第1部 N虹橋 伊那市  三峰川右岸の田畑潤す 古きまち、伊那市高遠町の情景に溶け込む茶色のアーチは、三峰川の深い谷が開ける手前に架けられていた。由来は不明だが、三峰川にかかる虹をイメージして虹橋と呼ばれるようになったらしい。 高遠ダムから取水した水を三峰川右岸に運び、同市の美篶や手良など広範囲の田畑を潤す水路橋で、全長98メートル、高さは40メートルある。農業用水需要期には取水量が増え、歩道の下を流れる水は、橋の北側でゴーゴーと音をたてて導水管に吸い込まれていた。 水路上の管理道を地域の人たちが歩道として活用している。自転車を押して渡ってきたのは高遠高校の3年生。登下校でこの橋を渡るようになって2年半が過ぎ、入学して間もないころに感じた足がすくむような怖さもすっかりなくなったという。「ここから見る紅葉はきれいです。春は桜が見られるので、もっとすごい」。桜で有名な高遠城址公園が秋色に変わり、こんもり盛り上がって見えた。 (文・倉田高志、絵・片桐美登)