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第17回豊川の明日を考える流域委員会議事概要

豊川の明日を考える流域委員会事務局
 
日時:平成13年3月1日(木)午前10時〜午前11時50分
場所:豊橋市職員会館 5階会議室
 
1. 環境関係の専門家からの意見聴取に先立ち、次のとおり事務局から専門家を紹介した。
 治水上、洪水時の水位を少しでも下げるため、低水路の拡幅が必要となり、河道内樹木が課題となる。今日来ていただいた豊橋市立豊橋高等学校の中西先生は、愛知県の自然環境保全審議会の専門委員、三河生物同好会会長を務められ、豊橋市自然環境保全基礎調査の報告書等をとりまとめるなど、豊川周辺の植物関係に詳しい。
2. 植物関係の専門家から特に河道内樹木について、次のとおり説明を受けた。 
川は、低いところを水が流れている場所ということだけではなく、水と河川敷の植物が一体となり、そこに生き物が棲んでいて初めて川だと思う。
 豊川流域は、豊橋辺りの海抜0mから段戸裏谷辺りの1,000mちょっとくらいまであり、雨量や気温等の環境要因が違う。雨量はともかく、気温の違いが植物の垂直分布を表す。段戸裏谷より上部は冷温帯で、面の木原生林には落葉広葉樹のブナ群落があり、愛知県の中では最も高い場所に生える群落で、面積も限られている。この段戸裏谷と鳳来寺山の間が中間温帯で、モミ・ツガ群落が多い。それより下部は暖温帯で、自然に手を加えなければ常緑広葉樹のシイ群落となる。
 一方、川の周辺の植物は、水の流れに影響されている。上流部の渓流の岩場では、材質が柔らかで葉が細く小さいサツキやネコヤナギなど、流れを受け流し、水中でも辛抱できる植物が生えている。岩場より少し離れた河岸にはカワラハンノキ等が生え、メダケ等はもう少し川から離れたところに生える。中流部の安定した河原には、ネコヤナギやツルヨシが生え、水に浸かる頻度の多いところにはイヌタデが生える。下流部の河川敷には、セイタカアワダチソウやススキ等、荒れ地に見る一般的な植物が出てきて、堤防辺りはチガヤ群落になる。一見、何も生えていないような河原でも植物は生えており、その植物にとっては、そこが生える環境となっている。
 絶滅が危惧されているフジバカマは、雨の度に水流に洗われて他の植物がなかなか生えれない場所に生えている。同じくタコノアシは、もう少し安定したヨシ等の際に、ヨシと共存するような形で戦略的に安定して生えている。
 このように、河原の植物群落はわりと単純で、そこは川の流れへの態勢を整えた、ある面で特殊化した植物だけに許されている場所になっていると思う。
 また、大島川の観察からは、川沿いにカシが結構生えており、河畔の意味の一つとして自然がわりと残されてきた場所だと思う。
 現在の豊川下流域の河畔林は、主にムクノキ、エノキ群落で、これらは落葉広葉樹で大木になる。その中にはタブ等も混じっており量的にも多い。また、水際にはメダケ群落があり、その内側にはマダケが生えている。このタブやシイは豊川の低地における潜在植生であり、倉内一二による植物遷移の研究によれば、500〜600年で安定した極相のシイ群落となる。つまり、現在はムクノキ、エノキが目立っているが、これが枯れると最終的にタブやシイが完全に優占する状態になり、現在は極相に近い変化の途中と言える。これらの木というものは、まともに流れを受けるところでは育たないため、ムクノキ、エノキの生えているところでは、その木が生きてきた時代において、その木をなくしてしまうような洪水はなかったと想像される。
 豊橋市自然環境保全基礎調査では、豊橋地域をメッシュに分割し、植生の自然度の高いところ、貴重な植物、水生植物、海鳥、山鳥、昆虫、それ以外の動物の存在するところをそれぞれメッシュ図に入れ、計7枚の図を重ね合わせてみた。最も多く重なったのは、石巻山と葦毛湿原であるが、豊川沿いも3枚が重なり、豊橋地域の中で守らなければならない場所であると思う。
 豊川は優れた自然地域で、この地域の人における心のふるさとであり、川らしい品のある川であると思うので、河畔林の役割を知っていただくとありがたい。
(以下、いくつかの地点の写真を用いて、上記の内容を再度説明された。)
3. 植物関係の専門家との質疑の中で委員から出た質問と、専門家からの説明は次のとおり。
(1) 資料−1の表2にある、ローマ数字と1・1の整数倍の数値はどういう意味か。
ローマ数字は、Iが高木層、IIが中木層、IIIが低木層、IVが草本層である。1・1の整数倍の数値はブラン−ブランケの調査指数で、5を一番高い数字として、5、4、3、2、1、+という形にわけ、5が3/4以上、4が1/2〜3/4という指数である。
(2) セイタカアワダチソウが、この30年くらいの間に爆発的に増えたが、日本に入ってきたのはいつ頃か。また、開発とセイタカアワダチソウの拡大とに関係はあるのか。
いつ頃入ってきたか詳しい年は分からないが、かなり前であると思う。帰化植物一般に言えるが、在来植物が場所を確保してあれば、普通は入り込むすきがない。それが開発で土地が削られ、撹乱されて秩序が乱れると、そこに入ってくるのは在来植物より、帰化植物の方が多い。河原なども自然に撹乱される場所であり、帰化植物が真っ先に入りやすい場所であるとも言える。
(3) 豊川流域の中で、特に大事な種は何か。
種としてはあまり見ていないので分からないが、人の手が加えられていないため、貴重といわれる種が出てくる可能性は大きいと思う。渓流植物のサツキなどは、上流部の川沿いの一部にしか生えていないので貴重だと思う。
