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第12回豊川の明日を考える流域委員会議事概要

豊川の明日を考える流域委員会事務局
 
日時:平成12年10月30日(月)午後1時30分〜4時50分
場所:ホテル白豊 5階「鳳凰の間」
 
1. 10月12日に開催された東三河4市7町助役連絡会で利水についての会議が行われ、次のことを流域委員会に伝えるよう要望があったことを報告した。
流域委員会において十分な審議を行った上で、設楽ダムの取組について積極的なお考えがいただけるよう一刻も早く流域委員会としての考えをまとめ、整備計画の立案に向けていけるようにしていただきたい。
2. 第11回流域委員会の議事概要について、配布された(案)のとおり確認された。
3. 河川整備計画(原案)の作成に向けた代替案について、配付した資料に基づき事務局から説明した。
4. 審議の中で委員から出た意見、質問と事務局及び東海農政局からの説明は次のとおり。
(1) 現在の日本全体における雑用水等の利用量は、総需要量のうちのどれくらいを賄えているのか。
主なものとして、海水淡水化が約0.5億m3/年、下水処理水の再利用が約1.3億m3/年、雑用水利用が約1.2億m3/年の計約3億m3/年が利用されており、全国の水道用水と工業用水の合計約300億m3/年の1%程度になる。
(2) 昨年の流域委員会で、農業用水の使用量は減ってきているのに、ダムができるときに急に増えるという非科学的な説明があった。なぜそうなるのか質問したが結局そのままになり、まだ納得していない。
作付面積については、今の既定豊川用水に比べて豊川総合用水では落ちているが、将来の設楽ダム時点では平成22年を目標として、水田はほぼ横ばいで、畑は周年化により作付けを増やしていくことを考えている。また、消費水量については、水田はほぼ横ばいであるが、特にこの地域では、キャベツ、飼料畑、施設畑等を増やしていく予定で、その分の消費水量を見込んでいる。さらに、有効雨量の減少、地区内河川利用量の水質悪化等による減少により、豊川への依存量は将来、約1,000万m3ほど増えるという計算をしている。
(3) 土地利用率は昭和60年頃から一貫して減り続けており、それが平成22年にぽんと上がるのは、農業をやめたり、減反した田も畑にしないで放ってある状況を見ていると、果たして現実にあり得るのか非常に疑問を持つ。農業人口もどんどん減っている段階では、相当強硬な理由がない限り、全く架空の作られたものにしか過ぎないと考える。
確かに現状の土地利用率はだいたい百十数%であるが、豊川用水ができた当時の130%前後まで戻したいと考えている。後継者の問題については、この地域は県内でも有数の後継者がいる。また、全国的にも特に優良な農地があり、野菜の主産地でもある。それから、農林水産省としても昨年新しい農業基本法を作り、現在の食糧自給率はカロリーベースで約41%であるが、それを2010年には約45%にすることとし、特に穀物類、麦、大豆、野菜、飼料畑を増やそうとしている。これらのことを視野に入れながら、畑が空いているときにも作付けし、年中うまく利用していこうと将来的には考えている。
(4) あまり納得しないが、要するに希望的観測であり、そうしたいというだけで科学的根拠があるわけではない。
(5) ダムという大事業を検討するに当たっては、利水や治水という問題についても、河川だけでなく流域全体の必要性を明確にする必要がある。現在、東三河地域あるいは三遠南信地域は、農業、工業、生活、レジャー、自然等の面で非常に大きな変化を遂げようとしており、市町村がビジョンを持って次の世代をどのようにつくるか取り組んでいる。そういう面で、この流域圏の未来がどうあるべきかを検討するのが非常に重要である。例えば、工業用水の利用はそれほど大きく増えていないが、臨海部を中心として計画を上回る立地が行われており、回収率を高めてぎりぎりの水利用をしている。そのため平均では足りていても一定期間節水が続くと操業が困難な状況になっており、非常にレベルの高い産業集積が行われつつあるこの地域の工業用水としては、余力を持って対応してもらいたい。また、数日前の新聞にも出ていたように、サツマイモから作った分解性プラスチックで自動車の部品が作られるなど、石油から作っていたものを生物から作るという大研究が始められている。農業として、この地域は日本でも重要な最先端の地域であり、耕地面積は減っていても高収益農業という形で進めており、さらに新しい資源の産地としても重要な地域として取り上げてもらう必要があると考えている。そういう面で、流域圏のビジョンに対応した利水ということを検討してもらいたい。
