富士山「御中道」を横切る沢名の変遷
御中道めぐり
 富士山五合目付近を横に一周することを「御中道めぐり」という。この標高は植生限界であることから、木立の中を通ったり、木がなくなって岩場を通る部分もあります。
 
この「御中道めぐり」はかつては役小角が始めたこととされ、主に富士講信者が聖地奥の院として巡拝してきたものといわれており、富士講の信者にとって「御中道めぐり」は富士山登頂以上の大行とされ、3回以上の登頂経験者でなければ、踏み入ることが許されませんでした。
沢名の変遷
 この御中道はさまざまな人々に利用され、現在までに多数の案内記が作られ、その中で沢名や当時の沢の状況が解説されているが、その沢の名称が時代、史料によって変遷しており、現在もなお全て確定された名称となっていない部分もあります。
 
現在、御中道を横切る沢は約27本程度在り、江戸時代以降の文献資料より沢名称の比較したものは表-1のとおりです。
図-1 御中道とその付近の沢
図-1 御中道とその付近の沢

表-1 富士山頂から御中道までの沢名称の変遷
番号 富士砂防
事務所
1847年 1860年 1892年 1913年 1914年 1923年 1931年 備考
「江戸時代参詣絵巻
  富士山真景之図」
富士山
道知留辺
富士山本宮
浅間大社
富士と足柄 富士群史 富士の研究J
富士の歴史
富士の研究M
富士の地理
と地質
日本地理体系別巻 富士山  
資料の状況 本文内解説 絵図 御中道紀行文 御中道紀行文 地図 御中道紀行文 御中道紀行文 御中道紀行文 御中道紀行文 本文中 地図 御中道紀行文  
1 日沢(西沢)   ムナツキ沢 ムナツキ沢             明確な位置は
不明であるが
以下の名称が
あげられている。
茗ヶ岳沢   江戸時代から
2 市兵衛沢(J)           執杖流し? 執杖流し?         大正時代から
3 市兵衛沢(K)            執杖流し? 執杖流し?         大正時代から
4 表大沢         大滑沢 大滑流れ 大滑沢       赤 沢 明治時代から
5 赤 沢         赤滑沢 滑流 赤滑沢         明治時代から
6 青 沢                       ーーー
7 箱荒沢第2                         ーーー
8 箱荒沢第1                   ・鬼ヶ沢     ーーー
9 主杖流し                   ・大沢   手杖沢 昭和時代から
10 鬼ヶ沢       鬼沢 鬼 沢 鬼 沢 鬼 沢 鬼 沢 鬼 沢 ・前谷 鬼ヶ沢 鬼ヶ沢 江戸時代から
11 桜 沢 修杖流し                 ・アラナ沢   桜 沢 江戸時代から
12 竹 沢                  ・白草流し     ーーー
13 不動沢                   ・大流し     ーーー
14 大 沢 大 沢 大 沢 鬼ヶ沢 大 沢 大 沢 大 沢 大 沢 大 沢 大 沢 ・小御岳流し 大 沢 大 沢 江戸時代から
15 前 沢   ナメ沢 ナメ沢   ナメ沢 滑沢流し     前 谷 ・横吹き   前 谷 江戸時代から
16 二番沢   赤 沢 赤 沢 木花沢 木花沢 木花沢 木花沢 木花沢 ・燕沢 青滑沢 青滑沢 江戸時代から
17 一番沢         桜 沢 桜 沢 桜 沢     ・不浄流し     明治時代から
18 仏石流し   仏心沢 仏心沢 仏石沢 仏石沢 仏石沢 仏石沢 仏石沢 仏石沢   仏石沢 仏石沢 江戸時代から
19 滑 沢 奈目沢               青滑沢 上記は
大宮口
からの順
    江戸時代から
20 白草流し 赤沢               白草流し   江戸時代から
21 青草流し                     ーーー
22 大流し 仏石沢                 大流し   江戸時代から
23 小御岳流し 宇津木沢     空木沢   空木沢   空木沢   小御岳流し   江戸時代から
24 吉田大沢                   大 堀   昭和時代から
        不浄流し     不浄流し 不浄流し     不浄流 不浄流 江戸時代から
25 ツバクロ沢 津波黒沢   ツバクロ口 燕沢   燕 沢 燕 沢   燕 沢 燕 沢 燕 沢 江戸時代から
26 滝 沢   不浄流し           不浄流し 境沢堀   江戸時代から
27 滑 沢   不浄流し             不浄流し ナメ沢   江戸時代から