第1部 F北の城橋 宮田村〜駒ヶ根市  朱色のつり橋 桜と共演 朱色のつり橋が深緑色の天竜川の上で揺れる。ここは伊那峡の入り口。目の前で春近発電所の放流水が音をたてて流れ込んでいる。 右岸は宮田村の史跡北の城跡。リバーランド天竜公園も整備されている。木々の芽吹き、桜、紅葉と、季節ごとに人々を引きつけ、ウオーキングを楽しむ人もいる。 一帯で桜の植栽や管理を行っているのは住民ボランティア北の城跡桜守の会だ。会長の橋倉貞人さん(68)は「ここの景色は天竜川に架かるつり橋とセット。桜を見て、天竜の流れを見ていただきたい。対岸のヤマザクラも見応えがある」と話す。 宮田村中越と駒ヶ根市大久保を結ぶこの橋は1958年に架けられた。左岸は岩肌が露出する崖で、上流は伊那市東春近方面に開ける。車1台通れるだけの狭い橋だが、今も宮田−伊那間の大事な生活道路という。桜が咲く頃、稲の苗箱を積んだ軽トラックが軽快に通り過ぎていった。  (文・倉田高志、絵・片桐美登)