第1部 M 伊那路橋  箕輪町  親柱に旧橋のデザイン 全長約89メートルのコンクリート橋が、緩やかなアーチを描いて箕輪町の中箕輪と東箕輪を結ぶ。彫刻が施された親柱が豪華だった旧橋の雰囲気を漂わせていた。 江戸中期には架橋されていて、中馬輸送を支える街道の重要な橋りょうだった。かつては「大橋」と呼ばれ、人々が盛んに往来したという。本格的な木橋が整備されたのは明治初期。1933年に架け替えられたコンクリート橋は全長60メートル、幅5.5メートルで、欄干などに組み込まれた立体的な装飾が芸術的だった。94年に現在の橋が竣工(しゅんこう)。橋長は1.5倍に、幅は2倍以上広くなった。 旧橋のデザインを受け継いだ親柱を見ると昔を思い出すという人もいる。近くに住む大槻東洋さん(70)は「昭和30年頃までは川で遊んでいた。今のような堤防はなく、牛枠が並んでいて、その上から飛び込んだ。ウグイやウナギなんかもいた」と懐かしそうに話した。 (文・倉田高志、絵・片桐美登)