(6) 水利用の推計は難しく、感覚的にはちょっと余裕を持たせた計画という気がするが、豊橋市は農業粗生産額が日本一であり、これを重点的に発展させていきたいという意味では、今減ってきているのがそれでいいということではなく、食糧自給率も上げていく必要があり、できるだけ安全度を持たせて確保してもらいたい。工業用水はすぐ企業の経営に響き、経営努力していると思うが、例えば、2年前の企業誘致の時にも、東三河が渇水地帯であるために足を引っ張られる状態であり、渇水地帯という汚名をなるべく早く返上することが地域の経済発展に重要だと思う。水道用水は単身世帯の増加とか水洗化率の増加などもあると思う。また、ここ数年は恵まれているが、異常渇水ということも考えられ、その時に一番被害を被るのは災害弱者であり、例えば、給水車で一時的にしのぐにしても、老人や病人が重いポリタンクを運ぶのは大変だし、共稼ぎだと生活に支障が出る。量的に正しい数字かどうかは難しいが、この地域の発展や安心、豊かさを考えるとダムの必要性を説明できると思う。
(7) 食糧自給率41%というのは確か2年前の数字で、現在はもう40%を切っている。2010年には45%にすることについては、日本の食糧自給率は決して伸びず、下がる一方だと思う。その理由は、今各省庁とも規制緩和を活発に行っており、全ての面においてグローバルな価格競争がなされ食料品も例外ではない。価格の面で国産は太刀打ちできず、特に東南アジアからの輸入は今後も増加し、作付面積が今後急激に増大することに大きな期待はできないと思う。また、地球の温暖化によって、異常渇水や集中豪雨による大洪水といった異常気象が各地で起こっている。いかにCO2を削減しても一挙に改善されるとは思えず、温暖化はどんどん進む。その辺も考慮に入れて利水は考えるべきだと思う。
(8) 農業問題はこれから10年間の世界最大の問題になると思う。日本では当分の間は輸入が先行すると思うが、世界中で食料が不足する時代が既にかなりの本で警告されている。21世紀の日本は、農林水産業をもう一回見直して自給体制を作り上げるという、非常に大きな課題にぶつかると考えている。そういう面で必ずしも価格問題だけでいけるかどうかは十分納得できない。
(9) 底生生物以外は、全て最近の調査の方が種が増えているが、これは本当に増えているのか、それとも調査法に問題があったのか。
調査員による差もあると思うが、それによるものなのか、それとも定性的にそうなのかという判断は非常に難しいところがある。ただ、同規模の河川に比べてかなり豊かな種が認められていると思う。また、これは現地調査で確認された種であり、この他に文献等に記載されている種がある。
(10) 調査範囲は上流から下流までか。
魚類以外は新城橋より下流の直轄区間、魚類については一部それより上流についても調査している。また、この地域をまんべんなく見ているのではなく、ポイント毎にサンプリングしている。
(11) 影響の代替でミティゲーションの検討とあるが、河川のミティゲーションというのは比較的容易に行えるのか。
川の中には民地が非常に多く、治水上問題ないところで用地が取得できるかどうかにかかっている。国有地で適当なところがあれば考えたい。
(12) 一般論になるが、流域圏全体の環境について、これからも検討してもらいたい。計画が立案され実施段階になってからは、より住民の意見を聞くことが大切であり、市民参加、住民の合意をぜひ継続してもらいたい。
(13) ドイツのビオトープはすばらしいと思うが、豊川での基本的な考えは。
ビオトープというと、ミティゲーションの一環で新たにつくる保全空間みたいなイメージだと思うが、治水上問題が少なく用地取得が可能であれば、そういうことも考えていきたい。
(14) 牛川霞の洪水への影響はほとんどない感じがする。この地区については、平成2年から利用計画等の検討が進められ、区画整理の意向調査では90%以上の方が同意し、地区も大変期待している。市街地の中心部にある貴重な場所であり、公園的な利用も含めて、可能であれば河川整備とタイアップして何とか活用していきたい。また、他の霞について、今回の東海豪雨の時に浸水しているが、その時の霞が果たした役割はどのようなものか。小さい洪水に対して減災対策が可能なら、ぜひ考えてもらいたい。地元の強い気持ちも代弁してお願いする。
