『富士山の自然と保全』をテーマに、活発な討議がなされました。

基調講演 御中道にちゅうようのとくを見た!

今井通子さんの顔写真
今井 通子さん
■登山家・医師
■ぐるっと歩こう360度塾長

 日本には「心の山」富士山があり、いつでも登れる幸せを私たちは持っています。そして、富士山には温帯から寒帯までの多様な景色が凝縮されていますから、世界の山々を見たのと同じような登山ができます。スロバキアのドブシンスカ氷穴は富士風穴、カナダのホワイトマウンテンの針葉樹林帯は富士山の山裾に広がっている針葉樹林帯を彷彿させます。
 ところで私は世界の山々を歩きましたが、美しいモンブラン山群などにも80年代から地球温暖化の影響と思われる氷河の後退が起き、93年にシャモニーで起こった大洪水の原因となっています。自然は確実に凶暴化しており、地球環境問題への取り組みが必要と感じています。
 日本の象徴、富士山には大沢崩れという崩壊地があり、30年前から直轄砂防事業が始まり、18年前からは源頭部の調査工事が行われています。昨年大沢崩れとその工事現場を見るだけではなく、故事に倣って御中道めぐりをして大沢崩れをはじめ富士山のさまざまな面 を学ぶ「ぐるっと歩こう360度」が企画され、私は塾長を引き受け、200名と富士山の中腹の多様性と大沢崩れのすさまじさを体験しました。第一日目の夕暮れの中、私は御中道めぐりの意義に気づきました。富士山を3回登った人が「大行」とし行うこの修行は、人間はいつまでも本能的に頂上ばかりを目指すのではない、もちろん3回は頂上に登って人生の中で何かを成し遂げる必要があるが、その後人間だけの持っている文化とし、下も見据え上も見上げる中庸が大切なのだと。自然に対峙して歩くことでバランスの大切さ、つまり「中庸の徳」を悟るだろう。そして、これは世界に発信すべき日本の文化だと思いました。
 富士山を巡る様々な問題に対し、地元のみならず日本中の人たちが、動植物も含め富士山についてまずもっと学ぶべきだと思います。その過程で親しみが生じ、自然に対する畏敬の念や愛情が生まれてくるからです。実際にみて体験すると、保全の必要性や自分自身の役割がわかります。もっと富士山をみんなが自分の問題として考え、行動する輪が広がるといいなと思います。
カナダ(ホワイトマウンテン)の写真
カナダ(ホワイトマウンテン)
クロアチア(プリトビチェ)
クロアチア(プリトビチェ)の写真




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