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第10回豊川の明日を考える流域委員会議事概要

豊川の明日を考える流域委員会事務局
 
日時:平成12年3月15日(水)午後1時30分〜4時17分
場所:ホテル白豊 5階鳳凰の間
 
1. 新たな委員の委嘱ができていないため、前回に引き続き副委員長代行で審議した。
2. 本日の議題に関して、はじめに準備部会長から、配布された準備部会報告に基づき報告された。その内容は次のとおり。
(1) 前回の流域委員会でわかりやすく整理し直すこととした、基本高水の根拠、利水計画、霞堤の3点について、準備部会を3回開催し、詳細な説明を求め理解を深めた。また学識経験者から意見を聞いた。
(2) 基本高水のピーク流量7,100m3/sについては、その算出根拠等について説明を受け、年超過確率1/150相当の洪水を想定すれば、必ずしも過大な値ではないとの認識に至った。ただし、基本高水は、本来、豊川が目標とする治水安全度の基準値を表現するものであり、また、その基準値を達成するためには、事実上、流域内に設楽ダムの他に、2,000m3/sものピークカット能力を有するダムを必要とすることを考えれば、豊川の治水安全度達成目標として、妥当なものであるかどうかについては、必ずしも賛成できるものとは考えられない。換言すれば、それほどの犠牲を払ってまで、その治水安全度を現時点で達成しなければならないか疑問である。しかし、豊川の現状を考えると段階的な整備を進めることが必要であり、次期以降の河川整備計画策定時点では、十分な再検討等をお願いしたうえで、今後は本流域委員会の検討事項である、具体的な整備計画の検討に入ることを提案する。
(3) 利水計画については、利水計画策定に関係する諸機関が、豊川水系河川整備計画における利水計画の策定において、どのように関与するかを模式的に表現した図、計画の基準とする渇水年において、設楽ダムがない時とある時とで、大野頭首工及び牟呂松原頭首工での流況がどう違うかを示す図、その他を準備した。その結果、今後は、設楽ダムを想定した利水容量算出過程の検討に入ることを提案する。
(4) 霞堤については、豊川の霞堤の現状、霞堤の有無による洪水時の水位変化図、その他を準備した。その結果、今後は、各霞堤を個々に締め切った状況や、河道内の改修などを、具体的に想定した試算その他を進めることを提案する。
3. 準備部会報告の補足説明として、基本高水の根拠、利水計画、霞堤の3点について、配布した資料に基づいて事務局から説明した。
4. 審議の中で委員から出た意見、質問と事務局からの説明は次のとおり。
(1) 流量確率手法による検証で、データを長期間とった方が、いろんなモデルがよく合い、グラフが収斂してくるのは、一般的な傾向なのか。
モデルとは水文統計に用いる分布関数のことで、一般的にデータ数が少ないと、その分布形はいびつになり、それにいろんな分布関数を当てはめるとどうしてもいろんな形になってしまうが、データ数が多いと、その分布形は収斂して滑らかになり、どの分布関数を当てはめても同じような形となり、その差は小さくなってくる。
(2) 大野頭首工及び牟呂松原頭首工での流況図で、設楽ダムがない場合というのは、実績かモデル計算か。モデル計算であるとすると、不足する部分は現実には節水とか佐久間ダムからの導水で対応したということか。
このモデル計算には、佐久間ダムからの導水等も含めており、それでもなお不足する量を示している。現実には、なるべくダムがパンクしないように節水している。
(3) 現実には、この不足量を節水で乗り切ったということか。
例えば、平成6年の渇水では、最大で水道用水35%、工業用水と農業用水が60%という非常に厳しい節水をしたが、それでもダムがパンクし、佐久間ダムから特別に計画以上の導水をしてもらって乗り切った経緯がある。また、取水地点より下流の放流量は、大野頭首工及び牟呂松原頭首工で、計算上はそれぞれ1.3m3/s及び5m3/sの取水制限流量として下流に放流することとしているが、平成6年時点では、従前の制限流量のため、それぞれ0m3/s及び2m3/sであった。
(4) 取水制限流量を減らせば、不足量も減るということか。
