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第7回豊川の明日を考える流域委員会議事概要

豊川の明日を考える流域委員会事務局
 
日時:平成11年8月31日(火)午後1時30分〜4時
場所:豊橋市職員会館 5階会議室
 
1. 第6回流域委員会の議事概要について、配布された(案)のとおり確認された。
2. 利水及び環境について、配布した資料に基づいて事務局から説明した内容は次のとおり。
(1) 河川における流水の正常な機能の維持は、河川法第1条で河川管理の目的の一つとなっており、そのために必要な流量は、流水の占用、舟運、漁業、観光(景観)、流水の清潔の保持、塩害の防止、河口閉塞の防止、河川管理施設の保護、地下水位の維持、動植物の保護等を総合的に考慮して定めることとなっている(河川法施行令第10条)。この流量は、河川の基準地点においては正常流量といい、維持流量と水利流量の双方を満足する流量で、将来的には確保していくこととしている。基準地点において正常流量が確保されるまでの間は、正常流量の範囲内で確保流量や制限流量を設定する。また、基準地点以外の河川管理上必要な地点においても制限流量を設定する。現在の豊川水系では、豊川用水における制限流量として牟呂松原頭首工下流地点で2m3/sを設定しているのみで、確保流量については設定していないが、将来設楽ダムまで完成した時点においては、牟呂松原頭首工下流地点における制限流量を正常流量の5m3/sに引き上げるとともに、設楽ダムで3m3/sを確保する計画になる。また、大野頭首工、寒狭川頭首工、宇連ダム、大島ダム、設楽ダムの各下流地点における制限流量として、それぞれ 1.3、3.3、0.3、0.2、0.9m3/sを設定し、河川環境を維持していく。正常流量は、昭和46年に策定された豊川水系工事実施基本計画において、河道の維持用水、既得水利権量等を考慮し、牟呂松原頭首工下流地点において概ね5m3/sとするとしており、塩害の防止や流水の清潔の保持等からの必要流量として設定されている。中上流部の制限流量は、平成2年に豊川水系水資源開発計画(フルプラン)が策定されるに当たって検討し、上記のとおり設定している。
(2) ダムによる水資源開発は、豊水時にダムに水を貯めて、渇水時に補給するのが基本である。 利水計算によるダムの必要容量の設定として、まず農業用水の需要量については、河川から取水する必要のある量として、半旬毎に求めた細かいパターンの需要量から有効雨量を引いた量を用いている。水利権量は半旬毎の需要量を大きなパターンで枠組みしたものであり、利水計算には用いていない。この利水計算に用いる大野頭首工と牟呂松原頭首工における農業用水、水道用水、工業用水の半旬毎の需要量の、現況と将来の年平均の差が 4.1m3/sであり、豊川総合用水と設楽ダムによる新規供給量に相当している。また、制限流量と確保流量については上記の値を条件としている。水供給施設としては、現況施設として豊川用水施設、将来施設として豊川総合用水施設と設楽ダムがある。将来の利水運用は、豊川の水利用率が高く、高度利用の必要性が高いことから、各ダム等の特性を有効に発揮できるよう統合運用を行うこととしており、基本的に流入量の多く見込まれる施設から先使いする。水供給は、流量の多い時は頭首工地点の河川水をそのまま取水し、渇水になるにしたがって、寒狭川からの導水、地区内調整池からの補給、天竜川からの導水、宇連ダムからの補給、寒狭川頭首工の容量からの補給、大島ダム及び設楽ダムからの補給の順番としている。利水計算は、設楽ダムの容量を仮定し、40年間の計算のうち4番目に大きな渇水の年(利水基準年:昭和43年)において不足量がちょうどゼロになるように計算を繰り返す。その結果、利水安全度1/10の確保に必要な設楽ダムの利水容量は約 7,700万m3となる。なお、一番大きな渇水は昭和40年で、設楽ダムがあってもさらに約 7,000万m3の不足が生じる。
(3) 環境については、水質、自然環境、河川利用状況、河川環境管理基本計画について説明した。水質について、豊川の水質環境基準に係る類型指定は、上流部がAA、中流部がA、下流部がB、豊川放水路がCとなっており、BODで見ると全ての地点で環境基準が達成されている。豊川本川の水質は非常にきれいで、BODの平均値で見た全国の一級水系 168河川の水質ランキングで、平成9年度が4位、平成10年度が3位となっている。ただし支川の一部で比較的汚れた区間がある。この他、水質自動監視装置を設置し水質事故等に役立てている。また、豊川水系水質汚濁対策連絡協議会があり、水質に関わる事故等による緊急事態や異常渇水時等による緊急事態における情報及び連絡の調整を円滑に行い、豊川水系の緊急時における効果的な水質汚濁対策を進めることを目的としている。平成10年度からは、環境ホルモン、O−157、糞便性大腸菌の調査も行っている。環境ホルモンについては非常に水質のきれいな豊川でも検出されているものがある。