<32>虹橋(伊那市)  水の流れと一緒に渡る 伊那市高遠町の高遠ダムから取水した農業用水を、三峰川右岸に運ぶ水路橋。「虹橋」というロマンチックな名前は、橋桁本体を補強するアーチが川に架かる虹を思わせるのが由来といわれる。 水路上には管理道が設けられており、地元の人たちが歩道として利用している。橋の入り口には「自転車は押して通行してください」と書かれた注意看板があった。 全長九十八メートル、高さ四十メートル。実際に歩いてみると、想像以上の高度感に足がすくむ。欄干越しに見下ろすと、川筋を吹き抜ける風に体が震えた。 冬場は取水量が少なくなるが、橋のたもとに立つと「ゴーゴー」という音が聞こえる。水の流れと一緒に川を渡るのは、どこか不思議な感じがした。 高遠ダムが完成したのは一九五八年。虹橋を渡った水は三峰川右岸の農業用水路網に導かれ、美篶や手良の田畑を潤す。長く地域を支えてきた橋は、冬景色の中で強い存在感を示していた。(中山道雄)