恵南豪雨災害から学んだ教訓

■ 刻々と変わる情報を的確に伝える

出動のときは、大災害の予感など無く

 出動命令が出て、家を出るときは「雨の中を嫌だな」程度の、本当に軽い気持ちでした。大変だなと感じ始めたのは、土のう積みのため冠水した道路を走っていきましたが、その道路が帰りは土石流に埋まっているという状態を目にしたときです。トンネルの中は隧道のように水が流れ、橋には流木が山のように積み重なり、そこから川の水が滝のように落下していました。今にして思えば、二次災害が起きてもまったく不思議ではない状況でした。

組織としての、情報伝達の仕組みが必要

 大きな災害のときは、情報も刻々と変わっていきます。消防団でいえば、上の方がこうした情報を集め、情報収集が困難な現場の人間に必要な情報を伝えていくという、組織的な取り組みが欠かせません。恵南豪雨ではどのような状況にあるのかという情報が不足がちで、そうした情報伝達の仕組みの必要性が骨身にしみて分かりました。恵南豪雨があった10年前と比較すれば、情報面での充実は格段に進んでいます。現場の人間に情報を下ろしていく組織としての取り組みや仕組みも、ますます強固なものとなっていくだろうと期待しています。

自分で自分を守るという、気持ちが大切

 大災害ともなれば、消防団の力にも限界があります。そうした中で、被害を最小限にしていくには、住民の皆さん一人ひとりが「自分の命は、自分で守る」という心構えを持つことだと思います。強い雨が降っているときには、外の様子や道路が冠水していないかなど、注意していただくことも大切です。私自身、少し強い雨が降ると、空気の臭いをかぐようにしています。恵南豪雨のとき、現場で感じた泥くさい土の臭い、崩れた土砂から臭ったんだと思いますが、その臭いが、いまだに忘れられません。


■ 恵南豪雨を語り継ぐことが大切

一番大切なのは、金でも物でもなく命

 恵南豪雨の時は夫婦二人とも、お隣の方の車に同乗させていただいて避難しました。家から持ち出したのは、リュックに入れた位牌と貴重品、服、タオル、携帯電話だけです。大きな災害だと感じたら、まずは命を守ることを第一にして行動すべきであることを学びました。恵南豪雨から、警報なども充実されました。警報が出たら、何はともあれ直ぐに行動するよう心がけています。

機会を見つけては恵南豪雨を語り継ぐこと

 恵南豪雨から10年ということで、シンポジウムやイベントが開かれていますが、大変に良いことです。あの当時を振り返り、若人たちと一緒になって、恵南豪雨とはどのような災害であったかを伝えていくこと。また、災害が起こっては駄目で、災害をいかに起こさないかという「予防災害」の大切さを多くの方に知ってもらいたいと思います。

自分で自分を守るという、気持ちが大切

 災害復旧は、地元の消防団や区の方々、ボランティアの皆さんの献身的な働きを抜きに語ることはできません。災害当時私は72歳でしたが、こうした方たちの活動する姿に力づけられ「よしやるゾ」と勇気が湧いてきました。砂に埋まったヤナ場も1年の休業を経て、仲間とともに再開することができました。遠くから足を運んでいただくお客様もいます。現在82歳ですが、多くの人たちに励まされて頑張っています。


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