第2部 Dめがね橋(長姫橋)飯田市 長姫城郭の石で整備  しゃれた欄干が取り付けられた歩道を渡り、たもとにある階段を下って川のほとりに立った。見上げると、つる性植物に覆われた一面の壁。その下の方にアーチ型の小さなトンネルがあった。これが橋なのか−が第一印象だった。  飯田の城下町を南北に分ける深い谷には江戸時代、木製の谷川橋が架けられていた。橋は急坂を下った場所にあったが、明治初期に橋の前後の坂を埋め立ててアーチ型の石橋を整備した。組んだ石は長姫城郭(飯田城の別称)の石で、橋名も「長姫橋」に改称。その形状から「めがね橋」とも呼ばれていたが、1947年の大火後の改修を機に通称が正式名になった。  大火の後、谷は埋められ、橋の上流側、下流側に公園が整備された。「一輪車で土を運んできて谷に入れる手伝いをしました。こんなことを子どもたちに話すと笑われるんですけどね」。買い物帰りの女性(74)がそう話しながら階段を上っていった。  (文・倉田高志、絵・片桐美登)