牛川霞の治水上の影響はわずかであり、治水上の支障はないと考えている。土地利用については、他の霞とのバランスや地域の方の意見を今後伺う必要があるが、基本的には活用する方向で進めても構わないと思っている。また、東海豪雨の時は豊川で約2,600m3smQ10?浸水したが、人家等への直接的な被害はなかった。今回の出水程度では仮に霞がなかったとしても、霞堤以外のどこかが危険になるような状況ではなかったと思う。
(15) この整備計画が済めば、浸水家屋は激減し、面積も半分程度になるということであるが、設楽ダムができるのは多分20年後とか30年後になり、それまで全く下流に影響のない洪水で常に地元が悩まされるのでは、地元の納得も得られないと思う。影響のない範囲での暫定的な整備が可能であればお願いしたい。
暫定的な洪水対応はできると思うが、今度それを越えて水が入ったとき、今まで堤防がなければ比較的速やかに水が抜けていたのが、その水の抜け場が無くなるため、水の入る頻度は減るが、入ったときの対応をしておく必要がある。また、霞に水が入らなくなると、安全になったと思われて地域の開発が進んでしまい、逆に被害を拡大するおそれがある。そういう水が入ったときの対策と、土地利用を真剣に考えないと、安易に下流が安全になったから大丈夫だろうというのは、計算上はできるが早計かなと思う。
(16) 低平地であっても安全だと思って家ができると大きな災害につながる。そこは市としての責任があり、そういうところもタイアップして何とかお願いしたい。
(17) 森林を全部伐採し、高水敷も切ってできるだけ広げ、治水のために豊川の今の河道を目一杯広げたとき、石田地点で何m3/s流れるのか。
石田地点で、現況の状態で約3,500m3/s、樹木だけ全部伐採すると4,000m3/s〜5,000m3/s、高水敷を全部切ってしまうと6,000m3/s以上は流れるだろう。
(18) 代替案的な言い方をすると、石田地点より下流が河原砂漠になることを覚悟の上で全部切れば、設楽ダムなしでもほぼ同じ治水安全度になると考えてよいか。
そのとおり。
(19) 今回の東海豪雨のように、どんなに予測しても水害は起きる。今回も名古屋は比較的早く復旧したが、周辺の小さな自治体は大変混乱し痛手を受けており、広域的な危機管理体制を計画の中にきちんと明記する必要を感じている。
流域と一体になって当然考えていかなければならないことであり、整備計画の素案の、その他河川の整備を総合的に行うために必要な事項という項目の中に、河川情報の公開・提供の促進、関係機関・地域住民との連携の強化を入れている。
(20) ダムができれば解決するからといってそれまで何もしないと、後20年30年も洪水の心配をして暮らさなければならず、できる範囲の打開策を同時進行しなければならないと思う。また、川は一度水が出れば元に戻ってしまうので、仮に木を切ったり河川敷を削ったりしても、永久にその状態が保てるわけではない。
樹木の伐採については、数十年すればまた戻ってくるので、維持管理の中でできる範囲でやる予定であるが、高水敷の掘削については、洪水が来れば土砂も出て川も変わるので、維持管理は非常に困難で、かなり不可能に近いと思う。ダムができるから放っておいていいという問題ではないと考えている。
(21) 現在の霞堤内地の浸水も洪水の被害であり、洪水の被害を軽減するために整備計画を立てるのに、その整備計画の中で、それほど劇的な効果があるわけではない霞堤を全て締め切るという一つの目標が、なぜ設定されないのか。
30年間という計画の中で、必要な対策を全部計画に盛り込むことは、事業費を考えるとできない。また、超過洪水対策をどう考えるかということもあり、今の時点ですぐに締めるという状況には至らない。
(22) 超過洪水は、現在の治水を河川堤防方式で行う限りは、日本中どこの地域も同様に抱える危険リスクであり、それは理由にならない気がする。現在豊川の水害は、ほとんど全て霞堤内地の浸水であり、なぜ霞堤を全て締め切って安全な地域にしないのか不思議である。超過洪水は理由にならないし、事業費も設楽ダムの規模を縮小してその分を回せばよく、理由にならないと思う。
治水の最大の目標は、豊川の堤防が決壊した場合に想定される大変な被害を回避することである。もちろん霞堤の中の浸水被害があるが、霞堤を締め切るための事業費がないのではなく、仮に今霞堤を締め切るとして、現在と同じような安全度を確保するためには、堤防の強化やダムの建設など膨大な事業費が必要ということである。つまり、地域の壊滅的な被害を受けないような安全性を、限られた財政の中で如何に効率的に早く効果を上げるかという観点で代替案を提示している。