不足量は減る。ただ、不足には3つの要因があり、下流の放流量を増やすために生じるもの、少雨化傾向等により需要量に対して供給施設能力が不足してきたために生じるもの、将来の需要量の増により不足が生じるものが含まれている。
つまり、川に確保する量を小さくすれば、あるいは新規に需要増を見込んでいるものを小さくすれば、あるいは安全度が低いままで節水で凌げば、不足量は小さくなる。
(5) この不足量は、何年の水需要量に対して計算したものか。
想定としては設楽ダムが完成した時点であり、例えば、愛知県の2010計画では、平成22年時点で設楽ダムに係る需要量の一部が発生する。ただ、平成32年には設楽ダムによる供給量を超えた需要が発生すると想定されている。
(6) 水利用の変化の予測と実際の供給態勢整備の間にはかなりの時間的なギャップがあり、長期的な見通しに耐え得る整備をどうするかが必要であると思う。この30年間に下流部の人口は1.5倍に増え、上流部の人口は半減し、所得格差は数倍に広がっており、非常に大きな利用条件の変化が起きている。特に農林業での変化が大きく、農業用水の今後の利用形態の変化も十分反映させる必要がある。このため、東三河広域連合のようなものを豊橋市が中心となってつくり、水利用全体のことを市町村全体がきちんと検討し、河川の整備をソフト面からも考えていくことが必要と思う。
(7) 土地改良区の水利用計画や各市町村の水道計画等のユーザーからの要望が、いろんなプロセスを経てダムの整備につながっているが、これを予算要求に例えると大蔵省による査定があるように、水需要の予測にも建設省等による査定プロセスがあるのか。
大蔵省ではなく、水道用水では厚生省など、それぞれの主務官庁がその計画の妥当性をチェックし、それに基づいて多目的ダムに参画しており、建設省には審査権はない。
(8) 昭和44年の洪水ぐらいの洪水が起こると、今でも床下や床上浸水する家屋はあるのか。
昭和44年には放水路ができており、霞も今と一緒なので、当時の洪水被害そのものだと思う。
第2回流域委員会資料で昭和44年の時の浸水区域を示している。支川も含めた浸水家屋数はわかっているが、霞堤の中に限定した数はわかっていない。現在、霞内の標高ごとの家屋数を調べている。
(9) それ以降、住宅も増えている。
例えば、下条霞の航空写真でみると、集落から外れたところで大きく増えておらず、集落の中で家屋がぽつぽつと増えている状況である。
(10) 配付資料にある霞堤の仕組みという図では、増水時に家屋が水没するように描かれているが、実際には霞堤内の家屋は高くつくっており、孤立はするが水没しないのではないか。
そのとおりであり、修正する。
(11) 昭和44年洪水とか明治37年洪水の水位縦断図には、豊川放水路の効果は下流域に含まれているのか。
豊川放水路の放流量は何m3/sだったか。
豊川放水路に流れる量は考慮している。放流量は、計画で1,800m3/sであるが、洪水流量によって異なる。
(12) 4つある霞堤を締める順序は、どのように考えればよいのか。
上流の霞堤から締めると下流の被害が増大するため、基本的に、霞堤を締める場合、それより下流の河道を改修し、流れる容量を確保してから締め、その後上流の霞堤に移るという順序になる。ただ、豊川の場合、全川的に水位を下げる必要があり、上流のダムを併せて整備しないと、河道改修だけでは霞堤は締められない。
(13) 配付資料の図で、霞堤を締めた場合の計算結果が出ているが、締め切り堤防の位置によって結果が異なるので、準備部会報告で提案したように、今後はもう少し具体的な案を出してもらいたい。また、計画高水位より1.5m上まで堤防があるので、整備計画後に霞堤を全て締め切っても、昭和44年洪水により石田地点を4,100m3/sが通過してもどこも越水しない。しかも、1/150確率値には幅があり、4,100m3/ssという想定値も1/150と言えないこともない。つまり、整備計画後に霞堤を全て締め切っても何も起きない可能性もあるのではないか。
堤防は満杯で流すようには考えておらず、計画高水位の上に余裕高があって初めて所期の働きができるので、計画高水位を超えると危険であると考えている。
(14) 設楽ダムをつくったときに、そこで洪水調節するという前提に立てば、全てクリアできると考えてもいいのか。
