TOPページ流域オンラインVol.06
流域オンライン


高度成長とともに面影をなくしたささら川
 「このあたり一体はガマやヨシなどが生い茂る湿地でした。そこを流れる小川は“さらさら”という水音から、地元、安城南部小学校の校歌のなかに『ささら川』として歌われてきた。しかし、戦後の高度成長とともに生活用水などが流れ込み、汚れの進んだささら川に以前の面影はすっかりなくなっていました」
このままでは、校歌として歌い継がれてきたささら川が完全に消滅してしまう。憂いた地元の方々は、『ささら川を守る会』を結成し、復元を目指して活動を始めました。
 「完成したのは平成16年3月。一番苦労したことは水源の確保です。結局、災害時にも利用できることから、新しく井戸を掘って水源を確保しました。最初は藻の発生がすごくて、月に1回、清掃を行っているのですが、今年の春くらいまでは“藻を取り除くことが清掃活動”と言ってもいいほどでした。近所の方たちも道具を工夫して作ったり協力してくれたりして。水がきれいになって、生き物が色々と観られるようになってきたのは今年の夏頃からでしょうか」
ヒメガマなど本来この地域にある植物なども、徐々に根付きつつあるのだそうです。

自然のままの川の姿が理想
 「昔のささら川は、バケツですくうだけでドジョウやメダカ、フナなどがたくさん捕れたんですよ。復元したささら川はキレイに整備された川じゃなくて、草が生えていても手を加えない自然の川にしたい。昔、私たちが経験したささら川が理想なんです」
 「以前、汚いからといって、靴下をはいたまま水遊びをする子どもを見たことがあるんです。それじゃあいけない。裸足で川に入ったらケガをすることもある、そのことを自然と直にふれあう中から学び取ってほしい。また、危ないことしている子どもがいたらお年寄りが叱ってくれるような、世代を越えた繋がりが復元したささら川から生まれてほしいとも考えています。今後は、子どもたちの遊び場となり、それを見ている地域の方々がもっと楽しく豊かな“ささら川”にしようと自主的に参加し、自然発生的に活動の輪が広がっていけばそれで良いと考えています」
 目指すささら川は『もともとあった川のように、あること自体が自然な川』。ささら川復元への取り組みは、まだまだ始まったばかりなのかもしれません。

環境や地域を知るための教材として活用
安城南部小学校では、総合学習の時間などを使って「ささら川」の動植物を調べたり、郷土の歴史学習の基点にしています。また、学校の掃除の時間にはゴミ拾いなど実施し、整備のお手伝いも行っています。
移築された想い出の石橋
地元の方が描いたかつてのささら川の絵(右下をご覧ください)の中で子どもたちが通る『石橋』は、復元したささら川に移築されています。
建設中のささら川
現在の緑豊かなささら川からは想像もつかない石組みだけの姿に、ささら川を守る会のみなさんのご苦労がうかがえます。

●『ささら川を守る会』のお問い合わせ先 / TEL.090-1625-6664 代表・吉野 孝


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