O−157については陰性であり、糞便性大腸菌については海水浴場等の基準で見てAランク(適)であった。 河川の自然環境については、河川を環境という観点からとらえた定期的、継続的、統一的な河川に関する基礎情報の収集整備のための調査である、河川水辺の国勢調査を建設省で実施している。調査は8項目あり、5年で一巡するように行っている。調査結果は、確認された種類数と代表種、特定種で整理するとともに、環境マップとして平面的に動物の生息範囲、植物群落の範囲、河川敷の土地利用状況、瀬や淵の河川形態等を示している。これをさらに見やすい形にして小学校高学年が分かるようにまとめたのが、豊川観察ノート(裏面:豊川探検マップ)である。 河川利用状況については、豊川は全国の 109の一級水系の中で総合で22位となっている。利用形態別で見ると、スポーツでは豊川にはグラウンドというようなものが少なく56位であるが、水遊びでは12位と水質が非常によいことが反映されていると考えている。 豊川水系河川環境管理基本計画は、昭和56年12月に河川審議会から建設大臣に、河川環境管理のあり方についての答申があり、学識者、県、市町村長による計画策定のための協議会を組織して平成元年3月に策定された。この計画では、「われらが豊川 ― 大いなる恵みを後世へ ― 」を基本テーマに、「生命の川」として、歴史に培われた「ふるさとの岸辺」として、地域の「きずな」としての基本理念をそれぞれ定めている。また、流域を5つのブロックに区分し、特に河川敷の利用の多い下流ブロックと中流ブロックについてゾーニングをしている。ゾーニングは、空間管理計画により自然利用ゾーンと整備ゾーンに分けており、豊川では自然が豊かであることを反映して自然利用を強調している。整備ゾーンにおける河川空間整備の他に、5つの地区における拠点地区整備と2つのルートにおける岸辺のネットワーク整備を計画している。
3. 第6回流域委員会で委員から出た意見、質問に対する、事務局及び農林水産省東海農政局からの説明は次のとおり。
(1) 水需要のデータの単位を統一して同一軸上に並べ、わかりやすい形にしてもらいたい。また、利水安全度について、グラフ上のどこかに線を入れることによってわかりやすい形に表現できるのではないか。
豊川用水の実績取水量と愛知県の地方計画における将来予測値を再整理して示した。また、利水安全度については、やはりダムの貯水量曲線図において何年間のうち何回ダムが空になるかで表現するしかない。
(2) 土地利用としては農地は減ることになっているが、農業用水の新規需要が増えるのはなぜか。
豊川用水の通水(昭和43年)を契機に作付けの構成が非常に変化し、付加価値の高いものが生産されるようになってきている。農業用水の需要量について、事業計画における受益面積については、豊川用水事業の当時で約20,200haであったが、豊川総合用水事業では平成9年時点で約18,130haとなっており、設楽ダムに対しても同じ面積で計画している。需要量の算定については、作物別の消費水量に作付面積を掛けて、そこから有効雨量並びに地区内河川とため池の利用可能量を引いたものを豊川本川に依存することとしている。豊川用水地域のかんがい面積の推移は、通水後の昭和44年に18,600〜18,700haで随時減ってきたが、昭和62年に豊川総合用水事業により新たに約 1,400haを受益地に取り込み、平成11年時点では約18,000haとなっている。将来についても、農地転用で減ったり新たに受益地区が増えたりして推測が難しいため、平成11年時点と同じ面積を平成22年時点(設楽ダムに対する需要想定時点)でも用いている。土地利用率は最近では111〜113%となっているが、将来は土地利用率を上げていくこととして平成22年では 130%と推測している。土地利用(作付面積)の推移としては、水田は昭和43年当時の約1万haから現在は約半分になっているが、畑は増えており今後さらに増えると想定している。また、施設畑は現在2,700〜2,800haで若干増えると想定している。事業別需要量の内訳は、豊川用水では作付面積約22,000haに対する消費水量が年間約2億4,000万m3で、そのうち豊川依存量が約1億5,000万m3であった。豊川総合用水では水田の作付面積が約半分になっているが、補助整備事業等が進み水田の汎用化が図られ、裏作で畑に使った水田をまた水田に戻すときにそれ相当の水が要るため消費水量はそれ程減っていない。また、水源別依存量のうち地区内河川の利用量が豊川用水の約2,300万m3から約300万m3に極端に減っていることもあり、豊川依存量が約 5,000万m3増えている。設楽ダムに対する需要量の将来予測では、豊川総合用水よりさらに約 1,000万m3増えることとなっている。なお、豊川用水の受益市町ではハウス面積が非常に伸びており、今後もさらに伸びると予想されている。また、農業粗生産額は1,700〜1,800億円で推移しており、豊橋市を中心に全国的にも上位の作物が多く、水需要として今後設楽ダムに依存していきたい。
4. 審議の中で委員から出た意見、質問と事務局、農林水産省東海農政局並びに愛知県水資源対策室からの説明は次のとおり。
