<36>南宮大橋(阿南−泰阜)  独特の優美な姿 斜張橋 天竜川右岸の阿南町北条と左岸の泰阜村温田を結ぶ。全長二百八十二メートル。主塔から張ったケーブルを橋桁に直接つないで支える「斜張橋」で、独特の優美な姿が目を引く。 橋の歩道を歩いてみた。H型の主塔は小さな中ノ島(中州)に建てられ、計四十八本のケーブルが翼を広げたようにのびる。主塔の高さは七十五メートル。橋から見渡す川と山の眺めが素晴らしい。 この地はかつて「南宮峡」と呼ばれる景勝地で、観光船が発着するほどにぎわった。 一八九七(明治三十)年、中ノ島を境に木橋とつり橋が完成。一九五一(昭和二十六)年には二本の鋼製アーチ橋となったが、下流に平岡ダムが完成したことから河床の堆砂が進み、増水時に冠水する危険が高まった。このため、九五(平成七)年に、南宮大橋が建設された。 伊那谷を貫く天竜川は、両岸の人々の暮らしを長く隔ててきた。近代的な橋を渡りながら、川を越えることができなかった昔の暮らしの厳しさを思った。(中山道雄)