(23) 設楽ダムを考えるとき、代わりに霞堤が締められるのなら仕方がないかというところがある。設楽ダムによる洪水調節と霞堤を締めるのとは話が違うのは分かるが、設楽ダムをつくって河道改修をしてもなお締め切れないということの理由がまだ詰め切っていない。どうすれば4つの霞全てを締め切れるのか。
霞があるのは河口から約20?の江島の霞までであり、一方、現在最も川の中を流せる流量が不足しているのが、それより上流の霞のない区間である。その一番ネックとなる地点の流量が決まれば、それを受けて霞をどうするかという話しに結びついていくと思う。
(24) 一番のネック地点を築堤せずに遊水地にした場合、その下流はどのように変わり、事業費はどのくらい違うのか。そういう計算が代替案ではないか。河道の処理による治水の具体的な案というのは非常にバラエティーに富み、環境についても、環境的なマイナス面との比較やミティゲーションとかの代替措置の議論になって、かなり時間のかかる細かい話しにならざるを得ない。一方で、せめて方向性だけでも急ぐというのなら、もう少し問題を絞る必要がある。設楽ダムに関しては、森林保全による涵養能力の向上という考えには限界があり、ダムなしで治水安全度を向上させると河道がわやになる。利水は予測というより、流域全体のビジョンを考えたときに、渇水河川という汚名を返上し、水のバックアップがあってこそ発展できるという意味で何となく納得できる。そうすると、流域全体の中で捉えていくためのものが大体出揃ったので、もう少しダムの必要性に絞った議論にしていった方がいいと思う。ただ、ダムをつくることによるマイナス面の情報がまだない。
(25) 上流部では高齢化率が高まっており、何らかの対策を講じる必要がある。ダムが必要か必要でないか、それぞれに対応して対処しなければならない。ダムをどうするかという問題に早く焦点を絞って、早く結論を出してほしい。
(26) 同じ洪水でも、人が住んでいなければ災害にならないし、人が多く住んでいれば災害になる。霞堤の問題にしても、自然公園にしてできるだけ住宅を建てず、水が流れてもいいようにしていくとか、地域の方々がその地域のこれからをどう考えていくのか、その辺も踏まえて議論できればいいと思う。
(27) 東海豪雨の悲惨な状況を見ると危機管理が大事だと思う。また、皆さんが納得した上で家を建てたところが、まただめになったということがあり、徹底した調査研究をしていくべきである。それから、自然環境については、地域住民の方たちもいろいろな意見を持っていると思うので、住民の意見も取り入れる必要があると思う。それと工事に当たっては、自然に近い環境を保つことを考慮してもらいたい。
(28) 投資と効果ないしは便益の整理がまだ十分ではないという感じがする。環境に及ぼす影響のお金に対する評価手法は、まだ確立されていないが、やはり整理はいると思う。また、農業用水の面でいろいろ議論されたが、食糧自給率や地球の温暖化はグローバルで国全体の話しであるが、今回計上されている農業の今後の見通しというのは、県の地方計画に基づく農業ビジョンから、計画が立てられている。
(29) 環境については、現状の説明だけで、ダムがどういう影響を与えるかという具体的な話しが全くなかった。環境を今後どうするかというのは、21世紀で一番大きな問題だと思う。それが3本柱であり、この委員会ができた理由の一つであるということで、やはり、これだけ水が必要で、こうやったらこれだけ水が獲得できるというのであれば、ダムをつくるなりしたときにどのくらい生態系が破壊されるかというようなことも検討してもらわないといけない。
(30) 上流には上流の議論があるので、環境の問題を含め、上流の人たちも納得するような説明が必要である。そのためには、ダムが建設される地域の環境についても具体的な説明をもっとしてもらいたい。また、農業用水の利用と同時に、山林や治山の問題についても、今回の矢作ダムのようなこともあるので、こういう場で議論してもらいたい。
5. 治水、利水、環境について、設楽ダムがあった場合となかった場合で整理するとともに、霞についての地域の意見を聴き、次回の流域委員会は11月中旬以降に開催できるように努めることとした。
以上

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