(1) 流域単位で考えて相互に水融通はしないということだが将来はどうなのか。
水融通を広域化して水源の多様化を図ることは、利水安全度の向上にとって理想的ではあるが、現実には水は非常に属地性の強い資源の最たるもので、理屈でなく歴史的にそうなった資源であり難しい。
水融通の広域化には、関係する利水者の理解も必要である。また、現在の地方計画の中では流域内で水需給バランスを取ることを考えているが、例えば首都機能の移転などにより長期的に相当の量の水が要ることがあれば、他水系からの導入も必要と考えている。
(2) この流域委員会が意見を言える範囲はどこまでなのか。工事実施基本計画や水資源開発基本計画の内容に口が出せるのか。
この流域委員会の設置要領にあるように、この委員会は河川整備計画の原案について意見を述べることを目的に設けられたものであり、河川整備基本方針ができるまでの間については、河川整備の現状と将来像について助言をいただくために開催し、現在の工事実施基本計画や水資源開発基本計画等の内容について説明し理解を深めていただいている。したがって、既定の計画の説明であって審議の対象ではなく、今後河川整備計画を検討するに当たっての必要な情報の説明と考えている。
(3) 利水の説明の中で、現況、豊川総合用水、計画の三つの言葉を用いているが、水資源開発基本計画との関係はどうなっているのか。
水資源開発基本計画には、豊川総合用水施設と設楽ダム計画が入っている。
(4) 治水計画では設楽ダム以外にも洪水調節のダムが必要となっているのに、利水上の必要容量の全てを設楽ダムで確保するのはなぜか。 ・利水計画では、比較的近い将来に必要な水需要に対してダムを計画しており、治水計画のタイムスパンとは大きな違いがある。
(5) 制限流量と確保流量は、河川整備基本方針で示されるのか、それとも河川整備計画で決めるのか。 ・今のところ、基本方針では、その河川を代表する基準地点における正常流量のみを記載し、利水運用上必要となる制限流量等については整備計画の中で示すものと考えている。
(6) 制限流量が流域面積100km2当たり概ね1m3/sを目安としていて、本当に漁業とか水質からシビアな予測をしているのか多少疑問に感じる。制限流量、確保流量について、利水計算の中で既定の豊川用水と豊川総合用水とを区分して考えていることは、理念としてはわかるが、実際の利水運用において需要をどう区分するのか目安を示してもらわないと困ると思う。それから、制限流量、確保流量を設けることによって必要となるダム容量はどのくらいで、また、発電所の増電による費用負担があるのかどうか。利水の基準年について、利水安全度がおおよそ1/10ということで、皆さんの同意があれば昭和43年に変えることにやぶさかではないが、至近年まで入れて計算すると利水安全度はもっと厳しくなり、今までのような節水が今後も引き続き残るのではないか。
今後の流域委員会の中で、議論していただく部分については説明材料として提供し、説明の足りない点については補っていきたい。
制限流量についての今日の説明は、あくまでも現在の計画における根拠についてであり、河川整備基本方針、整備計画の中で出てくる制限流量等については、現在までの知見を含め整備計画の議論のときに説明したい。
制限流量の設定による大島ダムの必要容量については、豊川総合用水事業が水資源開発基本計画策定時に定められた制限流量を前提とした計画になっていると理解しており、制限流量が従前の場合の大島ダムの必要容量については把握していない。
設楽ダムによる下流発電所の増電への影響については、基本的にかなりの増電量が見込まれる場合にのみ応分の費用負担をしてもらうこととなっており、現在の試算ではあまり大きな増電とはならないので費用負担は考えていない。
(7) 水質については、底生生物から見た水質マップがあるなら、それも説明に加えるべきではないか。
水生生物による水質の簡易調査は小中学生の協力を得て行っており、回数としては毎年かなり行っているが、調査地点を3地点に決めている。第1回流域委員会資料にも記載しており、また説明する。
(8) 河川環境管理基本計画策定後10年を経ており、沿川の市民や自治体が持っている空間利用や水辺利用のイメージを収集してもらうと議論が深まる。
(9) 豊川の流出量が減少したために三河湾の海水の循環力が減少したという指摘があるが、今後、治水によって瞬間的な流出が制限される場合に三河湾との関係をどうするかという問題についても触れてもらいたい。
(10) ダムができたときに、その周辺の水辺環境がどう変化するか、ダムの調査報告も含めて説明してもらいたい。
5. 専門部会の設置について委員の賛同が得られた。部会委員については、委員長が各委員に諮り、事務局の意見も聴いた上で決めることとされた。
6. 次回の日程については、基本方針が決まるタイミングで、できるだけ早く開催する。
以上

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