(15) 昭和44年洪水の4,650m3/sに対しては、設楽ダムがあっても4,100m3/sの洪水が流れ、計画高水位を何ヶ所か超えるので、それが危険だということであれば、全ての霞堤をそのまま締めるわけにはいかない。
(16) 配付資料では、いずれの計算結果も牛川の霞堤に関しては、今すぐ締め切ってもほぼ何の差しさわりもないように見受けられる。
牛川霞より下流では、100戸くらいの家屋移転を伴う引き堤等の河道改修を行った結果、流下能力が上がってきたためと理解している。
5. 第9回の流域委員会で委員から質問のあった霞の面積について、事務局から説明した。
霞の面積については、現在詳細な調査をしているが、以前に調査したものによると、牛川霞が80ha、下条霞が380ha、賀茂霞が240ha、江島霞が220haの計920haとなっている。
6. 今後、河川整備計画の検討に入るにあたって、委員から出た意見、質問と事務局からの説明は次のとおり。
(1) 河川整備計画の検討にあたり、まず目標とする洪水規模の設定から始まると思うが、まだ案そのものはできていなくても、あらすじの説明はできないか。
基本高水のピーク流量7,100m3/sに対して整備計画では何m3/sを目標にするかは、具体的にどういう整備が、どういう効果を持つかを見ながら議論していくことになる。配布した資料の図中では、戦後最大洪水を最初の目標にしたらどうかという心づもりを表した。
(2) 大きな柱の一つの環境問題は、流域委員会でいつ頃から具体的な議論になるのか。また、治水、利水の話では最初から設楽ダムありきという感じであるが、そのためには、なぜ上流なのか、ダムの内容と上流の森林や環境がどうなのかという議論にならないといけない気がする。
整備計画案を具体的に示す中で、事務局案としては設楽ダムを位置づけていくことになり、いつ頃になるか今の段階ではわからないが、上流の環境やダムができたときの状況等をきちんと説明したいと考えている。
(3) 仮に上流にダムが全く造れない場合、下流だけでどこまで対応でき、そのときはどういう川になってしまうのか。また、ダムを将来つくった場合、川の流量がどう変わり、例えば具体的に魚の生息状況がどうなるのかということがきちんと示されないと、上流の人たちも納得する度合いが低いだろうと思う。それから、万博や空港でも環境影響ということが取り上げられているが、この流域委員会でもいろいろ議論した上で、だからこうなんだというところが必要ではないか。いつまでもずるずるやっているわけには行かない。
前回までに、例えばダムの効果や堤防を拡幅したときの効果等は説明したが、ダム地点の変化等についてはまだ説明していない。現在、ダム周辺の環境調査を実施しており、それらをきちんと説明した上で、整備計画の中での設楽ダムの必要性を理解してもらいたいと考えている。
(4) 全体を踏まえながらの議論の中で、目標とする洪水の規模が設定され、ある程度主要な施設が決められた段階で、ディテールの議論に入る前の中間報告みたいなものはあり得るのか。
難しいとは思うが、各委員の考え方次第である。
(5) 豊川全体を見据えた整備計画を決めるには相当の議論が必要と思うが、設楽ダムが豊川の整備計画の中で最大のインパクトを持っているものであるならば、水没地域の高齢化率が50数%から60%と高く、120数戸の水没住民の生活再建や財産権の問題などがあることから、行政責任者の立場として今の時点でかなり明確に示してやらないと、ダムを受ける側としての方針がはっきり出ないという問題があり、そういうことも加味して議論をお願いしたい。
ダムは、基本的に基本方針レベルの7,100m3/sを見た計画となっているが、戦後最大洪水の4,650m3/sに対する効果だけを見るとまた違った判断になる。さらに社会的現況も含めた判断が必要であり、必要な資料は事務局で用意するので委員会で議論していただければと思う。そして、最初のステージとディテールのステージに分けることができれば事務局としてはありがたいと思う。
(6) 環境論には、自然環境と社会環境の変化の問題があるが、水没地域における社会環境については整備計画の中に出てくるのか。
社会環境については、別途多目的ダム法の中で個別の事業として扱うこととなっており、整備計画の中には入ってこないと思う。ただ、構造物が自然環境に与える影響については、この委員会で議論しなければならないと思う。