(4) 学校で子供たちが、豊川の河川敷を花でいっぱいにしようとするときに、コスモスなどの新しい種を蒔くのではなく、植物の生態を調べて、その自然の状態を保護するような取組の方が大事だと思った。また、水源涵養林の機能としては、枝打ちや間伐の手入れをするのと、自然のままの状態とどちらが保水力があるのか。
川辺を自然と見るか、植物園と見るかであるが、自然と見るところに外国の花々の種を蒔くというのはどうかと思う。定期的に草を刈っていると、そこに合った在来の日本の植物が生えてくるが、それも結構きれいである。
森林の保水力については、例えば、面の木原生林のブナ林では歩くとすごくふわふわしている。植林してあるところも、枝打ち等をしてあるところはそれなりにふわふわしているが、密生し手を加えていないところは下草や表土がない。手入れしている場所はそれなりの保水力はあると思うが、手入れできないなら、早く刈って自然に任せた方がよく、今のままでは多分崖崩れのもとになる。
(5) 地球温暖化で、例えば地球の温度が2℃上がると、豊川流域の植物と気温の関係はどうなるのか。
気温が1℃、2℃上がることにより、高山植物や寒いところの植物が影響を受けることは考えられるが、豊川流域の群落的な問題では、目に見えたダメージはないと思う。
(6) 上流にダムができたときに、河川に生えている植物の群生は、どのように変わるか。
河原は常に撹乱されている場所であり、それが安定してしまうなら、植物も安定の方向にいくと思う。
(7) 上流にダムができたときに、堤防に近い方にあるエノキ、ムクノキ、タブ等も、かなり水量の影響を受けるのか。
それらは現在でも水量の影響を受けにくい場所にあり、今のまま変化していく。あえて言えば水面に近い方の植生に変化があると思う。
(8) ダムができて水量が調整され、自然流量がある程度確保されても、今よりも流量の多いときと少ないときの差がなくなると思うが、その影響はどうか。
河畔林はともかく、河原は影響を受けると思う。
(9) 豊橋市自然環境保全基礎調査でのメッシュ分割で、豊川のところが3つ重なっているが、植被率や自然度は分かるが、もう一つは何か。
多分、鳥の生息域である。
(10) 渡りのルートになっているということも推測されるのか。
営巣している鳥は多く、水鳥は河畔林の脇で冬を過ごすこともあると思う。森や草原があることによって、鳥以外の動物も生息していると考えられる。
(11) 放水路のような直線の川は、木などを植えても川らしく見せるのは無理か。
川は一様でなく、瀬と淵や流れの強弱がないと河原はできず、水中の生き物も単純になる。ある程度の蛇行は、環境の多様性を保ち、川らしくする上で必要なことと思う。
(12) 国土交通省では、豊川放水路の環境も考えているようだが、蛇行しているからこそ川であるということを考えると、所詮水を流す通路でしかないのか。
目的がそういうものだからである。ただ、それ以外の川の川づくりを考えるときは、真っ直ぐでないことに留意しないと、自然は戻らないと思う。
(13) ダムによって下流の植生がどのように変化したかという研究成果はあるか。
知らない。
(14) 多摩川では、洪水の頻度が少なくなって河原が森林化してきており、緑が多く自然があるように見えるが、河原特有の植物や昆虫が絶滅の危機にある。これを防ごうと、人為的に撹乱したり、ダムから被害が及ばない程度の放流をする必要があるのではないかということも話題になっていた。
(15) 以前、矢作川は真っ白な河床であったが、今は植物が随分広がっている。これも、上流にダムができた影響かなと思う。
ダムができる前を知らないが、矢作川は河原の中にまでヤナギが生えており、その影響かも分からない。
(16) ダムができて、一定の水量がずっと流れるようになると、河床は安定し、河原の最前線の植物はメダケくらいになってしまうということか。
安定しているだけなら、ヨシやメダケが生えるが、もっと安定すると木が生えてくる。
(17) 治水安全度を上げるために、高水敷を開削して河畔林を少し減らすという案も出ているが、その場合、どういう形で植生が対応するのか。
開削した後は、多分河岸はコンクリートで固められ、用水路のようになってしまう。洪水の制御のことを考えたことはないが、折角お金を掛けるなら、放水路や遊水池をつくるなどして、今の川の状態には手を付けないでもらいたい。
(18) 特に、牟呂松原頭首工の下流が狭く、そこの流れを良くするために、高水敷を少し開削するか、堤防に近い方に放水路をつくるかといった案が出ているが、どう考えるか。
ここは森と草原と畑があり、いい自然地域だと思う。あえてそうしなければならないとすれば、放水路的にして島のような形で残せるかどうかだと思う。
(19) 倉内先生から、豊川の植生は、海と淡水と北日本と南日本の接点にあり、中身が豊かで貴重だと聞いたことがあるが、その辺はどうか。
河畔林は、基本的に手を加えられていない場所で、まだ極相に至らない状態の半自然植生と言われている。照葉樹林は南的要素で、落葉樹林は北的要素であるが、気候の結果の分布というより、遷移の途中の状態だと思う。
4. 次回の流域委員会は、3月6日9時半から開催することとし、前回の委員会で審議が途中になっていた、河川整備計画案(素案および修正・代替案)について審議することとした。
 
以上

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