| 1. | 
            IFIMの概要 | 
          
          
             | 
             IFIM(Instream Flow Incremental Methodology)は、魚類の生息場をモデル化して流量時系列による評価を行うことで流水の利用方法を決めていく、過程に関する手法体系である。この手法体系はアメリカ合衆国で開発され、欧米をはじめとする多くの国で河川の流量の検討に採用されている。 
             今回の評価は、その過程の中のマイクロ生息場計算モデルのPHABSIM(Physical Habitat Simuration)により実施した。PHABSIMは、魚類が生息する場所として好む、水深、流速、河床材料、カバー(隠れ場所)等及びこれらの要素の組み合わせを現地で調査し、流量変化により魚類が好む条件の生息場の面積がどのように変化するかを算出する手法である。 | 
          
          
             | 
              
            IFIMの構成と実行フロー(Stalnakerら、1994) | 
          
          
             
             | 
          
          
            | 2. | 
            PHABSIMによる評価の手順 | 
          
          
             | 
            (1) | 
            現地調査:調査区域を平面的に細かくセルに分割し、各セルにおける魚種ごとの分布尾数と、水深・流速・河床材料・カバー(隠れ場所)等の環境要素を、潜水し目視で調査する(流域内6カ所)。 | 
          
          
             | 
            (2) | 
            適性基準の作成:各環境要素(水深、流速、河床材料、カバー)毎の、魚類の生息場としての適性を、観測した魚の分布状況等を基に0〜1の値で評価とする。 | 
          
          
             | 
            
              
              環境要素別の適性基準(例) 
               
             | 
          
          
             | 
            (3) | 
            合成適正値の作成:対象魚(及び対象魚の成長段階)ごとに、対象魚の生息場特性に関係する環境要素の各適正値を掛け合わせて、合成適正値を求める。 | 
          
          
             | 
             | 
            
              
                
                  | 合成適正値CSI=SI(D)×SI(V)×SI(S)×SI(C) | 
                 
                
                  | ここに、SI(D):水深に関する適正値、SI(V):流速に関する適正値、 | 
                 
                
                  |      SI(S):底質に関する適正値、SI(C):カバーに関する適正値 | 
                 
               
             | 
          
          
             | 
             | 
            なお、魚は一つの環境要素だけでなく、複数の環境要素の組み合わせにより生息場を選んでいるため、各種環境要素の組み合わせと実際の魚類分布を比較し、最も適当な環境要素の組み合わせとなるように検証する。 | 
          
          
             | 
            (4) | 
            利用可能生息場面積WUAと流量の関係図の作成:流量をパラメーターとして変化させた各セルの合成適正値に、各セルの水表面積を掛けたものを、対象区間全体に加算し、重み付きの利用可能生息場面積を求め、流量との関係図を作成する。 | 
          
          
             | 
             | 
            
              
                
                  利用可能生息場面積WUA=Σai (CSI)i 
                  ここにai :各セルの水表面積、 (CSI)i :各セルの合成適正値 | 
                 
                
                    | 
                    | 
                 
                
                  | 流量Aのときの生息場量 | 
                  流量Bのときの生息場量 | 
                 
                
                  | 流量がBの時の方が対象魚に適した環境のセルが多く、生息場量が大きい。 | 
                 
                
                  利用可能生息場量(例) 
                       
                   | 
                 
               
             | 
          
          
             | 
            (5) | 
            生息場時系列の作成:生息場面積と流量との関係から、現状の流況や設楽ダム完成後の流況など、各種の流量時系列に対する生息場量(WUA)時系列を作成する。 | 
          
          
             | 
             | 
            
              
                
                    | 
                 
                
                   
                  生息場時系列の算出方法(例) 
                   
                   | 
                 
               
             | 
          
          
             | 
            (6) | 
            生息場状況曲線の作成:生息場時系列で示された各流量に対する生息場量(WUA)に関して、WUAの大きい順に並べ直して超過確率曲線として表示し、流況による差の比較を容易にする。 | 
          
          
             | 
             | 
            
              
                
                    | 
                 
                
                   
                  生息場状況曲線(例) 
                   
                   | 
                 
               
             | 
          
          
             
             | 
          
          
            | 3. | 
            豊川における生息場量の検討 | 
          
          
             | 
            (1) | 
            対象魚種:成長期のアユ、ウグイ、オイカワ、カワムツの遊泳魚4種と、ヨシノボリの底生魚1種。 | 
          
          
             | 
            (2) | 
            現地調査:上流部を対象とした無堤区間3地点(清嶺中学校前、地蔵下、宮下橋下流)、減水区間を対象とした2地点(大野頭首工下流、鳳来大橋)、下流部を対象とした有堤区間1地点(江島橋下流)の計6地点で計23回実施。 | 
          
          
             | 
            (3) | 
            適性基準:無堤、減水、有堤の河道状況の異なる3区間別に、各魚種毎の合成適正値を実測データと検証しつつ作成。 | 
          
          
             | 
            (4) | 
            対象流量:現地調査結果が魚の活動期である夏季しかまとまっていないので、渇水年の昭和42年と平均的な昭和54年の2年の4月1日〜9月30日の期間を連結した仮想の1年間の「自然戻し」(ダムや堰で流量を調整や取水をしない)、「現況」(実測データ)、「将来」(計画・施工中の設楽ダムや大島ダムなどの施設が全て運用後)の3つのパターンを対象とした。 | 
          
          
             | 
            (5) | 
            流量時系列:魚の生息場を決める流量が、瞬間的な流量であっては意味がないので、3日続けてそれ以上流継続して流れた流量(連続する3日間の流量のうち最低流量)を使用した。また、増水時は、魚にとって避難場所のみが問題になるので、増水時を「石田地点の3日継続流量が15m3/s」以上と定義し、それ以外を平水期として評価の対象とした。 | 
          
          
             | 
            (6) | 
            生息場量の算定:寒狭川6地点、豊川4地点、宇連川6地点、大島川2地点の計18地点において生息場状況曲線を算定した。 | 
          
          
            
              
                
                    | 
                 
                
                   
                  対象流量時系列別の豊川流域内の施設概要図 
                   
                   | 
                 
               
             | 
          
          
             
             | 
          
          
            |  アユのWUA〜流量関係図、生息場時系列および生息場状況曲線(例) | 
          
          
            | 総合評価(遊泳魚/底生魚) |