(7) ダムを進めていく場合には、社会環境の変化についても提示してもらった方がいいのではないか。
社会的な環境の変化をアセスメントし始めたら終わらないと思う。それは、ダムをつくることを前提とした話であり、個別の事業の中で考えることと思っている。
(8) とりあえず整備計画で当面実現可能な具体案について検討すると言っても、常に基本高水の7,100m3/sは切り離せない。遠い将来の治水安全度の目標値として7,100m3/sでいいなら話は簡単だが、今の技術ではあと二つのダムが計画されることとなり、すんなりとは認知できないという堂々めぐりになる。
(9) まず整備計画の案を出してもらい、その実現可能性を含めて詰めていく中で絶えず戻ると思う。7,100m3/sに固執すると議論が進まず、準備部会報告のとおり進めた方が結局答えが出ると思う。
(10) 準備部会報告で基本高水のピーク流量は、必ずしも過大ではないとの結論に達したと報告があった。これからいろいろな変化が起きてくるが、昭和44年や54年の洪水のときの現場はものすごい惨状であり、そういうものを想定した上で具体的な整備計画は整備計画として進めていくことが必要と思う。予測数値というのはいろいろ出てくるが、ある程度割り切っていく必要があると感じる。
7,100m3/sを一応目標とするが、事務局としては、今回の整備計画では4,600m3/sくらいを目標にして、その中に設楽ダムがあると思っている。その次の整備計画では多分河道は完成して、あとは上流のダムとなるが、流域がノーと言えば4,600m3/sより上がらない。その時に基本高水の議論になり、これは全ての一級水系に言えることで、基本方針の内容は流域の合意は得ていないので、整備計画のステップに上がるにつれて問題が顕在化する。ただ、今回の整備計画でも7,100m3/sという数値を置かないと計画できないので、とりあえず置いておこうというふうに思っている。
(11) 唯一、ベストな案というのはあり得ないので、具体的にイメージできる多様性に富んだ代替案を準備してもらわないといけない。また、ダム以外はほとんど全て新城より下流に集中するので、新城から上の山間部の計画も検討してもらいたい。
(12) 先人の知恵でつくられた日本を代表するような霞堤の存在をきちんと認識し、締め切って住宅をつくるといった発想ではなく、環境とか緑を大事にする都市の都市計画のような形で、流域公園など柔軟に生かしていくまちづくりを下流の課題として考えて行くべき。
(13) 昭和43年、44年の大洪水は、昭和34年の伊勢湾台風で山がやられ、その後植林をして10年くらいであり、山に保水力がなかったのが一つの原因ではないかと想像する。昭和30年代後半はまだ木材の値段がよく、どんどん切って植えた時期でもあり、裸地のような状況があったことも踏まえると、これからの山林のあり方をここで議論し、整備計画へ載せていくことが重要なことで、残りの2,000m3/sを調節する場所にもつながる感じがする。
河川行政は流域全体をつかむ必要があり、河川審議会でも他の省庁の所管事項まで踏み込んだ答申がなされているので、是非お願いしたい。
(14) ダムができることを想定して議論されており、下流の人たちは水が豊富に使えるということで夢が膨らむと思うが、上流の人たちは本当に不安を抱えていると思う。やはり住民にとって納得のいく説明を、建設省が出向いて段階を踏まえて説明すれば、安心する面があると思う。
関係する住民の方々への説明は、町役場の協力も得ながら今までも十分やっているつもりである。今年度も基本方針や整備計画という新しい仕組みができたので、関係する地区に出向いて説明しており、なお一層努力したい。
(15) 関係地区の説明会では流域委員会の審議の過程も、知っている範囲で説明しているが、やはり整備計画を早く説明したい。
7. 河川整備計画の原案については、最初に流域委員会に説明し、その後準備部会でわかりにくい部分について作業することとし、次回の流域委員会については1ヶ月後くらいに日程を調整の上、開催する。
8.
第9回流域委員会の議事概要については、再度確認してもらい、特に意見がなければ後日公表する。
以上   

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